16夜
役所に行って聞いてみると、ちょうど見学ができる時間帯だったよう。
案内の役人をつけてくれると言うので、しばしの待機中。
やって来たのは、メガネをかけたご婦人。
名前は、ローズさんと言うらしい。
ローズさんが言うには、街の住人はもちろん、それ以上に、街の外から来た人が見学することが多いのだとか。
砂漠に隣接している街は他にもあるので、この街を参考にしたいのだと。
ローズさんも領主様のことをすごく尊敬してるんだって。
むしろ、尊敬していない人の方が珍しいみたい。
ローズさんと話をしているうちに、水源にたどり着いた。
ここと同じ水源が、他に4ヶ所あって、ここが1番大きいとのこと。
水源のすぐ側には、野菜などを栽培している建物があるとのこと。
水源に近づくごとに、変な感覚が強くなる。
表情を取り繕ったまま、視線だけで、周囲を見渡すが、気になるものは何もない。
「さあ、着いたわ。ここが第1の水源で、1番初めに作られた水源なのよ。」
「…わぁ、すごく綺麗ですね!どうなってるんでしょう?」
「あそこ、水源の中央が見えるかしら?」
「あれは、魔道具ですか?」
「そうよ。あれが、水を浄化してくれているから、皆、綺麗な水が使えるのよ。」
「…へぇ…。」
「領主様が、高名な魔道具職人に頼んだ貴重な物なんだそうよ。私たちのことを考えてくださって、素晴らしい方だわ!」
「…そうですね…」
「あら?どうかした?」
「あ、いえ、水が綺麗で見惚れていました。」
「そうなのよ、そうなのよ!」
ローズさんがテンション高く話をしているが、あまり内容が入ってこない。
だって、直に見て、気づいてしまった。
あの魔道具に使われているのは、魔石ではない。
あれは…あれは、そう…
精霊の命だ。
しかも、自然にできたものでは無い。
だってあんなにも、苦しいって、悲鳴を上げている。
どうやったかまでは、わからない。
けれどあれは、無理矢理精霊を殺してできた精霊石だ。
ああ、あの子たちは、苦しいまま殺されて、死んでもなお苦しめられている。
ーーーーー
あれから、ローズさんの案内で畑にも行った。
まさかとは思ったけど、案の定、畑にある魔道具にも精霊石が使われていた。
ローズさんに案内のお礼を言って、急いで宿に帰って来た。
きっと、他の場所の水源や畑にも、精霊石を使った魔道具があるのだろう。
ただの魔石よりも精霊石の方が、比べ物にならないくらい力が強い。
だから、この街は発展したんだ。
水源の魔道具には、水の精霊。
畑の魔道具には、地の精霊。
風の精霊が言っていたことと、合致する。
精霊たちは、無理矢理、精霊石にされて、利用されている。
でも、ここの領主は主犯でないだろう。
無関係かどうかは、わからないけど。
ローズさんの言葉を信じるなら、魔道具を作った人間か、その人間に精霊石を渡した人間が犯人。
まさか、何年もこんな事が繰り返されていたなんて。
早く犯人を見つけないと。
それから、精霊石も。
精霊石になってもなお、苦しんでいるあの子たちを開放したい。
同じことを別の人間がしないように、資料とかも全部探し出して、消す。
とりあえず、まずは何から取り掛かろうか。
関係者は、1人も逃さない。
ひとまず、帝国のことだからヴァルドに知らせておこう。
私は早速、手紙を書いて、ジスに最速で届けてもらった。




