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【激突】

砂漠の荒野 どこまでも続いていきそうな砂の向こうに、そこにそれはいた

「目標、発見!」

ミシェルが叫んだ

「必ず・・・帰ってきて・・・」

隣でジャスミンがミシェルの顔を覗く

泣いていた

多分、これは最後の戦いだ 何がと言うわけではなく、なんとなく

ここでゼノとヴィッセルが討たれれば、残る組織は白虎帝国と革命者の二つ しかし革命者はヴィッセルの核攻撃に完全に浮き足立っている

白虎帝国が勝ち越すのは目に見えている

ならもう、死神が戦う意味はこれで本当に終わる

もう既に目標の額の報酬はある そして仕事の依頼も無くなる なら、彼が戦うことも、もうないのだ


愛し合う二人で、静かに、歩んで行けるのだ


別の仕事を探すのもいい 二人で一緒の家に住むのもいい もしかしたら、結ばれるのも

だがしかしどうだろう

最後の最期で彼が死んだら?

相手は無数のメカをいくらでも呼び出せ、核をなんの躊躇いもなく撃ち放つような敵だ 

今回こそ、負けて死ぬかもしれないのだ

不安に心臓が押し潰されそうになる 呼吸が荒くなる

実際に戦うのは彼だと言うのに、とても辛くなってくる

だが

だがしかし

ミシェルは信じて送り出した

胸の前で手を握り、一度頷く ブロンドが揺れた

モニターのタナトスを見つめ、もう一度告げた

「必ず、帰ってきて・・・!」

誰でもない、ただ一人のあの人に










{IMG8606}

機体の調子は極めて良好だった

頭部カメラから写される映像は、荒野の向こうを静かに見せる

ハッチは既に開いていた あとは、そのブースターで飛び立つこと

そこから戦いは始まる

「タナトス、出撃お願いしますっ!」

一人の淑女の、甘く魅力的な声がコクピットに響いた

帰らねばならない

他の誰のためでもなく、たった一人のために死神は、勝って生きて帰らねばならない

機体の駆動音が過去最高に暴れまわる それは言うなればレース前のアイドリング

ブースターから燐光が漏れ出る

腰を落とす

そして、推進力を伴って、黒い死神は空へ飛び立った

ブースターの噴射音が辺りに飛び散り、聞く者の鼓膜を刺激する

「信じてる・・・私、いつまでも・・・」

タナトスの飛び立った方、ミシェルは見つめ続けた












蝙蝠が死神に襲い掛かる

醜く寄り集まったプテロプスの群れに一発、右手のバズーカを叩き込む 煙と共に飛んでいく弾は、目にも止まらぬスピードで群れに飛び込んだ

爆風が現れる

一瞬に大穴を開けられたプテロプスの編隊 そこに死神は追い討ちをかける

ガトリングの引き金を絞れば、超速の弾丸の嵐が吹き荒ぶ

まさに凪ぎ払うような光景だった プテロプスが一挙にガトリングで蹴散らされ、余裕綽々に黒い流星が突っ切っていく

プテロプスの群れを乗り越えた先、見えた

六本足のピラミッド

歪みを持ったヴィッセルと、異端の兵器ゼノ もう、後戻りはできない

来た以上、これを打ち破るのみ

両手の武器を構え、撃つ 

最早これだけでもう大概の人型機動兵器は葬り去ることができるタナトスの両手撃ち 速攻で決まる

両手の武器を降ろし、爆風や巻き上げられた砂埃などで見えなくなったゼノを見下ろす

これで終わる 終わった

そのはずだった

煙が晴れる


ゼノのすぐ目の前に、半透明の光の壁が存在していた

そう、バリアシステムだ


一撃で敵を吹き飛ばすバズーカも、秒間三十発の戦車砲なガトリングも、防がれてしまえば意味はない

次はこちらの番だと言わんばかりに、ピラミッドの頂上が開く

それは一本の棒 先端に光が収束し、二秒して、線のように延びていく

ビームはタナトスのバリアに阻まれる 両肩のユニットが、バリアを維持するために悲鳴を上げながら全開稼働していた

十秒、二十秒、三十秒、四十秒

バリアが防ぐ間、ビームは絶え間なく撃ち続けられる もうアリシオンが発射できる限界時間はとっくに過ぎていた

だがまだまだ撃ち続ける ゼノのビームは止まることはなく、むしろまだ出続けていた

ブースターで動き回るも、右へ体を動かせば右へ、左へ動かせば左へとビーム砲の先がタナトスから反れることはない

やがて、バリアが切れた

タナトスの左胸を、ビームが貫いた 溶ける装甲、内部機器は焼き切られ、大きな火花が一つ散った

ゼノの側面から、何かが顔を出した ミサイルだ

ゼノの側面一杯に、ミサイルの頭が飛び出ていた

ビーム攻撃でよろめいたタナトスに、一斉発射されたミサイルが群がった 噴煙は芸術的な軌跡を描き、死神を食い尽くそうと飛んでくる

左手のガトリングを向け、撃つ

無数の弾丸がミサイルを次から次へと貫き、爆散させていく が、数が多すぎた

撃ち落とせなかった分のミサイルがタナトスを襲う 黄金の装甲は予定通り体を守ったが、それ以外はどうか

爆炎が哀れな死神を包んだ

もう、損傷は酷いものだった 装甲が溶け、破れ、剥がれ、凹み、潰れていた

黒い機体は膝を付き、蒼い瞳がその顔相から消えた

ゼノが一歩、また一歩と歩み寄る にじり寄る

そして、前足がぶつかりそうになったところで、タナトスはバズーカを向けた

バリアが張れない距離まで、近付かせた

引き金はしかし引かれない

鉄の蝙蝠が何匹か、ゼノから出てきてタナトスの右腕を拘束していた

あれほどのプテロプスを、ヴィッセルが用意できたのは、ゼノが無数にプテロプスを生産できるためだった

前の片足をゆっくりと引き、ゼノは繰り出した

蹴りだ

崩れ落ちたタナトスの顔面に打ち込まれた爪先

蹴りの瞬間プテロプスは離れ、飛び去った

吹っ飛ばされて無様に転がり、そのまま仰向けに倒れたタナトス

もう、動かなかった


ゼノは、タナトスに歩み寄ってきていた

プテロプスは、死肉を狙う禿鷹のごとくタナトスの上を飛び回っていた

タナトスは、動かなかった 動けなかった

死神が、力尽きていた









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