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マヤの理想郷のつくり方  作者: 蒼井スカイ
第1章
19/21

17.奴隷商人

 マヤはリビトの提案で、次に王都クレアシオンを目指すことにした。幸いマテリアから王都までそれほど遠くはなく、半日あれば移動できる距離だった。


「クレアシオンはこの国で一番大きな町よね。どんな町なんだろう? リビトは知ってる?」

「俺もまだ行ったことがないんだ。ただ聞くところによると、城塞都市で多くの人間が行き来してるらしい。港町のアエクールからも近く、異国との貿易で食料や魔鉱石、武器が数多く入ってくると聞いた」

「へぇ、じゃあ美味しいものもたくさんあるかもね」

「……」

「リビト?」

「あ、いや。お前は食い意地が張ってるなと呆れていたんだ」

「食い意地が張ってるのは私だけじゃないと思うんだけど? 王都なら、頬が落ちるくらい美味しいスイーツがたくさんあるかもしれないわね」

「スイーツ……。ゴクリ」

「ほらね? そういうリビトも食い意地が張ってるじゃない」

「俺はまだ何も言ってないだろ」

「まだ、とか言ってるし」

「うるさいな、いちいち」


 マヤもリビトも昨日のことは一切触れなかった。お昼過ぎ、リビトが両手一杯に食べ物を持ってきた。リビトの部屋の方が少し広いようで、そちらで少し遅めの昼食をとることにした。


 昼食後、町を散策すると思いきや、リビトが王都に向かうと言い出した。マヤはマテリアの町を散策したい気持ちはあったが、女勇者たちの一行と顔を合わせるのは気が乗らなかったため、黙ってリビトの提案に乗った。


「ねぇ、王都に何か用があるの?」

「まだはっきりとは断定できないが、父親の消息が(つか)めるかもしれなんだ」

「えっ! そうなの? 良かったじゃない!」


 マヤは仕事の早いリビトに感心していた。昨日、自分よりも嫌な気分になっただろうに、気持ちを切り替えて父親につながる手がかりをしっかりと見つけてきた。それに比べて自分はどれほどお荷物なのだろうか。お昼近くまで寝ているだけで、ほぼ何もしていない。


 自分は旅行者ではないのだ。はじまりの森を出た時のことを改めて思い出す必要があると反省した。


「荷造りをしたら、迎えに行く。マヤも荷造りを済ませておけよ」

「うん、分かった! すぐに部屋へ戻って支度するね」

「あぁ、そんなに急がなくても構わない」

「うん、でも早い方がいいし……、じゃあ後でね」

「あ、おい……!」


 マヤはリビトから逃げるように部屋を出て自室に戻った。


 そして、今馬車に乗ってマテリアから王都に向かっている途中だ。暫く馬車に揺られていると、前方から大きな馬車が列を成し、こちらの方向に進んでくるのが目に入った。


「随分大きな馬車ね」

「きっと商人たちの馬車だろう。この辺は王都が近いから、離れた町や村を回って商品を売っているんだ」

「へぇ、そうなんだ。リビトって、案外物知りなのね」

「一応、はじまりの森を出る前に調べられることは頭に入れてきたからな」

「そうなの?」

「……」


 リビトが突然黙り込んだため、マヤは不思議に思って話しかける。


「リビト? どうかした?」

「あぁ、お前とはここの出来が違うんだよ」


 リビトはマヤを見ながら人差し指で自分の頭をトントンと軽く突き、笑って見せた。


 マヤはリビトを一瞬でも心配したのが馬鹿らしいと思った。


「それって私が馬鹿だって言いたいの?」

「俺は馬鹿だなんて、一言も言ってないぞ」

「何よ! ここの出来が違うって言ってたじゃない!」


 マヤはリビトがさっき自分に見せたように、同じしぐさを見せた。


「そうだったかぁ?」

「そうよ! もう! 私のこと馬鹿にして!」

「あははは」


 リビトがお腹を抱えながら笑っている。マヤが「もう、知らない!」と、リビトへの怒りを表した時、大きな馬車の一行とすれ違った。


 マヤはリビトと言い合いをしているのを他人に見られたことを恥ずかしく思い、咄嗟(とっさ)に口を閉じる。恥ずかしさのあまり、顔を下げているとリビトがフードを深く被らせた。


「お前、本当にガキだなっ。あははは」


 大きな馬車の一行とすれ違ったのを音で確認し、顔を上げる。リビトに一言言ってやろうと横を見ると、そこには笑顔の消えたリビトがいた。


「リビト?」

「しっ! 静かに」


 リビトは自分の口に人差し指を立て、マヤが話そうとするのを止めた。暫くの間、リビトは静かだった。


――リビトは急にどうしたんだろう? マグスにしか分からない何かがあるのかな。


 リビトの顔を(のぞ)いていると口が微かに動き、キラッと何かが光って消えた。マヤはリビトが何らかの魔法を使ったのだろうと考えた。何をしたのか気になったが、その真剣な表情に話しかけることができなかった。すると、リビトが神妙な顔で口を開き沈黙を破った。


「マヤ、今から言うことを黙って聞くんだ。いいな?」


 リビトの顔は真剣そのもので、マヤを茶化しているようには到底見えない。マヤはリビトから何を聞かされるのか、と緊張感が走った。思わず喉からゴクリと音が鳴った。リビトが話し出すのを固唾を飲んで待つ。


「今すれ違った馬車3台のどこかにマグスか半魔人が捕らわれている」

「えっ?」


 リビトは、マグスや人とマグスの両方の血を受け継ぐ半魔人は人間に捕まると、奴隷にされることがあるという。特に人間の容姿と似た半魔人は美しい容姿の者が多く、貴族や王族に高く売れるのだそうだ。


 半魔人は人間とマグスの親の遺伝子と魔力を受け継いでいる。魔力が高くなければマグスとの間に子を授かれないという。


 そもそもマグスと契りを結べる魔力があるのは階級の高い貴族か王族に限られる。貴族や王族は美しい容姿の者を血族に引き入れる傾向があるため、マグスとの間に生まれてくる半魔人の子どもも当然美しい容姿を持つのだ。


 奴隷として売られたら、どんな目に遭うのかはリビトでも分からないという。奴隷を買い取った者の中には自分の血を受け継ぐ半魔人の子どもを引き取るために奴隷商人と取引する者もいるかもしれないが、それは余りに楽観的すぎる考えだろう。そんなことを考えていると、リビトがさらに驚くことを言い放った。


「俺はお前を近くの村の宿に送ったら、すぐ助けに行く。お前は宿で大人しく待っているんだ。いいな?」

「ちょっと待ってよ。リビト1人で助けに行くだなんて、危ないんじゃ……」

「いや、馬車にいた奴らの魔力は大したことがなさそうだ。そう難しくはないだろう」

「でも、もっと強い魔力を持った人と合流するかもしれないじゃない! やっぱり危険だよ」

「だとしても俺は行く」


 リビトはマヤの方を見ようとしない。捕らわれた半魔人を助けに行くという決心は固いようだ。マヤは「自分も」と言いかけたが、自分が着いて行っても足手まといになるだけだ。自分にはリビトのような魔法は何1つ使えない。


 馬車にいた人たちも魔法で交戦してきたら、たとえ半魔人を助けられたとしても、自分と2人を守りながら逃げるのは難しいだろう。


やはり、自分はリビトの言うように宿で黙って待っていることしかできないのかもしれない。「分かった」としか答えられなかった。


 どこかの村に着くと真っ先に宿を探し、リビトは借りた2部屋の中を一回りしてから「俺が戻ってくるまで絶対に1人で行動するなよ」と言って、宿を出て行った。


 客室の窓を眺め続け、どれくらいの時間が経っただろうか。今夜の宿は小さな村だけど大通りに面しており、賑わいが感じられた。明るかった窓の外はすでに日が落ちようとしている。


 ふいにお腹からぐぅ~っと緊張感のない音が鳴った。リビトを心配しているのに、お腹は正直だ。ここはしっかり食べておこうと思い、宿へ来る前に大通りの途中の店で買ったパンとチキン焼き、果実ジュースを紙袋から取り出す。パンは横半分にちぎり、鶏肉のスパイス焼きをパンで挟み、食べることにした。


 客室にあった空のグラスを取り、果実を絞ったジュースを注ぎ入れる。ジュースの色は透明感のあるクリーム色で、香りと味は林檎に似ていた。


 お腹が満たされ、ついついベッドの上で横になる。少しだけ目を(つぶ)るだけ……。


 マヤが目を覚ました頃、窓の外から温かみのある光が見えた。ハッとして起き上がり、窓の外を見上げるとすでに空には幾千もの星が瞬いているではないか。


「リビトは?」


 隣接するリビトの部屋側の壁に耳を当てるが、声も物音もしない。リビトと別れたのは正午と夕方の間位の時間だ。窓に張り付くように大通りを見下ろすと、歩く人は少ない。店先に呼び込みの人がいないことから、店内には十分なだけの客がいる。つまり、今は皆が夕食をとる頃だと推測できる。時間が存在するなら、夜7時位だろうか。


 リビトに何かあったのではないか? マヤはリビトを探しに行こうとドアのそばまで行ったものの、足がピタリと止まった。


「リビトは『絶対に1人で行動するな』と言ってた。私が無暗に動くのは危険かもしれない」


 自分を納得させ、再びベッドの上に座る。それでも心の中の騒めきは強まる一方だ。


「リビトなら大丈夫。リビトは魔法を使えるもの。きっと大丈夫……」


 ただボーっと待っているだけではリビトの心配ばかりしてしまう。所持品の中に、気を紛らわせるような物がないかカバンの中を漁ってみるが、もちろん何もない。眠ろうとベッドへ横になるが、さっき寝たばかりでかえって目は覚めてしまった。


 静寂な室内でただ1人。頭の中に浮かぶネガティブなイメージを何度か理性で消し去ったが、次第に悪い方向へ引っ張られてしまう。


「もしもリビトがピンチだったら? リビトを助けられるのは私しかいない……。でも私に何ができる?」


 せめてリビトの無事を確認したい。だが、リビトはどこへ行ったのかも見当がつかない。どうしたら……。


 マヤは思考を止め、ベッドへ勢いよく倒れ込んだ。そのとき、ふいに胸元で何かがキラリと光ったように感じた。右手を胸元に伸ばすと、布越しに何か小さな硬い物に触れた。服の中へ指を突っ込み、その硬い物を取り出すと、それはプエリの森を出発する時にレックスからもらった餞別(せんべつ)の品だった。


 その赤い鉱石はレッドベリルといって、プエリの森でしか採れない貴重な鉱石だとレックスが教えてくれた。貴族や王族に人気があるいう。プエリで採れた鉱石は半魔人や人間に変身できるマグスが代わりに売ってきてくれるそうだ。


 レックスやピノンたちは元気にしてるだろうか? 少し前に出会ったばかりの関係だが、すでに懐かしいと思ってしまう。この世界にスマホでもあれば、暇つぶしも簡単にできただろう。マヤは赤い鉱石をじっと見ていた。その目は次第に大きく見開き、細められた。


「そうだ! そうよ! 何で今まで気付かなかったんだろう」


 レックスはレッドベリルのネックレスを手渡した時、自分にこう言っていたではないか。「心の中で願うだけで、いつでも僕とつながれるから」と。


 レッドベリルは魔鉱石の一種で、魔力を入れた相手と通信ができる優れたアイテムになるのだ。レックスはこれをマヤに渡す前に自分の魔力を注いでいるから、いつでもどこにいてもレックスと通信できると。


「レックスに助けを求めればいいのかもしれない。ものは試しだ。さっそくやってみよう」


 マヤは心の中で「お願い、レックスと話をさせて」と唱えた。すると、魔鉱石はさらに赤い光を放った。どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「マヤ殿、マヤ殿なの?」

「レックス? 本当に通信できた!」

「あぁ、レッドベリルを介して通信してるんだね。さっそく連絡をくれて嬉しいよ」

「久しぶり。といっても数日ぶり位だけど、皆は元気にしてる?」

「えぇ、もちろんです。お二人ともお元気ですか?」

「もちろん! あっ、そうだ! あのね、突然なんだけど力を貸してほしいの!」

「私にできることがあれば、何でもしますよ」

「リビトが、リビトが捕らえられた半魔人を助けに行ってから戻って来ないの!」

「リビト殿お1人でですか?」

「うん。私は魔法も使えないし、足手まといになるからって……」

「それは心配ですね……。それで私にお願いとは?」

「リビトの無事を確認したいんだけど。この世界のことはよく分からなくて。何かいい方法はない?」

「そうですね……。リビト殿と通信できる魔鉱石は、持ってないですよね……」

「レックス、とても図々しいお願いになるのだけど、一緒に探してもらえないかな……」

「……」


 レックスが小さく溜息をつくのがマヤにも分かった。


「マヤ殿、我等はこの森から出ることはできないんです。マヤ殿を助けて差し上げたい気持ちは山々ですが、森の掟を破るわけには……」

「そうよね、ごめんなさい。無理なお願いをしてしまって……。あとは自分で考えてみるね」

「マヤさん! 私はピノンです。マヤさんの状況を横で聞かせてもらっていました。マヤさん、クーリアはそばにいますか?」

「クーリア?」

「マヤさんたちの馬車に繋がれている魔馬の名前です」

「あぁ! あの馬クーリアと言うのね。でも、馬がどうしたの?」

「近くにいるのですね? それは良かった。クーリアはリビトさんの魔力を感知できます。クーリアにリビトさんの所へ連れて行ってもらえば、リビトさんと合流できるはずです」

「そうか! そんな裏技みたいな手があったんだ。ピノン、ありがとう! さっそく行ってみる!」

「マヤさん、待ってください!」

「ん? どうしたの?」

「リビトさんの無事を確認したら、すぐに安全な場所に移動してください! リビトさんもマヤさんが危険な目に遭うのは望まれないでしょうから。決してリビトさんが対峙している人間に見つからないように注意してください!」

「分かったわ。ひとまず通信は切るわね」

「マヤさん、いつでもいいので安全な場所に移動したら、必ず連絡をください」

「うん、無事を祈っていて」

「はい、皆で祈っております。どうかご無事で!」


 ピノンたちとの通信を切り、散策用に持ってきた小さなショルダーバッグの中の物を全て出し、万が一に備えて武器や目くらましになりそうなものを探す。


「使えそうな物は……、コショーが入った袋と護身用のナイフかぁ。あっ! これは案外使えるかもしれない」


 コショーと護身用ナイフははじまりの森を出る時に持ってきた私物だ。もしも野宿をすることになったら、リビトに魚でも獲ってもらって、スパイスとコショーで味付けをして調理すればいいと考えていた。


 これから危険な場所に飛び込むというのに緊張感のないことを考えてしまった。


 マヤはいそいそとバッグに持ち出す物をしまいこむ。必要な荷物を入れ、ショルダーストラップをたすき掛けにし、宿を後にした。


 馬小屋に預けた馬車を受け取りに行くと、見張り役からチップを強請(ねだ)られた。リビトから万が一に備えて、いくらかの食費と馬小屋の見張りに渡すチップ分の硬貨を分けてもらっていた。チップを渡すと、急に愛想を良くして預けた馬車を外に連れ出してきてくれた。


 村の入口には見張り役の村人が2人立っている。「兄ちゃんを迎えに行く」と言ったら、簡単に通してもらえた。村の中では人目もあるから、村が見えなくなった所で馬車を降り、クーリアの前に立った。


「クーリア。あなたの名前はクーリアと言うのよね?」


 マヤがクーリアに話しかけると、プイッと顔を横に向けた。マヤはクーリアが自分の言葉を理解していないのではないかと思ったが、リビトを探す方法は他にはなくクーリア頼みだ。何とか機嫌を直してほしいと考え、ショルダーバッグの中からある物をクーリアの前に差し出した。


 マヤがバッグから取り出したのははじまりの森で最後に作った焼き菓子だった。時間が経っていたため、しっとりしていたクッキーから水分が抜け、手で割るのも苦労する硬さになっていた。


 馬が食べるか分からないが、ものは試しだと思い、クーリアの鼻の近くへクッキーを近付けた。すると、瞬きをするよりも早くマヤの手からクッキーを奪い取り、ボリボリと音を立てた後ゴクンと嚥下(えんげ)する音が聞こえてきた。


 クーリアはクッキーが気に入ったのか、次も寄越せと言わんばかりに鼻をマヤの腕に押し付けてくる。


「良かった。クッキーを気に入ってくれたのね! まだあるから、ゆっくり食べて」


 あっという間に手持ちのクッキーは1枚も残らず、クーリアのお腹の中に収まった。すると、どこからか声が聞こえてきた。


「私に何か用なの? どうしてリビトは一緒じゃないの?」

「えっ? 誰?」


 マヤは辺りを見回すが、誰の姿も気配もない。


「失礼ね! あんたの目は節穴なの? 目の前にいるのが分からないの?」


 その声の主は苛立ちを隠さず、マヤを馬鹿にする口ぶりで話しかけてくる。


「私の目の前……」


 そこにはマヤの目をじっと見つめるクーリアの瞳があった。


「本当に馬鹿なんだから。それでリビトに何かあったのかって聞いてるでしょ!」

「クーリア!? この声、クーリアなの?」


 クーリアは大きな溜息を吐き、さらに語気を強めてマヤに詰め寄る。


「だから! リビトはどこなの?」


 マヤはようやく自分が置かれている状況を思い出した。


「そうだった。リビトが捕らわれた半魔人を助けに行って、戻って来ないの! クーリア、お願い! あなたならリビトの居場所が分かるわよね? 私をリビトの元へ連れて行って欲しいの!」

「あの子ったら! リビトはいつ頃出て行ったのよ」

「夕方より少し前位……」

「……」


 クーリアは何か考えていたのか、声が聞こえなくなった。少しの間を置いて、「少し離れて」と短く言った。マヤが数歩後ろに下がると、クーリアはブルブルっと大きく全身を揺らした。その瞬間、荷台が小さくなり、クーリアの背の上でコンパクトな鞍に変わった。


「時間がないわ、今回だけは私の背に乗ることを許可してあげる。さっさと乗りなさい」

「でも、私乗馬はしたことがなくて……」

「あんたはただ座って、振り落とされないように掴まっていればいい」

「うん、分かった……」


 マヤは馬の背に乗るのは初めてで、1人では(あぶみ)に足をかけることもままならなかった。クーリアは再び大きな溜息を吐くと、前足を器用に折って前傾姿勢になった。鞍の高さが低くなったことで、乗馬初心者のマヤでも何とか1人で乗ることができた。


 マヤが鐙に足をかけ、鞍の前橋を両手でしっかり掴むと、クーリアは「飛ばすわよ。振り落とされても助けないわよ!」そう言って、土埃を上げながら道なき道を走り出した。マヤはクーリアの背と平行になる位に上半身をクーリアの背にピタリと密着させ、振り落とされないように両手に力を入れたのだった。

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