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夜を待つ  作者: 氷桜 零
帝国編
27/37

間夜5


あれは、遠い遠い昔の話。

ある1人の神官がいました。

彼は、強い光の加護を受けた存在でした。

数多の瘴気を祓い、数多の人を癒していました。

ある時、彼は闇の魔法師が、瘴気を振り撒いていたのを見つけたのです。

彼は、考えました。

闇が、瘴気を生んでいるのだと。

彼は他の神官にも、そのことを話しました。

その話は、人から人へどんどん広がっていきました。

そうしてついに、人々から闇を消そうと言う考えが上がったのです。

そうして月日が流れ、ついにその時は来たのです。

世界から、夜が、闇が取り上げられたのです。

 

初めは皆、喜びました。

けれど、月日が流れ、徐々に異変に気づきはじめた。

夜が来ないことで、安寧な眠りが来ない。

眠っても疲れが取れず、生きるのに大切な魔力がなかなか回復しない。


草木や作物がうまく育たず、それによって動物が弱っていく。

逆に魔獣は凶暴化するばかり。

不安定な精神と肉体の疲労と魔力が回復しにくいことで、魔獣による被害が拡大しました。


それは精霊にも同じことが言えました。

闇の精霊は、精霊同士の緩衝の役割を持っていた。

相性の悪い精霊同士が、ぶつかり合うことになってしまいました。

それだけでなく、精霊に唯一安らぎを与えられる存在であったため、それを失くした精霊は次第に弱り、または暴走しはじめました。

精霊の弱まりや暴走は、天変地異を引き起こしました。


次に、ずっと日が出ていることで次第に水不足に陥りました。

普通なら寒い地域であるはずが、雪は降らず、時おり雨が降って水が溜まったとしても、日照りで乾いてしまいます。


そしてもう一つ。

すべての生き物に、子どもが生まれにくくなってしまったのです。

子どもは生まれないが、死はいつでもすぐそばにあります。

少しずつ、生き物の数が減少していきました。


闇の精霊が司るのは、闇、夜、精神、眠り、調和、生死。

その全てがなくなったことで、世界は緩やかに、しかし確実に滅びへと向かっていました。


こうなって初めて、人は思うのだ。

闇の迫害が、この世界の根源たる精霊王の1柱を怒らせたのだと。


神官は夜が消えた原因として、人々から恨まれ、憎まれるようになりました。

人々から差別を受けて初めて、神官は自らの過ちを悟ったのです。


闇が、瘴気を生み出したのではない。

瘴気を生み出すほど、負の感情を溢れさせるほど、闇の子らを追い詰めたのだと。


神官は、精霊たちに祈りました。

毎日、毎日、朝も昼も夜も。

けれどその願いは、届かなかったのです。


神官は国を離れて、贖罪の旅に出ました。

旅では、闇の子らを迫害したとして、責められた人と出会いました。

彼らもまた、神官と共に、贖罪の旅に出ました。

そうして辿り着いたのが、この地でした。


ここは、贖罪の地。

闇の精霊王と闇の子らに、贖罪する地なのです。




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