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風読みの魔女は静かに過ごしたい  作者: おおりく
2章 二つの秘密作業

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5 初めての中間試験

地獄。

アリア・ローゼンの学園生活は、その一言に尽きた。


あれから、二週間が経過した。

アリアの日常は、三つの異なる「地獄」によって構成されていた。


第一の地獄は「A組の教室」。 ここは、リゼット・オルレアンのあからさまな侮蔑と、カイン・ベルフォードの(悪意なき)好奇の視線、そしてクラスメイトたちの「魔力Gの問題児」という遠巻きの嘲笑に晒される、公開処刑場だ。 アリアは、メアリ・スミスの隣の席だけを唯一の心の支えとして、息を殺して授業を受けていた。


第二の地獄は「必修実技訓練」。 ギデオン・ブレイブ教官は、あの日以来、アリアを完全に「存在しないもの」として扱った。 「ローゼン! 貴様は隅で見ておけ! 砂埃を立てられると、他の生徒の迷惑だ!」 それが、アリアの定位置になった。 他の生徒がペアを組んで魔法の連携を学ぶ中、アリアは一人、訓練場の隅で石ころのように座っている。それは、ある意味「平穏」だったが、同時にA組の中で自分だけが「落ちこぼれ」であると、全校に示し続けるような、陰湿な屈辱だった。


そして、第三の地獄。

これが、アリアにとって最も神経をすり減らす場所だった。

週に三回、放課後に訪れる、古文書修復室。

——リアム・アークライトとの、二人きりの沈黙の作業。


あの日、アリアが神業的な風の魔術(『家庭菜園』の応用)を見せて以来、リアムはアリアに対して、一切の言葉を発しなくなった。 彼は、アリアを「クラスメイト」として見ていない。 まるで、正体不明の「危険生物」か、あるいは「敵国のスパイ」でも観察するかのように、冷徹な、分析するような視線を向けてくるだけだった。


(怖い、怖い、怖い……) アリアは、彼の隣で、心臓が凍りつくような緊張感の中、ただひたすらに古文書の埃を払う作業を続けた。 彼女が完璧な制御を見せれば見せるほど、リアムのまとう空気が、より一層冷たく、より一層「疑わしい」ものになっていくのを感じた。


アリアの唯一の安息のサンクチュアリは、週に一度の「古代ルーン文字学」ゼミだけだった。 変人のゼフィルス教官と、「同志アリア君!」と呼び合いながら、『風使いの楽しい家庭菜園』の「花粉を『ぽすん』と置く」技術について熱く語り合う時間。 そして、あの不思議な石版の文字を、ただぼんやりと眺める時間。 その時だけが、アリアが「アリア・ローゼン」として息をすることを許される、貴重な瞬間だった。


だが、リアムは、アリアがそのゼミの教科書(表紙にあの『芽吹き』のルーンが描かれた本)を大事そうに抱えている姿を見るたびに、その警戒レベルをさらに引き上げていることなど、アリアは知る由もなかった。


そんな、針のむしろのような日々が続いていた、ある日のこと。 必修実技訓練の開始時、ギデオン教官が、訓練場に集まったA組の生徒たちを前に、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。


「ヒヨどもに、朗報だ」 その笑みを見た瞬間、A組の生徒たちの背筋が凍った。教官の言う「朗報」は、生徒にとっての「死刑宣告」と同義だ。


「貴様らの、初めての『中間試験』を実施する。——今から、ここでだ」

「「「えええええ!?」」」

教室中から、悲鳴が上がった。

「い、今からですか!?」

「聞いてませんよ、教官!」


「フン。実戦で『聞いてません』が通用するか、馬鹿者どもが」 ギデオンは、分厚い指示書を叩きつけた。 「試験内容は、単純明快。『ウィスパリング・フォレスト(学園裏の演習林)』に放たれた、戦闘訓練用ゴーレムの『無力化』だ」 「ゴーレム!?」 「ペアで行動してもらう。制限時間は30分。ゴーレムを無力化し、その魔力核を持ち帰ったペアから合格だ。いいか、あれは『タイプC:自律戦闘型』だ。本気で殺しにかかってくるぞ。死ぬなよ」


(ゴ、ゴーレム……)

アリアは、訓練場の隅で、血の気が引いていくのを感じた。

(私、どうなるんだろう……? また、『隅で見ておけ』かな……? それなら、いいんだけど……)


「ペアの発表は、時間の無駄だ!」

ギデオン教官が、叫んだ。

「前回の実技訓練と、全く同じペアで組め! 以上だ!」


「………………は?」


アリアの思考が、完全に停止した。

前回の、ペア?

前回。砂嵐。

(……うそ)


A組の生徒たちが、一斉にアリアを見た。

同情、憐れみ、そして嘲笑。

リゼットが「信じられない……リアム様が、またあの『G』評価と……?」と、わなわなと震えている。


アリアは、恐る恐る、視線を上げた。 数メートル先。 リアム・アークライトが、静かに立っていた。 彼は、その完璧な顔を、わずかに苦痛に歪め、天を仰いでいた。 (……だろうな) という声が、聞こえてきそうだった。


やがて、彼はゆっくりとアリアの方に向き直った。 その空色の瞳には、もはや「疑念」はなかった。 そこにあるのは、明確な「敵意」と「侮蔑」だった。 (……やはり、仕組まれている) リアムは、そう確信していた。 魔力Gの生徒が、二度も連続で、学年トップの自分とペアを組まされる。こんな偶然があるはずがない。 これは、あの変人教官ゼフィルスか、あるいはその背後にいる何者かが、自分と、この正体不明の女を、意図的に接触させようとしている「陰謀」なのだ、と。


「……アークライト、さん……」

アリアは、震える声で、彼に話しかけた。

「あ、あの……わ、私、なにもしないから……! 隅っこで、石みたいに、なってるから……! だから、その……」


「——黙れ」


氷のように冷たい声が、アリアの言葉をさえぎった。


「ひ……」 「ローゼン」 リアムは、アリアの目と鼻の先まで近づき、他の生徒には聞こえないよう、低い声で言い放った。 「芝居は、もういい。反吐が出る」 「……え?」 「君が何を企んでいるのかは知らん。だが、これは『試験』だ。君のせいで、私がA組首席の成績を落とすことだけは、許さん」 「……!」


「いいか。演習林に入ったら、私から10メートル以上離れるな。私の指示があるまで、動くな。話すな。息もするな。そして、ゴーレムが来たら」 リアムは、アリアの目を射殺さんばかりに睨みつけた。 「——絶対に、あの『家庭菜園・・・・・』の魔術は使うな。君がもし、あの図書館で見せたような『異常な力』を少しでも使えば、私はそれを『敵対行為』とみなし、君をここで拘束する」


アリアは、息ができなかった。

拘束する。

彼は、本気だった。

彼は、アリアを「仲間」どころか、「危険な敵」として認識していた。


「……わかったか」

「……は、はい……」

「返事は『イエス』だ」

「……イ、イエス……」


アリアは、涙がこぼれ落ちそうになるのを、必死でこらえた。

もう、何もかもが最悪だった。


「全ペア、準備はいいな!」 ギデオン教官の怒声が響く。 「ゲートを開く! 健闘を祈る!」 訓練場の中央に、空間が歪み、演習林へと続く転移ゲートが開いた。 「1番、カイン、リゼット! 行け!」 「おうよ!」「見てなさい、リアム様!」 ペアが、次々とゲートに飛び込んでいく。


「ラスト! アークライト、ローゼン! 行け!」 「……行くぞ」 リアムは、アリアにいちべつもくれず、ゲートに向かって歩き出した。 アリアは、処刑台に向かう罪人のように、重い足取りで、その背中に続いた。


視界が、一瞬、白く染まった。 次の瞬間、アリアは、薄暗い森の中に立っていた。 ひんやりとした、湿った空気。高い木々が空を覆い、昼間だというのに薄暗い。 (ここが、ウィスパリング・フォレスト……)


「……」 リアムは、無言で周囲を警戒している。 その肩には、白いフクロウ、シルフィが止まっていた。 アリアの鞄の中では、クロノが「フン。埃っぽい森だ。昼寝にもならん」と不機嫌そうに呟いた。


「シルフィ。上空から、索敵を」 「ホゥ(承知)」 シルフィが、音もなく飛び立ち、木々の間を縫うようにして消えていった。 アリアとリアム。二人の間に、重苦しい沈黙が落ちる。


アリアは、リアムの「10メートル離れるな」という命令を忠実に守り、しかし「近づきすぎるな」という無言の圧力を感じ取り、彼の背後、ちょうど10メートルほどの距離を、木の影から木の影へと隠れるように、必死でついていった。


(怖い……。この人も、怖いけど、ゴーレムも怖い……)

アリアは、ただただ、この試験が早く終わることを祈っていた。


五分ほど、森の奥へと進んだだろうか。

不意に、リアムの肩に戻ってきたシルフィが、低い声で鳴いた。

「ホゥ!(前方100メートル。魔力反応。対象です)」

「……来たか」

リアムの空気が変わった。

A組の生徒から、「魔術師」の顔つきになる。


「ローゼン。命令通り、動くな」 「イ、イエス……」 アリアは、近くの巨大な樫の木の裏に、息を殺して隠れた。


リアムが、ゆっくりと開けた場所に進み出る。 ——いた。 木々の間から、それが姿を現した。 岩と、古い木材で組み上げられた、全高3メートルはあろうかという巨体。 ギデオン教官が言っていた、「タイプC:自律戦闘型ゴーレム」だ。 その胸の中心部で、不気味な赤色の魔力核が、心臓のように脈動している。


「グルオオオ……」 ゴーレムが、侵入者を認識し、低い唸り声を上げた。


(ひっ……) アリアは、木の陰で口を両手で塞いだ。 (あんなのと、戦うの……?)


リアムは、冷静だった。 彼は、この日のために完璧なシミュレーションを積んできただろう。 「……相手は標準的なゴーレムだ。動きは鈍い」 リアムが、右手を前に突き出す。 「——《紅蓮のクリムゾンスピア》!」


詠唱とほぼ同時に、リアムの手のひらから、圧縮された炎の槍が放たれる。 槍は、正確にゴーレムの胸部——魔力核を狙っていた。 速い!


だが、 ——ガギィン! ゴーレムは、その巨体に見合わぬ速さで、左腕を振り上げ、炎の槍を弾き返した。 「なっ!?」 リアムの完璧な表情が、初めて驚きに崩れた。


「グルオオオ!」 ゴーレムが、地面を蹴って突進してくる。 速い! あの時の実技訓練のゴーレムとは、比べ物にならない! 「くっ……《火壁ファイアウォール》!」 リアムの眼前に、炎の壁が出現する。 だが、ゴーレムは速度を緩めない。


——ドゴオオオン! ゴーレムは、炎の壁に、その岩の拳でできた腕を叩きつけた。 炎の壁が、まるでガラスのように粉々に砕け散った。


「馬鹿な!? タイプCの出力じゃない……!?」 リアムは、咄嗟に後方へ飛び退き、距離を取る。 「——《二重結界ダブルバリア》!」


リアムの前に、二枚の半透明な魔力の壁が展開される。

直後、ゴーレムの二撃目が、結界を襲った。


——バキィィィン! 一枚目の結界が、蜘蛛の巣のように砕け散る。 ——ドガアアァァン! 二枚目の結界が、轟音と共に破壊された。


「ぐっ……!」 リアムは、結界が破られた衝撃で、数メートル後方へ吹き飛ばされた。 (強い……! なんだ、こいつは!?) アリアは、木の陰で、心臓が止まりそうになるのを感じていた。 (リアムさんが、押されてる……!?)


リアムは、体勢を立て直すと、即座に次の手を打った。 「(こいつ、物理攻撃だけじゃなく、魔力抵抗も高い……! なら!)——《炎よ、足枷となれ(ファイア・バインド)》!」 リアムの魔術が、槍から「拘束」へと変わる。 ゴーレムの足元から、炎が蛇のように現れ、その両足に絡みついた。


「グルル……」 ゴーレムの動きが、一瞬、鈍った。 (今だ!) リアムは、最大の魔術を行使すべく、魔力を高めた。 「貫け! 《紅蓮螺旋ぐれんらせん——」


——だが、ゴーレムの方が、一瞬早かった。

「グオオオオ!」

ゴーレムは、足に絡みついた炎を、力ずくで引きちぎった。

それだけではない。

ゴーレムは、その巨大な両腕を、地面に叩きつけた。


「——《地殻振動アース・ショック》!」 (なっ!? ゴーレムが、土の固有魔術を!?) リアムの驚きも束の間、強烈な地震が、演習林を襲った。


「きゃあああっ!?」

アリアは、立っていることもできず、その場に尻餅しりもちをついた。

リアムも、詠唱を中断させられ、体勢を大きく崩した。


(——まずい!) リアムが、体勢を立て直そうと、顔を上げた、その瞬間。 地震で舞い上がった土煙つちけむりの中から、ゴーレムの巨大な影が、リアムの頭上に迫っていた。 (……跳んだ!?)


ゴーレムは、リアムの真上から、その岩の巨体を叩きつけるべく、落下してきていた。

(間に合わない……! 結界が……!)


リアムは、迫りくる死の影を、空色の瞳で見開いていた。


——時間が、止まった。 アリアの目には、スローモーションのように、その光景が見えていた。 リアムが、死ぬ。 あの、ごうまんで、冷たくて、アリアを「敵」と呼んだ、完璧な貴公子が。 今、目の前で、岩の塊に潰されようとしていた。


(——いやだ)


アリアの頭の中で、何かが、プツリと切れた。 リアムの「息もするな」という命令も。 クロノの「隠蔽しろ」という脅迫も。 「目立ちたくない」という、自分の臆病な心も。 その全てが、吹き飛んだ。


(——死なせ、ない!)


アリアは、木の陰に隠れたまま、右手の指先を、ゴーレムに向けた。

リアムにも、ギデオン教官(が、もし見ていたとしても)にも、絶対に気づかれない角度で。


(イメージは、『風使いの楽しい家庭菜園』、第2章) (「葉を揺らさず、アブラムシだけを吹き飛ばす」) (違う) (もっと強く。もっと、細く。もっと、速く!) (イメージは、お父さんの薬草を切り刻む、あのナイフよりも、鋭く!)


アリアは、魔力を引き出した。 「G」評価の、あの微弱な魔力ではない。 かと言って、全魔力でもない。 必要な、最小限の魔力。 それを、極限まで「圧縮」し、「制御」する。


アリアの指先に、魔力が集まる。 (詠唱は、しない) (術式は、ただ一つ) (——《風刃ウインドカッター》)


だが、それは、リゼットが放つような、派手な風の「刃」ではなかった。 アリアが放ったのは、魔力そのものを「針」に変えた、不可視の、音速の「一撃」だった。


狙うは、ただ一点。 空中にあるゴーレムの、胸部で赤く輝く、 ——魔力核!


アリアの指先が、微かに動いた。 「——っ」


——シュゥゥゥゥ……。


それは、音と呼ぶのもおこがましいほどの、微かな風切り音だった。 アリアの指先から放たれた「風の針」は、木の陰から、リアムの頭上を飛び越え、落下してくるゴーレムの胸部——その魔力核の、ど真ん中に、寸分のたがいもなく、突き刺さった。


——ピシッ。


落下していたゴーレムの、胸のコアに、小さな、小さな亀裂が入った。


「グル……オ……?」 ゴーレムの動きが、空中で、止まった。 その体から、力が抜けていく。 胸の赤い光が、急速に、いろあせていく。


そして、重力に従い、ただの「岩の塊」となって、リアムの数メートル手前に、ドッッッッッッシン!という、地響きを立てて墜落した。


「…………」

「…………」


森に、静寂が戻った。 リアムは、目の前に落ちてきたゴーレムの「死骸」を、呆然と見上げていた。 (……助かった?) (なぜ……? ゴーレムが、なぜ、急に……)


アリアは、木の陰で、口を両手で塞ぎ、必死で荒い息を殺していた。 (やっちゃった……。やっちゃった、やっちゃった、やっちゃった……) 心臓が、痛い。 バレたら、どうしよう。 リアムに、「拘束する」って言われた。 (でも、バレてない。見られてない。あれは、不可視の魔法だったから。大丈夫。大丈夫……)


リアムは、ゆっくりと立ち上がった。 彼は、墜落したゴーレムの、胸部に歩み寄った。 そして、その魔力核を見た。 赤い光が消えたコアの中心には、まるで、一本の「針」で突き刺したかのような、小さな、完璧な「穴」が開いていた。


「…………」 リアムは、その「穴」を、無言で、見つめていた。 (なんだ……? この穴は……?) (地震で? 墜落の衝撃で? ……違う) (これは、外部から、何か、極細の、強大な「貫通力」を持つもので、ピンポイントに破壊された痕だ)


リアムの背筋が、ゾッ、とあわだつのを感じた。 (……まさか)


リアムが、ゆっくりと、ゆっくりと、振り返る。 その視線が、アリアが隠れている、樫の木を、正確に捉えた。


アリアは、木の陰で、ビクッと体を震わせた。

(バレた……!?)


リアムが、アリアに向かって、一歩、一歩、近づいてくる。 その顔は、青ざめていた。 それは、恐怖か、あるいは、信じられないものを見たことによる混乱か。


彼が、アリアの隠れる木の前に、立った。 「……ローゼン」 低い、かすれた声だった。


「ひゃ、ひゃいっ!」 アリアは、木の陰から、泣きそうな顔で飛び出した。 「あ、あの! い、今のは……! ゴーレムが、勝手に……! 地震で、壊れて……!」


「……君が、やったのか」 リアムは、アリアの言い訳を、遮った。 「い、いえ! やってません! 私は、何も……! ほら、命令通り、石みたいに……!」


リアムは、アリアの目を、じっと見つめた。 その空色の瞳には、もはや「敵意」はなかった。 そこにあったのは、アリアが今まで見たこともない、深い「困惑」と、そして、かすかな「恐怖」の色だった。


(……分からない) (この女が、分からない) (魔力G。神業の精密制御。危険なルーン。そして今、この、遠距離からの、不可視の、完璧な『魔力核狙撃』) (……これが、本当に、1年生のやることか?) (これが、「魔力G」の?)


「……君は」 リアムは、絞り出すように、言った。 「……一体、何者なんだ」


アリアは、その問いに、何も答えられなかった。 ただ、涙をいっぱいに溜めたヘーゼルの瞳で、彼を見返すことしかできなかった。 「私……わたしは……」


その時、ゴーレムの胸部から、魔力核が、コロン、と地面に転がり落ちた。 試験終了の合図だった。


リアムは、ハッと我に返ると、アリアから視線を外し、そのコアを拾い上げた。 「……試験は、終わりだ」 彼は、それだけを言うと、アリアに背を向け、ゲートのあった方向へ、足早に歩き出した。 その背中は、A組首席の自信に満ちたものではなく、何か、理解を超えたものに遭遇し、酷く混乱しているように、アリアには見えた。

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