5夜
ヴィラーシュ様たちが訪問されてから、1週間が経った。
ヴィラーシュ様たちは、『魔獣の領域』の浅瀬に行ったり、騎士団の訓練に参加したり、辺境伯領を視察したり、精力的に動いていた。
そんな中、4日ほど前のこと。
今、辺境伯家が頭を悩ませる原因がやって来た。
その人とは、キャロライン妃。
ヴィラーシュ様の第1妃なのだとか。
キャロライン妃が来てからと言うもの、文句と問題が出るわ出るわ。
よくもまぁ、こんなにも問題を起こせるものだと、ある意味で感心した。
けれど、直接関わっている人たちは、もうすごい事になっている。
表情は笑顔なのに、圧がものすごい。
思わず、ひっ、と言いたくなるほどである。
侍女たちからも、評判が頗る悪い。
気に入らない事に文句を言う、物を壊す、人の物を欲しがる、皇帝陛下に媚を売る…などなど。
私も1度だけ、絡まれたことがあった。
曰く、私の見た目が気持ち悪いとの事。
私は、言われたところで、特に何も思わないので、気にしていなかった。
けれど、それを見ていた人から、辺境伯様に、辺境伯様からヴィラーシュ様に話がいって、ヴィラーシュ様から直接謝られた。
お詫びに今度、王都の有名なお店のお菓子を贈ってくれることになった。
それは、ちょっと…かなり嬉しかった。
そんな、ちょっと変わった日常を過ごしていた時、それは起こった。
ピィィィ…ピィィィ……ピィィィ
警笛が、3回鳴った。
普通なら、1段階ずつ上げていく警笛が、一気に3回。
すぐに、避難しなければいけないほどの異常事態。
邸が、途端に騒がしくなる。
非戦闘員は、すぐさま避難所に向かう。
戦闘員は、防壁へ走り出した。
私も、非戦闘員の侍女たちと一緒に、避難所に行った。
避難所では、皆、気丈に振る舞っているが、不安な様子を隠せていない。
私は、気づかれないように魔法を発動させ、防壁の外を見た。
外にいたのは、地竜だった。
しかも3体。
ヴィラーシュ様や皇帝陛下も、参戦するようだ。
2人の剣の実力は、かなりのもの。
負傷した騎士を、庇いながら戦っている。
現場の周囲を見渡していると、何故か、キャロライン妃がいた。
そこでも何か、騒いでいるようだ。
このままでは、全滅は免れないなろう。
それにしても、あの地竜の様子は、尋常ではない。
少し考えた後、私は気づかれないように、魔法で防壁の外へ転移した。




