パラレルの住民
今回の話→ピヨ目線
「おめでとうございます。貴方はパラレルの住民『無』に選ばれました。」
ここ、パラレルはニンゲンの行き場の無い感情を具現化したような世界。
ボクは人の様々な思想から生まれ、パラレルの管理人をやっている。
管理人と言っても、パラレルの住民に名前を与えただけ。これといって特別な事をしている訳では無い。
パラレルの住民は現在三人。
さっきも言ったけどボクは人の様々な思想。もう一人は負の感情の塊とでも言うべきか。名前はスコマニアデビル。スコマニアデビルは非常に危ない。人間界に飛び出したりしたら人を何百人と殺しかねない。コイツの管理には手を焼いている。
あと一人は謎。何をやっているのかどころかどこにいるのかすら分からない。たまにボクの前へと姿を見せることはあるけど。名前はダークマター。
今日新たに二人がここへとやって来た。
この二人はボクらとは少し違う。
ボクらは人の思想や感情が人の形を型どった存在。
でもこの二人は人間を棄てて感情だけがここへとやって来た。
どうやら自覚は無いようだけど。
片方は光の無い目をボクに向けた。しかしその光の無い目とは裏腹にそれは色とりどりの色を持っていた。
ボクはそれを『感情』としてシイという名前を与えた。
もう片方は今、目の前にいる。
状況の呑み込みが早く頭の回転が素晴らしい。しかしその目には恐ろしいくらいの冷たさを感じた。
ボクはそれを冷徹という意味を込めて『無』として、ソリッドという名前を与えた。
「んで、ここは新しい居場所って訳か。」
「動揺しないんだ。こんな変な所に来てさ。」
「別に、生活が出来るなら良いよ。」
せっかく人が話しかけてやっているというのにソリッドの態度は素っ気ない。
まぁ、ソリッドもまだパラレルに来たばかりということもあるから仕方がないか。
ボクはシイと同じ様に説明をする。
「まぁ、慣れてきてからで良いから他の住民に挨拶してね。あと、絶対に本体には触れないでね。」
ソリッドはテキトーな返事をしてそそくさと自分の空間へと籠ってしまう。つれないやつだな。
それともただのシャイボーイ?人見知りかな。
まぁいいや。とりあえずこれでパラレルの住民は五人となった。
仲間が増えるのは嬉しい事なのかな?よくわからないけど早くソリッドとシイがパラレルの住民に馴染むといいな。
ボクもソリッドとシイの本性を知りたいしね。
そんな事を考えていると不意に体に鋭い痛みを覚える。
だいたい想像はつくが一応振り返る。
すると予想通りスコマニアデビルがボクの本体をかじっていた。
「おいこら!本体かじるな!!痛いんだよぉ!!」
慌ててスコマニアデビルを本体から離す。腹へったとスコマニアデビル。
「本体、触れて良いんだ。」
空間の隙間からそんな声が聞こえた気がした。
嫌な予感がする。
この先の日常が不安です。