3話
日が出る前に起きて柔軟体操をする。暗い町の中を1時間ほど走り続ける。終わったら、木刀で素振りだ。「剣術」スキルはないけど、もしかしたら発現してくれるかもしれない。
汗だくになった後、自分の部屋に戻って生徒手帳を手に取る。
名前:ネクロ
歳 :18
性別:男
レベル:13
スキル:なし
「やっぱり、スキルは出ないか。」
この生徒手帳は、簡易のステータスの確認ができる。解析系統のスキル持ちが開発したものだ。本来は、貴族しか確認できないようなものだが、これができてからは、割と簡単に確認できるようになっている。それでも、一般の人は自分のステータスを知らない人が多い。
下に降りて朝食を食べた後は、学校だ。
いきたくねぇ。
学校に行って自分の席に着く。学校には友達はいない。昨日の3人組のようにあからさまな暴力をしてくる奴は少ないが、基本見下されている。
周りの奴が貴族や金持ちの子供ということもあるが、一番は俺のレベルとスキルだろう。
「よお。今日も来たのかよ。ネクロ。」
昨日の3人のうちの一人だ。がっちりとした体格で「剣術」持ちだ。
「……ああ。もう少しで卒業だしな、サウロ」
「まあいい。今日もいつものところに来いよ。」
そういいながら自分の席に戻っていく。他にも二人いるが違うクラスだ。1クラス20人の学年で3クラスある。同期は合計60人いて、俺以外はほとんど全員が騎士団に配属が決定している。
物好きなやつは義勇兵になって、自由に魔物を倒して一攫千金を狙っている。魔物は体内に必ず魔力を宿した『魔石』と呼ばれるものを持ち、これが高値で売れる。魔物の素材も高く売れるので、珍しい魔物を倒せば、かなりの金額が手に入るだろう。
とはいえ、これは少数派になる。義勇兵とは名ばかりで、現実は荒くれ者が多い。騎士団とは一線を画し、騎士というだけで身分や将来が保証される。それを捨ててまで義勇兵になろうというのは、物好き以外の何物でもないだろう。もちろん、義勇兵にもまともなものもいるが、社会のはみ出し者が集まる印象はぬぐえない。
「お前ら、席に着け!!いつまでそうやっているつもりだ。1か月後には騎士になるんだぞ!!」
全員急いで席に戻っている。この時期に問題を起こせば、騎士団に入れない可能性があるしな。そう考えると、サウロ達の3人組は無駄に度胸あるな。6年間何も言わなかったのもあるが、あいつらも一応貴族の端くれだろう。何か問題が出れば、揉み消すくらいはするか。退路が消えた。笑えない。
「教科書開けよー」
最初の覇気はどこいった。
次は実技の時間だ。最悪だ。フルボッコタイムである。
「オラァ!」
「ギャッ!」
「セイッ!」
「ブッ!!」
などなど。ボこられまくりである。さすが騎士|(予定)だわ。よく生きてるな俺。
これはまだマシだ。最悪なのは魔法使いだ。
「……」
「アチイイイィィィィ!!!」
やつら何も言わない。予備動作なしである。聞くところによると、超集中しているらしいが、傍から見れば突然火を出しているわけで。
「お前ら、死人出すなよー」
軽いな、せんせい。たすけて。
授業も終わり、皆は帰るが俺はまだ帰れない。サウロ達3人組にボこられるのもあるが、図書館で勉強である。木刀の素振りもそうだが、勉強して解析系のスキルが発現すればとのことである。
解析系のスキルは戦闘力はないが、いろんなことを知ることができる。『解析』『分析』『鑑定』などが有名なスキルだ。中身はあんまり変わらないが、発現する人によって、名前が異なるので『解析系』と呼んでいる。
このスキルの発現者はいろんな知識を持っている場合が多い。なので、俺もちゃんと勉強して解析系になろうという魂胆である。……6年やってるけど。
何の成果もなく森でボこられ、家に帰り、飯を食い、寝る。
本当に何のスキルも発現せずに、一週間たとうとしていた。
事件が起こる。
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