26夜
大神殿の一室。
私、リアム、アルトゥール枢機卿、神殿騎士第3部バルトルト隊長が、向かい合って座っていた。
私が攫わられた経緯、その後の対処について、一通り話をした。
「邪霊とは何だ?」
「瘴気に塗れた精霊の対となる存在かな。瘴気を振り撒くから、見つけ次第対処しないと大変な事になる。」
「大変な事とは?」
「最悪の場合、世界の滅び。」
淡々とした私の答えに、全員が息を飲む。
「まさか、精霊を祀る神殿の人間が、世界を滅す邪霊を召喚するなんて…ね!」
「な、何故、それを。」
「耳が良いものですから。」
「……精霊だよね。ずっと近くにいた。でも、初めて見た色。黒い?」
リアムの言葉に、今度は私が驚かされる。
でも、だからこそ、納得がいった。
リアムが、どうして私から離れたがらなかったか、理解できた。
「良い目をしているね。大事にしてね。」
「うん。」
リアムが、はにかんで答える。
他の2人は、目を白黒させて、混乱している。
2人が公平で、常識的な人である事は、この事件の調査の様子を見ていて、よくわかった。
王国や帝国には、加護を与えた2人がいるけど、聖国はまだ繋がりがない。
ここで、つながりを作っておくのも良いかもしれない。
「精霊に頼んで、色々と話を聞いて来て貰ったんですよ。」
「精霊は、何故あなたの頼みを聞くのですか?」
「精霊にとって、私は主人であり、母でもあるからです。」
「主人…母…」
「まさか…精霊王…いや、そんな…。」
「その通りです。あなた方も、見たではありませんか。私の本来の姿を。」
頭が理解するのを、拒否しているのだろう。
精霊王が地上に干渉するなんて、普通は考えられないのだから。
「黒…闇の精霊王……?」
私は肯定するように、笑みを浮かべた。
沈黙が部屋を支配する。
身じろぎすらせず、2人は固まったまま。
「そろそろ、帰って来てくれませんか?」
「はっ…。も、申し訳ありません!」
「此度のことも、誠に…!」
謝罪の嵐になりそうだったので、手を挙げて止めた。
2人とも、顔は似ていないのに、同じ表情をしているところが面白い。
「それよりも、この件はまだ終わってないのでしょう?」
「はい。今回潰れた拠点は、複数ある内の1つかと思われます。関わった神官も、黒幕ではないようでして。」
「拠点の場所は判明しているのですか?」
「いえ、まだです。」
2人とも苦々しい表情だ。
時間をかけているのに、見つからないのは、悔しいのだろう。
それだけ、何とかしたいと思っている証拠。
「聖国の地図は、お持ちですか?」
「え?あ、はい。こちらに。」
地図を、机の上に広げてもらう。
そして私は、地図上の2ヶ所を指差した。
「ここと、ここ。彼らの拠点です。私の方でも、少し調べました。」
「ありがとうございます!」
「すぐに、調査します!」
「後、あなた方に闇の加護を与えます。あなた方を通して、私は世界を判断する。肝に銘じてくださいね。」
「「御意!闇の精霊王様の加護にかけて!」」
「期待しています。」
2人は早々に動くだろう。
これで、解決すれば良いが。
2人の去っていく姿を見ながら、私はそう思った。




