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後宮の侍女  作者: 米野雪子


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9/11

エステルの事情


子供の頃から、私は感情が希薄で妙に冷めていた。

良く言えば、理性的で冷静沈着。

悪く言えば、無表情で愛想がなかった。


可笑しくもないのに、意味もないのに愛想笑いなんて出来なかった。

一人で読書を楽しみ、膨大な知識に触れる時間が何より好きだった。


そんな私に、周りの大人達は口々に言った。

そんなんじゃ、女の子はダメ。


もっと明るく笑顔でいなさい、もっと積極的にハキハキとしなさい、

もっと愛想よく可愛くしなさい、もっと気が利くよう周りに気を配りなさい、

もっと友人を沢山作りなさい、もっと率先して人を助けて優しくしなさい、

もっとみんなと打ち解けなさい、もっと素直に言うこと聞きなさい、

もっと、もっと……


そして、大人になっても、それは続いた。


女に賢さはいらない。

勉学より、男性を立てて機嫌をとって、従順にしなさい。

そうすれば、男性はあなたを大切に愛して、幸せにしてくれる。


一つこなすと、次々と要求される。

努力はしたが、次第に私の心は疲弊していき、何も感じなくなった。

だって、自分じゃないみたいで、どうしても受け入れられない。

ずっと自分を偽って、物わかりのいいフリを演じ続けた。 


干渉を受けるたび、我慢を強いられ、

自分の家族でさえ息が詰まる。


あの人たちに、悪気がないのはわかっている。

誰からも好かれる女の子にするのが、私の為になると本気で思っているのだ。


だけど、私の本質を理解しようともしないで、

私を変えようとしてくるのは、どうしようもなく不快で嫌だった。


私は一人で、ただ静かに…穏やかに暮らして読書をしたいだけ。

誰かに認めてもらいたいなんて、思ってない。

迷惑もかけるつもりもない。




誰も…分かってくれない。




みんな努力してるんだよ?

大丈夫、そのうち慣れて平気になる。



“ 全部、あなたの為なんだよ? ”



凄く前向きで、お綺麗な言葉に毎日傷つけられる。



一人が好きだと言っても、それはとても寂しい考え方だと理解されない。

寂しくないと言っても、強がらなくていい、本当は違うんでしょ。

放っておいて欲しいと言っても、本当は構って欲しいくせに意地を張らなくていい。



口を揃えて、お綺麗なことを言う。




でも、その干渉は、私の人格を全否定する言葉。




そんな言葉を浴び続け、

このままの私は、そんなにダメな人間なのだろうか。

変わらなければ、生きていてはいけないのだろうか。


そう考える私は、何もかも間違っているのだろうか。




私は───欠陥人間なんだろうか。




そう思い込まされた。


だから、目立たないように大人しく生きて、

少しずつ距離をとって、人と関わらない様にしてきた。


でも、放っておいてくれない。

変わり者と蔑んできて、わざわざ干渉してきたり、

大人しくしたらしたで、私をいいように利用しようとする人達もいた。



子供の頃の私には、

周囲の干渉を全て無視できるほど、強くなかった。




もうやめて、放っておいて。


変わろうが変わるまいが、私は私。


フリは出来ても、私という人格は変わらない。


私は、みんなと違うの。





だから、一人がいいの。





私は、顔を上げてセオドアに、自分のことを話す決心をした。


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