第2話 初めて自分で選んだ挑戦
じめじめとした梅雨が通り過ぎ、塾に行かずとも中間テストの点が90点以上だったことから母にはたまに罵倒されるもだいぶ穏やかな生活を送っていた。
「9月に、英語暗唱大会というものがあります。英語が上達するので、皆さんぜひ参加してみてください。」
6月のある英語の時間に、先生がそう言っていた。気になって紙を見ると参加できるのは1人だったし、会場までも遠かったから最初はやめようと思っていた。
しかし、私は選ばれなくても経験にはなるかと思った。だから集合場所に向かった。
結果的に私は出場権利をつかむことができた。
それから夏休みに入り、一週間に何回か練習をした。私は4回目ですべて暗記し、発音も完璧だと言われた。
そして9月、英語暗唱大会本番。その日もだいぶ手応えがあった。1位まではいかなくともトップ3には入れると思った。
入賞者発表、私の名前は呼ばれなかった。何かの間違いだと耳を疑った。それからはずっと放心状態で、母に罵られてもぼうっとしていた。映像を見返してみると瞬きが異常に多かった。先生方には緊張しないと言っていたが、ストレスでそうなっていた自分が情けなく、また成功しない自分に腹が立った。
その時の「死にたい」と思ったときの気持ちは人生でいちばん強かったと感じる。私は考えた。私の生きる価値は?意味は?
私が生きていたって誰も嬉しくない。死んだとして母は泣いてくれるだろうがそれは「私」を失ったことではなく「娘」を失ったことへの悲しみだろう。父も母に殴られ罵られる私に見て見ぬふりをして、話すことは必要最低限になっていた。
しかし自殺をすることは考えなかった。そうすれば家族、友達、クラスメイト、そして見知らぬ人に馬鹿にされることになる。それにもし失敗したら?
私は誰かに殺されたかった。できるだけ楽に。不謹慎ではあるがニュースで刺し殺された人を見るたびに代わりたいと思っていた。
トロフィーをもらい満面の笑みで家族のもとに向かっていった入賞者たちを思い出して、「誰かの幸せは、誰かの犠牲だ」と感じた。