第19話
総司の療養所―
総司は床に伏せていた。
具合が悪い。
体を起こす気力もなくなっている。
総司「…もうそろそろなのかなぁ…」
床に体を横たえたまま、そう呟いた。
総司「!!…」
総司は咳き込んだ。そして、その咳が止まらなくなった。
その咳の声を聞いて、老婆が飛び込んできた。
老婆「宗次郎さま!…しっかり…!」
老婆は必死に総司の背をさすった。
総司「…ちか…よるな…」
病がうつるかもしれない…。その思いで、総司が咳き込みながら必死にそう言うが、老婆の耳には届いてないようである。
その時、胸に苦しさを感じ、喉に何かがつまった。
総司「!!…」
息が止まり、その場に思わず手を叩きつけると、胸から何かを吐き出した。
赤黒いものが床に広がった。
総司は血を吐いたのである。今までにない、大量の血だった。
老婆は驚いて、思わず尻込みした。
これまでも何度か血を吐いたことがあったが、今のような吐血は初めてだったのである。
総司は咳き込み続けた。先ほど喉を通った血が、喉にまだ残っているのである。
すべて吐き出さないと、その血が固まり、窒息してしまう危険もある。
総司「…水…水を…」
老婆は、はっとしてあわてて水を取りに行った。
総司は咳き込み続けた。目の前は血の海になっている。
総司(…まだ…まだ死ぬわけにはいかない…まだ…!)
総司は咳き込みながら、そう自分に言い聞かせていた。