6夜
近くで地竜を見るとよくわかる。
元々狂っていたのに加え、別の力が働いていて加速させている。
地竜の中に、瘴気が渦巻いているのがわかる。
瘴気が地竜を穢し、さらなる凶暴化をさせている。
狂気と共に、瘴気を取り除かないと。
さあ、可愛い子よ、愛しい子よ。
怒らないで、嘆かないで。
悲しいことは何もない。
恐れることも何もない。
大丈夫、私はここにいるわ。
さあ、可愛い子よ、愛しい子よ。
お家にお帰り。
家族の元へお帰り。
全ての傷を、癒しましょう。
今夜の眠りは、私が守りましょう。
全ての悪意から、守りましょう。
さあ、おやすみなさい、可愛い我が子。
静かな詩が、紡がれる。
空が暗く染まり、太陽が隠れる。
双子の月と、星々が夜の闇を照らす。
落ち着きを取り戻した地竜は、甘えるように私に、頭を擦り付けてくる。
クルクルクル
甘く喉を鳴らす地竜。
可愛い、控えめに言っても可愛い。
しばし、その可愛さを堪能する。
時間を忘れて地竜と戯れていると、背後から数名の気配がした。
地竜たちが、その気配に、唸り声を上げる。
再び撫でて、地竜を落ち着かせる。
〈さあ、お帰り。〉
私が促すと、地竜たちは何度も振り返りながら、『魔獣の領域』に帰って行った。
それを見送って、私はやっと背後を振り返る。
そこにいたのは、予想していた通り。
辺境伯様、リカルド様、ギーク様、ヴィラーシュ様、皇帝陛下、皇帝陛下の側近の方。
錚々たるメンバーだ。
辺境伯様が何事かを言おうとした時、そのさらに背後から、喧しい声が遮った。
「その精霊は、私が呼び出しましたのよ!私の闇魔法と呼びかけに答えましたの!」
延々と、舞台女優のように、身振り手振りで語る五月蝿い声。
「黙りなさい。」
キャロライン妃は、私の言葉に、口をパクパクさせながら、喉を押さえる。
静かになった。
「お前ね、地竜たちに瘴気を流し込んだのは。」
思いの外、低い声が出た。
辺りは、2、3度、温度が下がる。
「お、恐れながら。あなた様は、一体…?それに瘴気とは…キャロライン妃が地竜にぶつけたのは闇魔法だったはず…」
辺境伯様が、恐る恐る声をかけてくる。
その内容が、一部引っかかる。
「闇魔法?今、この地上に、闇魔法を扱える者は、存在しない。」
「え……?」
私のその言葉に、空気が固まった。




