5年後とクーデター
私は、無事司書の資格を会得し、
王都周辺にある、小都市の図書館の司書として、勤めることになった。
心配してすがり付く家族を振り切り、やっと実家から自立。
司書専用の寮に入居し、誰にも干渉されず静かに過ごした。
お金を貯めて、将来はもっと自然豊かな山奥の小さな村で
穏やかに一人で暮らそうと考えていた。
そして5年後、
クーデターで、現国王は失脚した。
王族は、流刑や処刑で血を絶やされるが、
情報統制されて、国民には全く情報が入って来ない。
だから、彼がどうなったかは知り得なかった。
あの妙に達観した国王陛下が、失脚したなんて想像できず、
彼の身を案じたが、私ではどうする事もできない。
せめて、生きていてくれれば、いいのだけれど…
その祈りを嘲笑うように、
出勤途中で受け取った、号外の新聞誌面を見て、
心臓が大きく鼓動した。
【ラディウス国王陛下、側妃5名、非公開で絞首刑が執行される】
新聞を持つ手が、小刻みに震える。
“ 俺は、何の為に生きていると思う?”
自分の人生なのに、自分のために生きられない。
彼の人生は、なんて窮屈だったのだろう。
自分は、自己中心的だと言っていたが、
結局彼は、国のために生きる立場から逃げなかった。
別れ際に、私に側にいて欲しいと引き留めた。
あれは、彼が初めて自ら他人に望んだ事なのかもしれない。
それなのに、私はその手を振り切って、
自分だけ自由になることを選んだ。
だって、仕方ないじゃない…
こんなちっぽけな私に、何ができるっていうの?
ホタポタと膝の上で握り締めた手の甲に、
滴が落ち続ける。
“お前が明日から居ないのが、どうにも受け入れられん”
側にいてあげれば、よかったのだろうか…
せめて最後のその時まで…
彼の心に寄り添っていられたら…
死にゆく時に、少しは恐怖を和らげてあげられただろうか…
どうか、どうか…
彼の魂が少しでも、安らかでありますように…




