19夜
郊外にある霊園。
その、遺体安置所。
遺体を腐敗させないように、室内はかなり低い温度になっている。
墓守には、しばし席を外してもらう。
遺体に被せられた、布を捲る。
その人物は、安らかに目を閉じていた。
額に指先で触れる。
細かな傷口から、魔道具の精霊石と似た気配。
無理矢理作られた精霊石で、攻撃を受けた傷。
傷口から、無理矢理水分を抜き取られている。
次に、遺体から記憶を読み取る。
記憶の中から、フードの人間を探す。
違う、これも違う……見つけた。
「はあー。」
記憶を読み取るのは、やはり疲れる。
「どうだ?」
「口封じですね。無理矢理作られた、精霊石の魔道具。それで、体内の水分が抜かれた。これが彼の死因です。それから、フードの人物の姿が見えました。青い長髪、茶色の目、心当たり、ありますか?」
「…ある。青い長髪と茶色の目の、王城魔道具師。現筆頭のオーランドだ。」
「へぇー。現筆頭…ね。」
思わぬ大物に、知らず知らずのうちに、凍りつくような冷たく低い声が出る。
よく見ると、足元で闇が蠢いている。
微かに漏れた精霊力が、髪を揺らした。
「すぐに帝都に戻って、捕まえる。だから、落ち着け。」
「大丈夫、落ち着いていますよ。まだ…」
そう、落ち着いている。
落ち着いていなければ、とっくにこの国を奈落に落としている。
「明日、帝都に戻る。」
「いえ、その必要はありません。私も行くので、転移で送ります。その方が早い。」
「わかった。一旦宿に戻って、準備して行こう。」
「はぁ…わかりました。」
私も一旦、クールダウンが必要だ。
準備している間に、普段通りに戻るだろう。
誰もが、無言で足を早めた。
ーーーーー
帝都に転移したその足で、王城魔道具師の研究棟へ向かった。
幸い、筆頭魔道具師は、自身の部屋にいるらしい。
ヴァルドが先ぶれを出し、部屋に向かうのを、後ろから着いていく。
扉を叩くとすぐに返事があった。
部屋の中にいたのは、筆頭魔道具師のみ。
だが、部屋の中に、件の精霊石の気配が複数。
「オーランド、嘘偽りなく、答えろ。お前が精霊石を作ったのか?」
直球の質問に、オーランドは目を瞬く。
「さすがは皇帝陛下、お目が高い。精霊石は、従来の魔石より何倍も強い。様々な魔道具に利用でき、きっと魔道具をもっと発展させる事ができます!!」
「それが理由か?オーランド、これ以上好き勝手にさせるわけにはいかない。拘束する。」
「何故ですか!?これがあれば、帝国の技術も名声も上がるのですよ!それに…」
「黙りなさい。その醜い口を閉じなさい。」
ゴミがよく喋る。
耳触りだ。
ドロリと、私に呼応して闇が溢れる。
「愚かな人間風情が、我が子らに手を出すなど、死さえも生ぬるいわ!」
「ぐっ…あああぁぁぁ。」
闇の力で、永遠に覚めない悪夢を見せる。
オーランドは、頭を抱え込みながら床に倒れた。
そのまま、言葉にならないうめき声で、踠き苦しむ。
ヴァルドたちは、手も足も口も動かせず、ただ見ていることしかできなかった。
ーーーーー
その後、ヴァルドは、彼を叛逆罪と言う名目で捕えた。
それに伴い、研究室は封鎖され、研究棟は、国から全面調査が入ることになった。
その調査により、無理矢理作られた精霊石は、余すことなく全て回収され、私に引き渡された。
本来なら、この国に報復をしても良かったのだが、オーランドやその研究室に対する厳しい処分と、精霊石の回収、オーランド本人への報復で、矛先を納めた。
もちろん、2度目はないと警告はしてある。
こうして、事件はひとまずの終息に向かったのである。




