【水面】
大陸は、周りを海に囲まれている
現在、輸送機メンバーは大陸の浜で一時の休息をとっていた 傭兵以外の全員が、水着を着て遊んでいる
「ミシェル~!行くよ~!」
「あ、待ってセーナ、足場が・・・」
ある者はビーチバレーを
「おやっさん速いっすね」
「若いもんにはまだまだ負けんさ!」
「おやっさんそこまで年取ってないですよね?」
ある者は素泳ぎを
「ジャスミンさん、味見を」
「ん、どれどれ・・・美味しい!すごいじゃないメアリ!」
ある者はバーベキューをしている
それを尻目に、傭兵は携帯端末を操作していた
フランシスカ・ディバイング 最近死神に接触してきた、フルハウス団関係者
今もまた、傭兵は彼女のメールを受け取った 実は、彼女のことは他の輸送機メンバーには全く教えていない フランシスカの頼みで、このことは厳に内密にしていた
ラドリーやジャスミンにも そしてミシェルにも
「どうかした?」
ミシェルが何もしていない傭兵に声を掛ける いつも比べ肌の露出が多くなりがちな水着姿 ミシェルは、フリルのついた白色の物を着ていた 太陽の光が白い布に反射し、パイロットスーツのヘルメットを照らす
「ねえ、遊びましょう? たまにはこんな風に楽しんでも良いと思うわ あなたも、ね?」
華奢な手を伸ばし、ミシェルは傭兵を誘う このところ人を殺め続けていた彼を、ミシェルは精一杯休ませてあげたかった
いつも戦わせてばかりのこの傭兵への罪滅ぼしかもしれない しかしまた、彼ともっと過ごしたいと言うのも事実である
だが顔を上げた死神の手には、依頼のメールが着信していた携帯端末
「お、おい、まさか・・・」
「も、もう仕事ですかミシェルちゃん!?」
「馬鹿な・・・死神、お前はどれほど仕事熱心なんだ」
その場の誰もが、早すぎるバカンスの終わりに落胆した
「・・・行く・・・の・・・?」
悲しそうな顔をしたミシェルが、立ち上がった傭兵を見上げる
本当は、行って欲しくない 彼が望まぬ限りは
こんなときこそ、骨を休めていて欲しい
しかし、ミシェルの想いは踏みにじられる
輸送機のドック、傭兵はタナトスへと向かって行った
「無理・・・して欲しくない・・・」
胸の前に手を置き、ミシェルは呟いた
「作戦内容を説明します・・・」
動揺を隠せないままミシェルは、タナトスのオペレートを開始する
潮風を受けながらタナトスは、その瞳の黄色い光を前に向ける
「今回は委員会の増援艦隊を攻撃、これの殲滅が目的となります」
ならば無論海上戦になるだろう 砂浜にタナトスが棒立ちしているのは、輸送機を飛ばしてからブースターを起動するのも砂浜からブースターを起動するのも大体同じだと結論したからである
ジャスミンも、輸送機を浮かばせる手間が省けたと冗談めかしていた
「敵艦確認!タナトス、出撃してください!」
レーダーに目標の空母が映った瞬間、タナトスは機体の駆動音を大きく鳴らした
それは、レース前のアイドリング
浜辺の砂を大量に飛ばしながら、死神は海上へ舞い上がった
砂浜に機材を置き、ミシェルはオペレートを始めた
その顔には、中断された休暇を残念がる様子がありありと出ている
すると機材を置いている簡易デスクの上に、食欲を刺激する香りを放つ物が置かれた 置いたのはメアリである
「これ・・・」
「私が作った 良かったら食べてくれ」
フォークを手に取り、ミシェルは一口頬張った 咀嚼するたび、その表情が笑顔に変わる
「美味しい・・・」
その顔を見ていたメアリは、死神が飛んでいった方向へ顔を向ける
「ラドリーさんから話は大体聞いた そう死神を責めないでやってくれ」
優しく諭すような言葉に、ミシェルは口を尖らせて反論した
金髪がふわりと揺れる
「責めてなんか・・・」
「いや、その顔は・・・『どうして仕事を優先してしまうの?』って訴えてるようにしか見えないな」
「・・・私は・・・」
青い、というより、黒い海 黒い機体が飛んで行く
それは死神 船を漕ぐ愚かな人間の命を刈りに来た、黒い死神
空中からバズーカを放つ 強烈な勢いの弾は、ちょっとやそっとの砲撃では沈むことのない空母を一撃で粉砕する
直撃、爆発
「被弾しました、もう持ちません!」
飛行甲板に大穴が空き、そこから黒い煙と赤い炎が立ち上る 数秒後、ゆっくりと空母は深海へと消えた
次は護衛のイージス艦 砲撃やミサイルによる迎撃を掻い潜り、死神はブリッジに突貫した
ブースターの勢いそのままに、爪先を突き刺す 金属同士がぶつかり合う音がした イージス艦のブリッジは、刈り取られるように蹴り飛ばされた
海に吹っ飛ばされ、ブリッジは海中に没する 中に取り残された船員の、絶望に満ちた表情と共に
司令塔を失ったイージス艦に、タナトスはガトリングを撃ち込む 戦闘艦とは言え、人型機動兵器を一瞬でスクラップにしてしまう銃撃には耐えられなかった
甲高い金属音が、イージス艦に連続して穴が開いたことの証明
豪快に真ん中から折れ、イージス艦は沈んでいった
「ゼロニ、轟沈!」
「敵機、こちらに向かってきます!」
「迎撃しろ!」
別のイージス艦が主砲を発射する 大太鼓を数倍大きくしたような音が響いた
続いてミサイル 噴煙をあげながら真っ直ぐ死神へと突き進む
体勢を傾け主砲を避けたタナトスだったが、その刹那ミサイルが頭部に直撃する
「ミサイル命中!」
「・・・い、いや、まだだ!敵機まだ健在!」
爆煙を振り払い、タナトスがイージス艦に狙いを定めた 肩の装甲の一部が開き、中から弾頭が顔を覗かせる
高速で発射されたロケット砲が、イージス艦を襲う
それは新たな死神の鎌 魂を奪う、高速弾頭
「敵の攻撃が・・・うわあっ!」
艦体の横っ腹にぶつかったロケット弾は、装甲を突き破りイージス艦の内部で炸裂 エンジンに引火し、大爆発を巻き起こした
エンジンに続き、艦全体に爆発が広がる
そして爆発四散し、原型をとどめず消し飛んだイージス艦
これで最後の敵艦も撃沈できた
奇襲で慌てていたのか、艦隊から脱出できた者はいないようだ これでまた、死神の名は広まってしまうのだろう
踵を返し、タナトスは輸送機の待つ砂浜へ飛んでいった
メアリは言った
「帰ってきた直後に連れていけばいい」
かつて敵として立った女は、今は悩める仲間のためにアドバイスをする 夕日に照らされた顔は、とても凛々しく見えた
「機体の修理中は、流石に何もできないだろう?本当に暇になるさ そこが狙い目だ」
フルーツジュースのカップを二つ手渡し、メアリはミシェルの背中を押した
「ありがとう、メアリ」
「がんばれ、ミシェル」
機体から降りた傭兵のもとへミシェルが向かうのを見送り、メアリは呟いた
「さ、魚を捌くか」
修理班が獲った魚介類を見つめ、趣味の料理を満喫するのだった
ミシェル:フリルのついた白いビキニ
ジャスミン:青のVフロント
サラ:白スク、名札付き
セーナ:黒いラインの競泳用
メアリ:ハイレグ(&エプロン)
男衆:海パン・・・誰得
主人公: パ イ ロ ッ ト ス ー ツ