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夜を待つ  作者: 氷桜 零
聖国編
36/37

29夜


私とリアムは聖国に別れを告げ、二人で旅をすることになった。

私一人ならどうにでもなったことが、リアムと過ごす上で、人間の難しさを実感した。


一日に何回かの食事、適度な水分補給と休憩。

そして歩く場所や寝床。


数年人間に紛れただけではわからなかったことが、浮き彫りになった。

リアムは何を言わずに無理をするから、リアムが倒れるまで考え付かなかったことを反省した。


特にリアムはまだ子どもだ。

大人の人間よりももっと、慎重さが求められた。


初めは色々戸惑うこともあったが、リアムとの旅は一人旅よりも充実していた。

一緒に楽しむと言うことを、知ることができた。

とても貴重な経験だったと思う。


旅の中で、リアムに教えられることは教えていった。

飲み込みが早いのでどんどん吸収し、実力を伸ばしていった。

3年も経てば、今では私が手を出さずとも、何でもできてしまう。


リアムに、行きたいところやしたいことをすれば良いといったが、頑なに私と離れるのを嫌がった。

私は無理に引き剥がすつもりはないので、それが望みなら、好きにすれば良いと思う。


いくつもの小国を巡っているうちに、私が関わった三つの国の噂を、よく聞くようになった。


王国は、私の言葉を全面的に受け止めて、それを国中に公表した。

年に一回、闇の精霊の感謝祭を三日間開き、信仰心を高めた。

王族は、毎日一回は神殿に赴き、闇の精霊に対する贖罪を続けた。


帝国は、精霊の事件を明るみにし、二度と同じことがないように法律を制定した。

また、闇の精霊に関する情報も徐々に解禁し、月に一回の贖罪の日を定めた。


聖国は、アルトゥール枢機卿が教皇となり、神殿と聖国の腐敗を掃除している。

また教皇の名で、闇の精霊の感謝と贖罪を発表し、差別の解消に舵を切っている。


私はそれらの噂が届くたび、心が暖かくなるのを感じた。

そしてそれと同時に、人々の心の声、感謝と謝罪の言葉が届くようになった。

それは今も少しずつ増えていっている。

加護を与えた彼らの尽力のおかげだろう。



それからさらに5年。

今も絶え間なく、人々の声が聞こえる。

人々の信仰心が上がるに連れ、私の力も溢れ出してきた。


この世界に降り立って、約15年。

この世界は、少しずつ変わってきていた。

あの頃の差別を思えば、まだ許せる段階にはきていない。

だが、少しの希望を、期待を持つことができた。


だから私は、今後の期待と少しの褒美を与えることにしたのだった。




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