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夜を待つ  作者: 氷桜 零
王国編
10/37

6夜


近くで地竜を見るとよくわかる。

元々狂っていたのに加え、別の力が働いていて加速させている。

地竜の中に、瘴気が渦巻いているのがわかる。

瘴気が地竜を穢し、さらなる凶暴化をさせている。

狂気と共に、瘴気を取り除かないと。




さあ、可愛い子よ、愛しい子よ。

怒らないで、嘆かないで。

悲しいことは何もない。

恐れることも何もない。

大丈夫、私はここにいるわ。

さあ、可愛い子よ、愛しい子よ。

お家にお帰り。

家族の元へお帰り。

全ての傷を、癒しましょう。

今夜の眠りは、私が守りましょう。

全ての悪意から、守りましょう。

さあ、おやすみなさい、可愛い我が子。



静かな詩が、紡がれる。

空が暗く染まり、太陽が隠れる。

双子の月と、星々が夜の闇を照らす。




落ち着きを取り戻した地竜は、甘えるように私に、頭を擦り付けてくる。


クルクルクル


甘く喉を鳴らす地竜。

可愛い、控えめに言っても可愛い。

しばし、その可愛さを堪能する。


時間を忘れて地竜と戯れていると、背後から数名の気配がした。

地竜たちが、その気配に、唸り声を上げる。


再び撫でて、地竜を落ち着かせる。


〈さあ、お帰り。〉


私が促すと、地竜たちは何度も振り返りながら、『魔獣の領域』に帰って行った。


それを見送って、私はやっと背後を振り返る。


そこにいたのは、予想していた通り。

辺境伯様、リカルド様、ギーク様、ヴィラーシュ様、皇帝陛下、皇帝陛下の側近の方。

錚々たるメンバーだ。


辺境伯様が何事かを言おうとした時、そのさらに背後から、喧しい声が遮った。


「その精霊は、私が呼び出しましたのよ!私の闇魔法と呼びかけに答えましたの!」


延々と、舞台女優のように、身振り手振りで語る五月蝿い声。


「黙りなさい。」


キャロライン妃は、私の言葉に、口をパクパクさせながら、喉を押さえる。

静かになった。


「お前ね、地竜たちに瘴気を流し込んだのは。」


思いの外、低い声が出た。

辺りは、2、3度、温度が下がる。


「お、恐れながら。あなた様は、一体…?それに瘴気とは…キャロライン妃が地竜にぶつけたのは闇魔法だったはず…」


辺境伯様が、恐る恐る声をかけてくる。

その内容が、一部引っかかる。


「闇魔法?今、この地上に、闇魔法を扱える者は、存在しない。」


「え……?」


私のその言葉に、空気が固まった。





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