18夜
ヴァルドを信頼して、任せてから数日が経った。
ヴァルドに呼ばれて、部屋を訪ねた。
入って早々に、袋を渡された。
中から、精霊の気配がする。
袋を開けて中を覗くと、精霊石が10個。
間違いない。
この街で見つけた、精霊石の数と同じ。
ホッとした。
ヴァルドは約束通り、領主と話をつけてくれたみたいだ。
「ヴァルド、ありがとうございました。これでこの子たちも、これ以上苦しまずに済みます。」
「いや、元はと言えば、人間がしたことだからな。領主から話を聞いて来たが、聞くか?」
「はい、お願いします。」
違法の魔石の使用という名目で、魔道具の回収と魔石の交換を行った。
魔道具が使用出来なくなったら、この街には大打撃だ。
だから、初めは領主も難を唱えた。
なので強引に、魔石を交換するか捕まるか選べと提示した。
交換出来るならということで、領主も了承し、すぐに交換させた。
魔道具の入手先は、代々繋がりのある魔道具職人から、とのことだ。
領主自身は購入しただけで、魔石のでどころも何も知らなかった。
領主に、魔道具職人に連絡を取らせたが、行方不明になっていた。
昨日、街の門番から通報があった。
街の外で、砂嵐に巻き込まれたと思われる死体を発見した、と。
領主と確認に行ったら、その死体が、件の魔道具職人だと判明した。
何故魔道具職人が、外に出るとは思えないほどの軽装で、街の外に出たのか、わからないらしい。
砂嵐に巻き込まれた外傷と、脱水症状しかなかったから、事故で処理された。
「と、まあ、唯一の手がかりが、残念ながら無くなってしまったというわけだ。」
「魔道具職人の家と遺体を、確認できますか?」
「ああ、必要かと思って手配している。行くか?」
「はい、お願いします。」
早速、ヴァルドと共に、魔道具職人の家に向かった。
魔道具職人の家は、泊まっている宿から程近かった。
魔道具職人は、数年前に妻を亡くし、現在は一人暮らしだったそう。
家中に、雑多に置かれた道具や部品、素材が、彼の生活を物語っている。
家の中を一通り見て回ったが、怪しい物は何もなかった。
「特に何もなさそうだな。」
「どうでしょう?ちょっと、記憶を再現しますね。」
「記憶の再現?」
ヴァルドの疑問には答えず、家の中央に立った。
〈眠りし記憶、今一度、鮮やかに蘇れ〉
精霊語を操り、魔法を発動させる。
とりあえず、3年ほど前から、家の記憶を再現する。
早送りで再生していると、フードを被った人が、度々出入りしているのがわかった。
フードの人間がいる所で、再現を一時停止する。
この人が持っているのは、間違いなく精霊石だ。
「ヴァルド、この人に見覚えはありますか?」
「……」
ヴァルドは、険しい顔でフードの人間を見ている。
「ヴァルド?」
「ん?あ、ああ。顔を見ないとわからないが、確実に言えるのは、王城の魔道具師だな。証であるブレスレットを着けているから、間違いない。」
「…まさかとは思いますが…」
「ない!絶対ない!俺がこんな事を指示するわけがない!!」
私の言葉を察したヴァルドは、途中で遮り、全力で否定した。
「独断と言う事ですか。」
「ああ。」
「ひとまず、ここでわかるのは、これくらいですね。次は、遺体を確認しましょう。」
魔道具職人の家を出て、次の場所に移った。




