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【プロローグ】 剣聖はコストカットで『切られる』

初投稿です。学業の傍らちょくちょく掲載していく予定です。拙文ですが、もっとこうした方が面白そう!!などご指摘ありましたら気兼ねなくお送りいただけますと幸いです。宜しくお願いします。

ユーリの役人生活を終わらせたのは、悲しいほどに薄っぺらい『解雇通知』の紙切れだった。


「……であるからして、王国財政の再編成に伴い、対魔王軍戦線への資源集中を――」


目の前の貴族の言葉も、途中から頭に入ってこなかった。


要するに。


「……俺が、リストラ…?」


数秒遅れて、現実だけが理解として落ちてくる。


「いやあ、待ってくださいよ!!俺は、確かに完璧ではないですけどそれなりに真面目に――」


ユーリの必死の抗議を、上役の貴族は強めの咳払いで遮る。


「ユーリ、いえ、『元剣聖のユリウス・ランドバルト』殿、あなたがかつて“剣聖”であったことは私とて承知しています。魔王軍の領地の3割を押し返したかの大戦の英雄である貴方を尊敬もしています」


それはそれとして と、貴族は業務的な口調を崩さず続ける。


「その後の戦いで大敗を喫して力を失い、御身は今や剣すら満足に振れないのも事実」


「だからこうして新しく仕事をくれた国には感謝していますよ!!!書類仕事だってもう大分慣れてきたのに」


言葉は勢いのまま出たが、途中で引っかかった。


ユーリとて、再編成の波が片田舎にある自分たちの庁舎まで及びそうなことは前々から聞いていた。そうなった場合、能力と役職が釣り合っていない自分がまず切られる対象になることも察しがついていた。


「……今さら、それを全部無しにするっていうのは……あんまりじゃないですか」


声の勢いだけが、少しずつ弱くなる。


それでも、どうにか繋ぎ止めようとするように続けた。


「国の為に身を粉にして働いた末路が…これだって言うんですか…??」


その言葉は、気づけば少しだけ掠れていた。


「個人の功績は、その判断を左右しません、」


ユーリの喉が一度だけ動く。


何かを言おうとして、やめる。


言っても無駄だと、理解してしまったからだ。


「……ともかく」


貴族は席を立ち、よれた服をサッと整え出口のノブに手をかけた。


「伝令役の私に言われても困ります。明日までには荷物を纏めて出て下さい。私共とて元英雄に手荒な真似はしたくないので、お願いしますよ」


「っ……!!そんな、待ってくださいよ!!」


声がやっと出た時には、扉はとうに閉まっていた。


肩を落として、握りしめて少ししわのよった解雇通知に再度目を通す。勿論、文字に変化はない。


持っている意味合いの割に、それはあまりに軽かった。


「……はは」


あまりに悲痛な自嘲の声に、隣の同僚はたまらず書類を整理していた手を止めた。


「……ユーリさん」


言いかけて、言葉を飲み込む。


皆も同様に気まずそうに視線を落とし、一先ず各々の仕事に没頭している。


ユーリはあまりにいたたまれない雰囲気に、ペンとインクだけを持って逃げるように戸口に向かった。


一度だけ振り返るが、見送るものは誰もいなかった。



いそいそと階段を降り、扉を開けて吹き付けてきた外の空気は、いつもよりいっそう冷たく感じられる。

「…戦争の時よか寒いかもな…」


か細い声は、そのまま北風にかき消された。

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