表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

外伝 明日この愛の中で

 外伝 明日この愛の中で


 私の名前は、古河愛(ふるかわあい)。普通に学校に通う、女子中学生。

 お父さんと二人暮らしで生活している。特に困った事も起こらないから、私はこの生活がすごく好きだ。お父さんが大好きだ。

 私は、お母さんの事を知らない。小さい頃は何回もお父さんに「お母さんはなんでいないの?」と聞いていた。でも、お父さんは「いつか、愛が大きくなったら教えてあげる」と言ってから、まだ、教えてくれない。もしかしたら、忘れているのかもしれないと思ったけど、私はまだ我慢する事にした。

「お父さん、ご飯出来たよ!」

「おぅ」

 私は中学に入学してから、毎朝、朝食を作るようになった。お父さんは毎日毎日、仕事で忙しくて、そんな余裕はないと中学生になってから気付いた。だから、お父さんのお弁当も作るようになった。

「じゃあ、仕事に行ってくるな」

「いってらっしゃい!」

 私も学校に行く準備をして、家を出る事にした。

 学校まで歩いて行き、教室を目指して、まだ生まれたての太陽の下を心地良く歩く。これは、私の生活の「いつも」だ。これが、当たり前になっている。

 学校に入って、教室に行く。そして、友達と話をする。それは、とても楽しい事だった。

「愛ちゃ〜ん! おはよう!」

「おはよう! 朋子」

 この子は、私の親友の柳川朋子(やなぎかわともこ)。とても明るくて、話やすくて、最高の友達だ。

 他にも友達は何人もいる。朋子と他の子たちが私の席に集まってきた。いつもの朝の集会の始まりだ。何でも無い事を話しているだけなのに、それすら楽しく感じられる。

「私ね、明日お母さんとデパートに洋服買いに行くの!」

 一人の子が言った。

「私も! お母さんと遊園地に行ってくるんだ!」

 皆、明日の休日はお母さんと出掛けるらしい。少し、嫉妬感が込み上げる。

「私はね、お母さんと東京に行く! 田舎じゃあ買い物出来ない物があるからね」

 朋子もお母さんと出掛けるらしい。

 私の嫉妬感は徐々に徐々に、怒りへと姿を変えていった。

 そして。

「何よ! みんなお母さんの話ばっかりして! 嫌がらせなら辞めてよ!」

 私は教室を出て行った。登校してきてまだ、数分しか経っていないのに。鞄も全部学校において、私は走って逃げた。

 

 走り続けて、川原の近くの土手の桜の下まで来た。

 息を切らして必死に走ってきたから、もう、足はグダグダで歩く事も間々ならない。

 本当に疲れたから、もう座ろうと思って先の方にある桜の木の下を見た。そこには、寝そべっているお父さんの姿があった。

「……お父さん」

「よぉ、愛じゃないか。どうしたんだ? こっちは学校の方向じゃないだろ? ランニングでもしてるのか?」

「お父さんこそ、仕事行かないで何をしてるの?」

「ただ、寝てるだけだ」

「いつもこんな事してるの?」

「あぁ、早く家を出て、時間ギリギリまで此処にいるよ」

「どうして?」

 お父さんが何故此処にいるのか、すごく不思議で疑問に思った。まるで、他人を見るような目でお父さんに質問をした。

「ここは、思い出の場所だからな」

「思い出の場所……?」

「あぁ、そうだ。愛こそ何でこんな所に来てるんだ?」

「それは……」

 私は、朝の事をすべて話した。

 友達と話をしていて、皆にはお母さんがいるのに、私には居ない事がとても悔しくて、飛び出してきたと。

 その話を聞いたお父さんは、ゆっくり立ち上がって言葉を吐いた。

「此処はな、俺と愛のお母さん、凪愛子と出会った場所なんだ。俺がさっきみたいに寝てたら、愛子が来た。まだ、愛が小さかった時、俺は、大きくなったらお母さんの事話してやる、って言ったよな?」

「うん……」

「お母さんが居なくて悔しいと思ったのなら、もう大きくなった証拠だ。しっかり、全部教えてやるよ。凪愛子の事……」

 そして、お父さんは話し始めた。お母さんの事を。

 桜の木の下で出会った事。一緒に昼食を食べていた事。お母さんと写真を撮っていた事。お母さんは病気だったのに、それを隠して最後にお父さんとのモノを残そうとした事。そして、私が産まれた事。全部教えてくれた。

 私は泣き始めてしまった。今までずっとお母さんの愛なんか感じた事が無かったのに、今は新鮮にそれを感じられる。それが、嬉しくて、嬉しくて。

「愛、分かったか? お前は俺だけの愛で育ったんじゃない。ちゃんと二人分の愛で育ったんだ。だから、お母さんがいなくても、もう、胸を張って生きていけ。悲しみを溜め込めるほど、お前の中は空いてない。お母さんからの生きる力が沢山入っているからな。お前は『愛』で沢山なんだ」

「うん」

「じゃあ、早く行くぞ。もう、完全に遅刻だろ? 早く行かないとヤバイぞ!」

「そうだ! じゃあ、お父さん行ってくるね!」

「あぁ、行ってらっしゃい」

 私はまた、学校に向かって走り始めた。

 学校に着いたら、ちゃんと朋子達に謝ろう。

  

 皆は休日をお母さんと過ごすらしい。

 それは、とてもとても素晴らしい事だ。憧れないなんて事ははっきり言うとない。まだ、嫉妬感は確かに一握りある。

 でも、私だって、休日過ごせる場所がある。


 私は、明日この愛の中で過ごそう。



思った以上に読者の方々の数が多くて驚いています。なので、今回はその後の『愛』の話を書いてみました。本当にちょっとの話ですが、これを読んで「明日また空の下で」の『愛』知ってください。そして、皆さんも一人ではない。と知ってください。貴方の両親は貴方に悲しみが溜まらないくらい、『愛』を注ぎ込んでいます。読んでくださり、ありがとうございます。これからも宜しくお願いします。では、またどこかで……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ