番外編1 『風使いの楽しい家庭菜園』
『風使いの楽しい家庭菜園』
~魔法は食卓のために~
著者: ミランダ・ポポロ
はじめに ~土と魔法は、友達です~
みなさん、こんにちは。著者のミランダ・ポポロです。
「魔法」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか?
ゴーレムをなぎ倒す《爆炎》? 嵐を呼ぶ《テンペスト》?
たしかにそれも、すごい魔法です。
でも、私は思うのです。
「ああ、今夜のシチューに入れるカボチャが、あと少し甘かったらなあ」
「この可愛いレタスを、虫さんに食べられちゃうのは嫌だなあ」
そんな、ささやかな願いを叶えるのも、立派な魔法の役目だって。
この本は、大魔法使いになるための本ではありません。
昨日よりちょっと美味しいトマトを作るための、ささやかな「魔法のコツ」を詰め込んだ本です。
難しく考えないでください。
魔力は、あなたの畑を助けてくれる「優しいお手伝いさん」です。
さあ、一緒に土と、風と、魔法とお友達になりましょう!
第1章: ふかふかのベッドを作りましょう
お野菜さんたちにとって、土は大切なお家であり、ベッドです。
固いベッドでは、私たちもぐっすり眠れませんよね? お野菜さんたちも同じです。
土魔法《整地》を使って、ふかふかのベッドを用意してあげましょう。
【ミランダおばさんのコツ その①】
《整地》を使う時、「平らにする」ことだけを考えてはいけません。
大切なのは「空気」です。
土の粒と粒の間に、優しい空気がふんわりと入り込むように、魔力を「細かく」「振動させる」イメージで使ってみましょう。
魔力を込めすぎると、土がカチカチ山になってしまいます。あくまで「優しく」ですよ。
【ミランダおばさんのコツ その②】
種を植える時、水魔法《小癒》をそっとかけてあげるのもお勧めです。
「怪我を治す」のではなく、「元気になあれ」と応援する気持ちで使います。
種の硬い殻が、ほんの少しだけ柔らかくなり、可愛い芽が顔を出すのを手伝ってくれます。
第2章: 虫さんと、優しくお話ししましょう
畑仕事で一番頭を悩ませるのが、小さな虫さんたちですね。
彼らも生きるのに必死ですが、私たちの大切なお野菜が食べられてしまうのは、やっぱり悲しいものです。
でも、強い薬を使うのはお野菜にも良くありません。
そこで、風魔法《そよ風》の出番です!
【!絶対にダメ!】
虫さんを退治しようと、《風刃》を使うのは、絶対にいけません!
あなたの大切なお野菜さんが、ズタズタになって泣いてしまいますよ。
私たちが使いたいのは、あくまで優しい《そよ風》です。
【ミランダおばさんのコツ その③: 葉っぱさんは揺らさないで】
これが一番のポイントです。
魔力を込めすぎず、「ふぅー」っと息を吹きかけるくらいの優しい風を起こします。
大切なのは「お野菜の葉っぱは、一切揺らさない」くらいの強さで、「アブラムシさんだけ」を狙うことです。
アブラムシさんはとても軽いので、その子たちだけに「あっちに行ってね」とお願いするように、そっと風を当ててみましょう。
お野菜の葉っぱや、益虫であるテントウムシさんに風が当たってはいけませんよ。彼らは大切なお友達です。
(※達人の見解:……狂気の沙汰だ。葉に当てずに数ミリの虫だけを選別して風を当てる? これは魔力の総量ではなく、神業的な「識別制御」と「精密操作」がなければ不可能だ)
【ミランダおばさんのコツ その④: 蝶さんとアブラムシさん】
蝶や蜂さんは、受粉を手伝ってくれる大切なお客様です。
もしアブラムシさんと蝶さんが一緒にいても、慌ててはいけません。
ゆっくり魔力を集中させて、「軽いアブラムシさん」と「少し重い蝶さん」の違いを「風」で感じ取ります。(蝶さんの薄い羽は、風を通しやすいですね)
そして、アブラムシさんにだけ、そーっと風を当ててあげるのです。
(※アリアの感想:これはちょっと難しいかも。蝶の羽は薄いから、アブラムシと間違えやすいんだよね。もっと集中しないと)
省略
第4章: 蜂さんのお手伝い(上級編)
ここでは、もう少しだけ難しい魔法のコツをご紹介します。
でも、失敗しても大丈夫。お野菜はちゃんと育ってくれますから、気楽に挑戦しましょう!
雨の日が続いたり、蜂さんがあまり来てくれなかったりすると、受粉がうまくいかないことがあります。
そんな時は、私たちが「風」で蜂さんの代わりをしてあげましょう。
【ミランダおばさんのコツ その⑦: 花粉さんは『ぽすん』と置いて】
まず、雄しべをよーく観察します。黄色い、小さな小さな花粉さんが見えますね?
その花粉さん「だけ」を、そっとすくい上げるような、世界で一番優しい風を起こします。綿毛を飛ばすよりも、もっと優しく。
風が強すぎると、花粉さんはどこかへ飛んでいってしまいます。花粉さんを風の「膜」でそっと包み込むイメージです。
風に乗せた花粉さんを、今度は雌しべの先(少しネバネバしている所です)に、「ぽすん」と置いてあげるイメージで運びます。
(※ゼフィルス教官の見解:これだ! この「ぽすん」という感覚! なんて奥深い表現だ! これは魔力を分子レベルで制御し、対象の質量と慣性を完璧に把握した上での「設置」だ! これこそ古代魔術の真髄!)
省略
第7章: 元気がない時の「おまじない」
なんだかお野菜の元気がないな、と感じた時のおまじないです。
これは、あなた自身の元気が有り余っている時にだけ、試してみてくださいね。
【ミランダおばさんのコツ その⑫: お日様の魔力】
お野菜の根元に優しく手をかざします。
「元気になあれ」と強く願いながら、あなたの魔力をほんの少しだけ、分けてあげましょう。
この時、火魔法や水魔法をイメージしてはいけません。
イメージするのは、空の上で輝く「お日様の光」です。
お日様の光が、黄金色の優しい力になって、あなたの手から土に染み込んでいくような、温かいイメージです。
魔力を入れすぎると、根っこがビックリして「根腐れ」してしまうので、本当に「ほんの少し」ですよ。お野菜さんが「あ、温かいな」と感じるくらいがベストです。
(※学園長ヴォルグの見解:……馬鹿な。これは……希少属性「光」による《活性化》の基礎理論そのものではないか。生命力そのものへの直接干渉だ。こんなものを「おまじない」として一般書に? このミランダ・ポポロとは、一体何者なのだ……?)
おわりに
どうでしたか? うまくいっても、いかなくても、あなたがお野菜を思って魔法を使った時間は、とても素敵なものです。
魔法は、戦いや研究のためだけにあるのではありません。
明日の朝ごはんのパンを《加熱》でふっくらさせるため。
大切な人のために編んだセーターの毛玉を《風刃》でそっと取るため。
(※危ないので上級者向けです!)
そして、美味しいトマトを作るために、魔法はあるのです。
この本が、皆さんの食卓を豊かにする、小さなお手伝いになれば幸いです。
美味しいご飯は、世界を平和にしますから。
ミランダ・ポポロ




