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後宮の侍女  作者: 米野雪子


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国王陛下と初対面


「おい、お前名は?」



少し長めの黒髪、そして碧眼。

この王族の外見的特徴。

見目麗しい男が、私の前に立ちはだかっていた。



「これは、ご機嫌麗しゅう。

 我が国の太陽、ラディウス国王陛下にご挨拶申しあげます」


「そんな固苦しい挨拶はいい。名は?」


「恐れながら、私はただの後宮の侍女兼メイドにございます。

 身分も不相応で、陛下に名のる程の者ではございません」


「私が聞いているのだ。名のれ。どの妃付きの侍女だ?家名は?」


「…………………」



うっざ。



この後宮に、何人の妃候補が居ると思っているんだ。

侍女やメイドにも、お手つきがあると噂には聞いていたが、

まさか、茶髪で茶色の目の地味な色合いの私にまで

声を掛けてくるとは思わなかった。

あーやだ。変な事に巻き込まれたくない。



「名のれません」


「王命が聞けぬと?」


「エステル!どこにいるの?早く来て頂戴!」


「はい、ただいまっ」


「エステル? ふん、リディア嬢付きの侍女か」


「いいえ、特定の方の侍女では、ございません。

 では、お呼びなので失礼いたします」


「では、見習いか?」


「失礼します」



くるりと踵を返し、小走りにリディア様の部屋を目指す。

それ以上は、追求してこなかったが、視線がずっとブスブス刺さって来る。


陛下の寵を得ようと、毎日後宮の妃候補達は、自分を着飾るのに忙しい。

正妃や側妃に選ばれようなものなら、さらに子をなせば、

縁者になり、一生安泰で一族も強力な後ろ盾ができる。


貴族の令嬢達は、この争奪戦に必死だった。


その後宮で、私、子爵家のエステル・ガーディアは

侍女とメイドを務めている。



「リディア様、お呼びですか?」


「髪が決まらないのよ。私のお付きの侍女がヘタで…

 エステル上手でしょ?お願いできる?」


「はい、ただ今。どの様な感じが、ご希望ですか?」


「ハーフアップでお願い。サイドは編み込みがいいわ」


「承知いたしました」



こんな感じで、器用貧乏な私は、

あちこちの妃候補の令嬢から、声がかかり大忙しなのだ。


ヘアスタイルも無事満足されたようで、

洗濯室でシーツをたたんでいると、また国王陛下がひょっこり現れた。



「なあ、この後宮にいるということは、

 あわよくば、私の目に留まればと下心があるのだろう?」


「残念ですが、私は資格会得の行儀見習いでございます。

 殿方に見初められる為では、ございません。

 たまたま、今の期間空いているのが後宮だっただけです」


「国王命令でもか?」


「ええ、資格会得者の規約で守られています。

 それより、御令嬢達がお待ちですよ?こんな所で油売ってる暇があったら、

 さっさと寵姫達の元へ行って、子作りに励んでくださいませ」


「お前なぁっ、簡単に言うんじゃねぇよ。

 だいたいなんで、そんな態度なのだ?

 国王に声をかけられるなど、女なら泣いて喜ぶ光栄な事だぞ?」


「女性全体で判断しないでください。偏見です。

 声がけなど…ただ下半身に見境が無いだけではないですか。

 男性にとっては、後宮は天国なのでは?

 選り取りみどりの美しいご令嬢達。ご褒美以外に何があるのですか?」


「お前…本当に侍女か?口悪すぎだろ。

 まあ、いい…

 体力が持たんのだ。俺は元々性欲はそんなに強くない。

 天国だのと…それこそ、酷い偏見だ。

 だが、気になる娘がいれば、声をかけるのは当然だろ」


「そんなの知りません。私がここにいるのは、

 国王陛下の為ではありませんので」


「お前だけだぞ、靡かん女はっ」


「ありがとうございます」


「誉めてないが?」


「それでは、失礼します。まだ仕事がありますので。

 子作り頑張ってくださいませ!」


「おいっ」



私が靡かないのが気に入らないのか、

この日から、毎日のように絡んでくるようになった。


暇なのか、国王陛下。


私は司書になるために、ここにいる。

司書の資格取得の条件の一つに、王宮の使用人として労働経験が含まれており、

たまたま、後宮勤めの侍女になっただけだ。


私の家の爵位は子爵だ。

子爵はギリギリ採用枠なので、取得しなければいけない条件が沢山ある。

国王陛下なんかに構っている暇はない。



まあ、気の毒と言えば気の毒だ。

国王陛下は、まだお若い。

前国王陛下と妃殿下と王太子の婚約者が、相乗りしていた馬車の事故で崩御、

予定より早く王太子から、国王に即位させられたのだ。


婚約者が不在になった彼に、また何かあってからでは遅いと、

側近や臣下達から、血を絶やさぬよう跡継ぎを急かされ、

とりあえず国中から、妃希望者をかき集めて、

家柄に問題のない令嬢達が、この後宮に詰め込まれたという訳だ。


国王陛下は、まだ18歳。

国を担うのには、若すぎるし大変なのだろう。


高貴な方って、こういうのがあるから全然羨ましくない。

豪華絢爛な王宮なんて見掛けだけ。

しがらみだからけで、自分の思うようになど生きられない。

常に国の為に、様々な都合を強いられる。



ちなみに私は17歳。義弟は14歳。

18歳になったら司書として働き始めて、家を出て自立予定。

この国では18歳が成人とされ、自立と結婚と出産が許されている。


子爵家は義弟が跡を継ぐし、私は好きに生きていいと言われている。

お父様の本音では、どこかに嫁いで欲しそうではあったけど。

無理強いできないのは、私とお父様の血は繋がっていないから遠慮があるのだ。


前子爵夫人が弟を出産後、体調を崩して亡くなった。

後妻として、私の母が迎え入れられ、私はその連れ子である。

離縁済みの本当の父親は、母が話してくれないから誰かも知らない。

生きているのか、死んでいるのかも不明。

知らなくていいと言われ、詳しい事は聞けなかった。

多分、ロクデナシだったのだろう。


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