第6話 面接②
生徒会室に入ると、左から生徒会長、生徒指導の先生、担任の先生、生徒会担当の先生がいた。担任の先生は妊娠していたため、なぜここにいるのか不思議だった。
軽く志望理由などを尋ねられた次の質問。
「あなたの長所はどこですか?」
「はい。私は何事も一生懸命取り組むところが長所だと思います。」
「それだけですか?」
「あと、諦めず最後まで取り組むところです。」
私は自分のことが嫌いだった。以前までは好きだったが、それも母の対応によって変わってしまった。だからすぐ浮かんだことも「これは誰でもできることだ」と考え、答えるのは抽象的だった。
ここまでは良かった。理不尽なのは次からだった。
生徒指導の先生が言った。
「そういえば、今日はどこの道から学校に来ましたか?」
「大通りの2つの道のうち左からです。」
私はいつも右の道から行くのだが、そこからだとどうしても上るのが苦しくて、今日だけ左の道から行った。HR後に担任の先生から「生徒指導の先生が時々あなたを見るらしい。今日は見なかったらしいから、今後は気を付けて」ということを言われた。今考えてみるとそれは嘘だと思う。時々というならば私が車、またはほかの道から登校した可能性だってある。きっと左の道から行く私を見たのだろう。
「なぜ左の道を使ったんだ?そこは下り専用だから使ってはいけない。自転車を押していったのならまだ良いが。」
「あ、押していきました。私は咳が出るので右の道だとなかなか登れなくて、苦しいからです。」
「そう。今回はあなたを信じる。そんな子じゃないと思うからね。でも右も左も変わらないと思うが。」
「いや、変わります。でもこれからは右の道を使おうと思います。」
私は左の道でも十分苦しかった。しかし右よりはマシだったし、左の道を使ってはいけないということも知らなかった。使っている人はたくさんいた。
次の質問は、担任の先生からだった。
「ところで、呼びかけはしていますか?」
「、、、 これからはしようと思います。」
「いや、だから今までしていましたか?」
「、、、 いいえ。」
「そういえば、生徒会役員選挙から1カ月経ちましたね。」
他の先生と目を合わせて、ですよね、と言っていた。
「体調不良で1週間休んでいたとはいえ、以前もしてくださいと言いました。」
私は怒鳴りつけてやりたかった。生徒会役員選挙からは1カ月も経っていない。約2週間くらいだ。それに、生徒会になれるとは限らないのに呼びかけをするやつがどこにいる?私は学級委員ではない。確かに呼びかけをしろとは言われたが、私はその次の日からずっと休んでいて、それから来たのは中間テスト初日、つまり昨日だ。まだ回復したわけでもないのに、無理がある。
「これからは呼びかけをしようと思います。」
「何を言うのですか?」
「例えば、みんなが静かではなかったら静かにしてください、2分前着席に間に合っていなかったら座って下さい、と呼びかけしようと思います。」
「それだけですか?」
「、、、 今ぱっと思い浮かぶのは先ほどの2つだけですが、他にも呼びかけが必要な場面では呼びかけをしようと思います。」
「明日からちゃんとしてください。」
それからのことはよく覚えていない。最後に生徒会長が一緒にがんばりましょう、楽しみにしていますというようなことを言っていて涙が出そうになったこと、厳しいとは聞いていたがここまで理不尽だったことに泣きたかったこと、家に帰ると熱が上がってまた休むことになったということは覚えている。
あんなことを言われたのにもかかわらず、私は生徒会執行部になりたい、という夢を諦めることができなかった。