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後宮の侍女  作者: 米野雪子


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10/11

セオドアの提案


「私は、生まれつき感情が希薄で、無表情で無愛想。

 一人で読書して過ごすのが好きで、普通じゃないと言われ続けました。

 家族や周りから変わるように、干渉され続け、

 お前は欠陥人間なんだと、変わらなければ生きるのさえ許されないと、

 そう思い込んでしまいました。

 努力はしました。でも、本質は変われなかった。

 フリは出来ても、本当の自分じゃないから。

 それらの煩わしさから逃れるために、司書の資格を取り、実家から自立して、 

 今、やっと、自分らしく、一人で、暮らせる環境を、手に入れたんです」



今までの苦い人生を走馬灯の様に思い出し、

一気に話した。


黙って聞いていたセオドアは、目を細めて微笑み、

こう言った。



「俺もお前と同じだ」


「……ええ、似てます」


「ああ。と言っても、環境が違うから全てが同じじゃないけどな。

 お前の理解されない苦しみはわかる。

 俺は、王族なのに、らしくない資質だった。だから逃げた。

 他の者は、そんな私を無責任な卑怯者だと、恵まれた環境で何が不満なのだと、

 理解を示そうとしないだろうが、お前なら理解できるだろ?」


「はい」


「長年、否定され続けて理解もされず、さぞ不安で苦痛だったろう。

 感情が表に出にくいだけで、何も感じない訳がではなく普通に傷つくのだから。

 だから、一人で暮らしたいというのも分かる。 

 だが、やはり女一人は危険だ。

 俺の同行は、どうしても容認できないか?」



正直、私は迷っていた。


ここまで私の人格に理解を示し、

丸ごと受け入れる人は、いないだろう。

しかも、私たちは立場は違えど、似たもの同士。


セオドアの言う通り、

女一人は、どう考えても無防備で危険は伴う。


でも、自分の空間に、誰かがいるのが落ち着かないし、嫌だった。


決心がつかない、私の心を見透かすように、

セオドアは言葉を続けた。



「親しくなりたい相手と距離を縮めるには、

 何が最も有効だと思う?」 


「……会話、ですか?」


「そうだ。

 会話で心を通じ合わせて、共感し相互理解を経て、信頼関係が成立する」


「はい」


「そこから、どんな種類の愛になるかは、お互いの気持ち次第。

 親友になるのか、親愛になるのか、

 恋情になるのか、あるいはただの色欲か。

 そして、男女間の恋情の場合は、もっと相手を知ろうと触れ合い、

 それだけで足りず、隙間を埋める先にあるのが、性行為だな」


「そうなりますね」


「俺は、身分ゆえに、対人で普通に会話するのさえも叶わなかった。

 ところが、お前だ。お前。

 俺の外見を見ても目に熱がないところか、態度は最悪だし、

 俺をゴミでも見るように、平然としている女なんて初めてで新鮮だった」


「…マゾなんですか?」


ペシッ


「あいたっ!おでこ腫れるじゃないですか!暴力反対!」


「そんなに強く叩いてねーよ。…ったく。

 エステル、お前は俺を国王ではなく、

 一人の人間として、対等に会話をしてくれただろ?」


「普通のことでは?」


「俺の見目、地位と権力と財力の前では、皆平伏し、媚び諂い、色めき立つ。

 平常心で俺と会話すること自体、普通にできることじゃない。

 だから、お前に親近感を抱いて、友人になりたいと思った」


「確かに…でも、美しい男性だとは思ってましたよ。

 腐っても王族ですから。

 普通に対応したのは、よく知らない相手を先入観で決めつけるのは、

 失礼だと思ったからです」

 

「腐っても…王族?……ま、まあ、いい。

 お前のそういう物言いも慣れた」


「ありがとうございます」


「だから、褒めてねぇって!」



笑いながら、

再びペチンッと軽く後頭部をはたかれる。



「ロイヤルパンチ反対!」


「ふはっ、なんだそれは。…まあ、何だ。

 俺は、お前に干渉しない。お前を変える気もない。ただ側にいるだけだ。

 それに、変に警戒しなくていい。お前に対して下劣な色欲はない。

 性行為はもう一生分したからな」


「万が一、私がやっぱり邪魔だと感じたり、どちらかに恋人が出来たり、

 あり得ないですが、どちらか一方が相手を好きになったら、

 どうするんですか?」


「邪魔なら同居は解消で、俺が出て行く。

 相手が出来たなら、お互い仲良くなれれば同居続行すればいい。

 無理なら俺の方が出て行く。

 お前が俺に惚れたなら、大歓迎で受け入れるから問題ないぞ?」


「なんすか、その雑な思考…」


「オメーはブレねぇな、俺の好意ガン無視かよ。

 まあ、どうとでもなるって。

 俺は、お前と普通に会話して、普通に同居人として暮らせればいい。

 ここまで言って、他に断る理由あるか?ん?」


「………うーん…」


「何度も言うが、俺は存外に役に立つぞ?

 ほら、腐っても王族の教育を受けた男だ。

 英才教育の賜物の豊富な知識!

 他国の4カ国言語が堪能!

 剣術の心得もあり護衛に最適!

 きゃー素敵な優良物件!どうだ?」


「…………………はあ…分かりました。

 でも、決定ではないですよ?お試しですからね?お試し!」


「よし、言質とった!で、引越しはいつだ?」



こうして粘り負けして、再びこの男と変な縁が出来てしまった。

献花に来なければ良かったと後悔すると同時に、

生きていて良かったという、矛盾した感情が交錯していた。


よし、邪魔だったら、即追い出してやる。

と決意して、

すぐに他人を信用できない、自分に苦笑するのだった。


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