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俺様雪女のキミが大好きだ!

作者: えあてぃー

「この度は、妖乱学院(ようらんがくいん)への入学、誠におめでとうございます。私は学長のーーー」

あの学長の話、長いなぁ。眠くなりそうだ。

噂が本当だったなんて。

嬉しくないなぁ。

でも、もうひとつの噂は嬉しい。

何せ、()()が今この場、そして隣に座っているから。

彼女の髪は、氷のような銀髪、美しい瞳、真珠のような肌......と、冷たい僕への視線。

やばい、見すぎたかな!?

「お前、なんで俺の事じっと見てんだ?喧嘩売ってんのか?あ?」

「い、いえ、そんなこと...」

「だったらガン飛ばしてんじゃねーよ気色わりぃ。」

ガーン...気色悪いかぁ。

「学長、お話ありがとうございました。次は、生徒会長の挨拶です、新入生、起立!」

司会の教師がそういうと皆一斉にガタッと音を立て立ち上がる。

「えー、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。僕は生徒会長の氷室零一(ひむろれいいち)です。これから皆さんが通うこの学院は、世界に一つしかない、人間と妖怪が同じ学び舎で様々なことを学習します。この後、皆さんには、あちらにいる、椿野英美里(つばきのえみり)先生に、(つがい)を作っていただきます。皆さんもご存知だと思いますが、我が学院では、授業も試験も、寮生活でも、番と一緒に生活してもらいます。これは我が学院を卒業したあとも、共に活動する、いわばパートナーです。悪い妖と戦闘する時、お互いのことを意識していないと死ぬからです。そうならないように、皆さん、頑張ってください。以上です。」

生徒会長は挨拶を終えると、何故かこちら側にパチンッとウィンクした。

僕に...ではないだろうな。

「生徒会長、ありがとうございました。これにて入学式を終了いたします。新入生は残り、在校生は教室へ戻ってください。」

ぞろぞろと在校生は会場を後にする。


「では、始めましょうか。」

そう言ったのは椿野先生だ。

「これから1人ずつ、私と目を合わせてもらいます。」

「では君から!」

椿野先生は女子生徒と目を合わせる。

「ふむふむ、なるほどね、じゃ、次!」

メモを取りながら、隣の席の子と目を合わせる。

そうして段々と僕の番が近ずいて来て、遂に僕の番になった「ふーん、こんなの初めてみた。」

不思議な事を呟きながら僕と目を合わせていた。

「はい、じゃあ次!」

椿野先生は彼女の目をじっと見ていて....5分、10分と経過した。

「あの、椿野先生?」他の教師が声をかけると、「あらやだいけない、つい見とれちゃった♡」

分かります、その気持ち!と、僕は心の中でガッツポーズをする。


「はい、じゃあ終わり!番を発表していくよー!」

僕の番は誰かな?とルンルンでいると、「北野蛭間(きたのひるま)!」「は、はい!」僕の名前が呼ばれた、さぁ、番は誰だ!?「氷室咲夜(ひむろさくや)!」「あぁ、」


って、えぇぇぇ!!!ぼ、僕の番が、彼女、いや、氷室さん!?

「お前が俺の番か、弱そうだけどまぁいい、だが足は引っ張るなよ?」

「は、はい、」

「さ、教室に行きましょうか、」

僕は状況が意味わからなくて棒立ちしていて、担任の椿野先生の言葉さえ聞こえなかった。

「ちっ、だりーな!おら行くぞノロマ!」

「...」

氷室さんの声も聞こえなかった。

すると氷室さんは僕の耳元にこう囁く。

「お前、俺の言うことが聞こえないなら、俺の命令を聞けるよう、調教してやろうか?」

「そ、それは、」

「ご希望ならやってやるよ、ま、お前はそんなタマじゃなさそうだけどなー。」

な、なんだってぇぇぇ!!

「あら、2人して何を話してるの?早くしないと置いてくわよ?」

「な、なんでもないです、行きましょうか、氷室さん!」

「俺に命令すんじゃねーよタコ」

やっぱりこの人噂通り、口が悪いなぁ。


教室に着いて椅子に座ると、氷室さんはタバコのようなものを吸い出した。

僕は驚愕しながらも、「氷室さん、タバコ吸っちゃダメじゃないですか!」

僕がタバコの方へ手を伸ばすと彼女は「ハッ、お前、知らねーのか?これはタバコじゃねぇ、この辺りの妖気を吸うやつなんだよ。」

妖気を吸う?初めて聞いたな。

「ま、普通の人間には縁のないもんさ。」

「そっか、」

()()()()()、そう、僕はそうだ。彼女とは何もかもが違うんだ。


「明後日に実力テストを行います。成績最優秀者には特典がありますが、まだ言いません。なので明日1日は番と共に訓練していただきます。訓練内容は自分達で話し合って決めること、もちろん、今日これから訓練しても構いません。訓練場はずっと解放していますから、使っても大丈夫ですよ。では解散!」

椿野先生はそういうと出ていってしまった。

「ひ、氷室さん、どういう訓練をしますか?やっぱり、飛ぶ訓練をしますか?それとも格闘技?」

氷室さんはスマホの手を止めて、「お前は何ができる?喧嘩とかできなさそうだけど。」

うっ、するどい。

「氷室さんに合わせますよ。」

すると氷室さんはニヤッとし、「面白い、全部やろうじゃねーか、でも俺に着いて来れるのか?」

「僕は、あなたのために鍛えましたから。」

僕は腕の筋肉を見せた。

「やるじゃねーか!なんだよその筋肉!」

僕はこの学院への入学が決まったときから、ずっと鍛えていた。彼女を守れるように。

「へへっ、驚きました?」

「ま、まぁな、」

「だが、」

氷室さんは誰もいない教室で服を脱ぎ始めた。

「ちょっ!!氷室さん!?」

僕は手で目を隠す。

「俺の腹筋の方がすげぇよ。」

僕が目を開けると、下着だけ付けた氷室さんがいて、ドヤ顔だ。この上ないドヤ顔をしている。

「だ、だめですよ、こんな所で...!」

「だめ?お前が1番喜んでるじゃねーかよ。視線ずっと胸元だし。ほら、今も。」

だんじてそんなことはない、ただちょっと首の少し下に視線を置いているだけだ。

だんじて!胸は見ていない!

「そんな見るなら、触ってみるか?ほーら!」

氷室さんは僕の手を自分の胸元へ持っていく。

「だめだ...」

「はっ?俺の胸触りたくねーの?」

「...」

「?おい!」

氷室さんが僕の頭を叩くと、「あれ、僕何してたんだっけ?」気絶していた。

「って、うわぁぁ!だ、ダメですよ氷室さん!風邪引きますよ!」

「いーから、一旦落ち着け!」

そう言って氷室さんは僕の手を胸の谷間につけた。

「これで落ち着くだろ?」

氷室さんの心臓のドクンドクンという振動が、僕の手に来ている。

これは、やばい、マジでやばい。

「...」

「おーい?...また気絶してやがる。」


次に僕が目を覚ますと、ベッドの上にいた。

「ここは?」

「俺とお前の部屋だ。」

「氷室さん!?」

「お前、筋肉はあるのに女子免疫ないのな?クソおもれーわ!俺、お前のこと気に入った!」

これは、おもちゃとして気に入ったのだろうか...。


「さ、起きたなら今から訓練場行くぞ!」

「は、はい!」

「あと、」

「な、なんですか?」

「敬語使うの禁止な!俺ら番なんだからよ!」

「分かりました、、ううん、わかったよ!」

「名前も、俺のことは咲夜でいい、俺もお前を蛭間って呼ぶからよ!」

「わかった!咲夜!」

その後も、次の日も、僕たちは訓練に励んだ。

成績最優秀者になるため。


ー実力テストの日ー


「えー、キミ達には、レベル99の、この妖を退治してもらう。それができたら、君たちが最優秀者だ。」

生徒会長の氷室零一さんは僕と咲夜に言った。

なんだか優遇されているように思えるかもしれないが、全然そんなことは無い。他の番は、レベル3の妖を相手にしているのだ。

「あの、」

「何かな?蛭間くん。」

「僕たちだけなぜレベル99なんですか?」

「この試験は、入試の時に行った時の実力に合うよう設定されているのさ、君と、、、さっちゃんにはこのレベルじゃないとね♡ね、さっちゃん♡」

!?さっちゃん?てかこのキャラ変何!

「兄貴、ここではやめてくれ。」

「やだよー、せっかくさっちゃんと話せるのにー」

ガバッと生徒会長は咲夜に抱きつく。

「兄貴、はなれろよ!」

「いーやーでーす!!」

「ま、まぁまぁ、会長、そろそろ開始時間ですよ?」

僕がそう言うと、一瞬生徒会長は怖い顔をし、「そうだね、君の言う通りだ。さ、実力テストを始めようか。」

「えー、では!テスト開始!」

そう言うと、皆必死に戦い出した。

「じゃあ始めようか、咲夜!」

「おう!」

僕は妖道具(ようどうぐ)を出す。

妖道具とは、妖力のない人間が、妖と戦う為の道具だ。

僕はそれをたくさん持っている。

例えば今出した、雷剣、雷を纏った剣だ。これで妖を切り裂く事が出来る。

「はぁぁっ!!」

ザシュッ!!

「レベル99一体撃破!残り19体!」

「おう!次は俺の番だな!」

「雪よ、この世界を銀色に!」

辺りに雪が降り始めた。

そうだ、僕は、あの姿に惹かれたんだ。


時は少し遡る。

あれは、僕が中学2年生の時、僕は妖怪に襲われ、血を流していた。

もうダメだ、死ぬんだと思っていた。

そこへ現れたのが、咲夜だったのだ。

咲夜はあっという間にその妖怪を雪で溶かし消し去った。

「おい、大丈夫か?」

「は、はい、」

「ならいい、じゃーな!」

そう言って離れそうな彼女を僕は引き止めた。

「あの、あなたの、お名前は?」

彼女はわらって、「氷室咲夜だ!」

「あ、あの!ありがとうございました!また、会えますか?」

彼女は無表情になり、「いつかな!それまでにもっと強くなれよ!じゃーな!」

そう言い、咲夜は走り去ってしまったのだ。

それからは、鍛練の日々だった。

彼女を守れる男になるように。それしか考えていなかった。

そんな時だ。彼女が妖乱学院に入学するかもという噂を聞いたのは。

嬉しかった。

そこに行けば会えるかもと思ったから。

ありがとう、咲夜。


「おぉぉぉ!!消えろ!」

咲夜は実力テストの妖怪、全体を倒した。

「やっぱり、僕なんか力になれないんだね。」

「んなことねーよ!」

「それにこれは、お前のおかげなんだ。」

「え?なんか言った?」

「いーや?」

「そっか。」

ピーーーッ!「実力テスト終了!最優秀者は、氷室、北野!」

「おっしゃァ!」

「よく頑張ったねぇ!さっちゃん!」

「さっちゃん言うな!」

生徒会長は笑いながら咲夜を撫でる。

「さぁ、2人には特典を与えよう。」

そういえば、椿野先生は言ってなかったな。

「特典は...」

僕はゴクリと唾を飲む。

「生徒会に入れまーす!」

えーーー!!

僕たちが生徒会に!?でも、

「あんだよ、それだけかよ、」

僕の反応とは裏腹に咲夜はそこまで喜んでなかった。

「ま、いいか、」

「これにて解散!」

「2人はこのまま生徒会室に来てもらうよ。手続きがあるからね。」

「了解です。」

「じゃ、行こっか。」

「おう」


生徒会室に着くと、1人の女子生徒がいた。

「会長、この子達が?」

「そう、諜報部の子」

....?諜報部?

「あの、僕たち生徒会に入るんじゃ?」

「もちろん、そうだよ、でも役職は、諜報部員さ、この学院の裏を調べてもらう。」

「裏?」

「さっちゃんならこの意味、わかるよね?」

「あぁ。」

「えっと、どういうことですか?」

僕だけ置いてけぼりにしないでほしい。

「説明しなくちゃね。」

「あぁ。」

「大雑把に言うと、僕の世界一可愛い妹のためなのさ。」

「と言うと?」

「単刀直入に言う。この学院はね、」

「人を殺してるんだ。」

え...

「ドッキリですか?」

「なわけないだろ...」

「北野くんは頭良かったはずだよね?」

皆困った顔をする。

いやいや、1番困ってるの僕だよ!?

「この学院はね、君の番で僕の妹、つまり氷室咲夜の元番を殺しているんだ。」

え....元番?

「元番って?」

「君の前の番さ。僕たち氷室家には、生まれた時から番がいるんだ。特に次期当主の咲夜の番は特別でね。」

「一生離れられないはずだったんだ。」

「だがある日、咲夜の元番、銀谷神(ぎんだにかみ)が、死体で発見されたんだ。咲夜はその真相を探る為にこの学院に入学したんだ。」

「そう、なんですね、、その、銀谷さんはどんな人だったんですか?とても強い人間だったよ。それこそ、名前の通り神と呼ばれていた。」

そうなんだ、、咲夜は、その人が好きだったんだろうか...

いや、こんなこと考えても意味ない。どの道脈ナシだろうしね。

「諜報部、入るよね?そしたら、この学院の闇を暴くことができる。」

「分かりました。それで大丈夫です。」

「さっちゃんは?いいの?」

「あぁ、あいつの死の真相を見つけるんだ、そして、殺したやつを...」

「いや、なんでもない。」

「ところで、諜報部って顧問いるんですか?」

「私よ。」!!

後ろを向くと、椿野先生がいた。

「零一、あれは?」

「あぁ、ありますよ、後でお届けします。」

「そう。」

すると椿野先生はこちらへどんどん近づいてきた。

「はぁぁ、♡今日も可愛い!♡零一、これ私にちょうだい!」

咲夜を撫でまくりながら、椿野先生はめちゃくちゃ嬉しそうな顔をする。

「ダメに決まってるでしょう。世界一可愛い僕の妹なんですから♡ねー、さっちゃん♡」

会長も咲夜を撫でくりまわしている。

「てめぇらいいかげんにしろー!!!!!」

咲夜は2人の手を払いのけ、「俺はあんたらの人形じゃねーんだぞ!」

「ごめんごめん、可愛すぎてつい。」

「だあって妹なんだもん!」

いつもは冷静なあの二人が...。

恐るべし咲夜の美女っぷり。

「じゃあ、もう遅いんで僕たちは寮に戻ります」

僕がそう言うと、会長は、「あ、北野くんはちょっと残って、さっちゃんは先に帰ってて〜」

「あぁ。」

咲夜が生徒会室を出ると、椿野先生と会長の顔がどんどん怖くなっていく。

「北野くん」

「は、はいっ!」

「咲夜のこと、好き?」

...っ!いきなりのド直球。誤魔化した方がいいのか?それとも正直に言うべきか?

「だんまりは良くないなぁ。」

会長はニコニコして言う。

「...好きです!」

その瞬間、僕は会長に胸ぐらを掴まれ、椿野先生はナイフを僕の耳へ近づける。

「へ?」

素っ頓狂な声しか出ない。

「さっちゃんに何かあればお前を殺す」

「そしてこのことは誰にも言うな。もちろんさっちゃんにも。」

「付き合ったり結婚したり、子ども作ったり、自由にして良いが、さっちゃんを泣かせたら殺す。さっちゃんにかすり傷一つ付いていて、たとえお前のせいでもなくても問答無用でお前を殺す。お前の人生を全てさっちゃんに捧げろ。...分かったな?」

2人とも、鬼の様な形相で僕を睨む。

僕は頷くしか無かった。

「分かりました...。」

「さっちゃんに良い番が出来て僕は嬉しいよ。」

「これからよろしくね?北野くん?」

2人は怖いくらいの笑顔でそう言うのだった。


「あの2人と何の話をしたんだ?」

寮の部屋に戻ると、咲夜がそう聞いてきた。

「え、えっと、咲夜のこと、よろしくねってさ!」

「ったく、あいつらも過保護すぎんだよ。」

過保護ってレベルか?あれ...。


ー次の日ー

「さっそく、調べましょうか、銀谷さんの事件。」

授業が終わった放課後、椿野先生にそう言われた。

「調べるって、どうやって?」

「ふっふーん!実はこんなもの取って来ました!」

椿野先生は自慢げに言った。

出されたものは古いパソコン。

「これ、椿野先生のですか?」

「いいえ、学長のよ。」

「!?」

「盗んできたんですか!?」

「だぁいじょうぶ!ダミー置いてきたから!」

ほんとかなぁ...。

「なんで学長のなんだ?」

「それはね、私、実は犯人知ってるの。」

「え!?」

「学長が犯人なのよ。ただ、証拠がないから話せなかったの。でもこの間聞いたの。学長、この学院を去るんだって。だからあいつがこの学院を去る前に、豚箱になんとしてでも入れないとでしょ?」

「は、はぁ。」

「とりあえず、パソコンを調べてみましょう。」

学長のパソコンを開くと、ロックがかかっていた。「ロック解除できますか?」

「任せて!」

椿野先生はそう言って、細長い棒をどこからか出した。

「これは、どんなロックがかかってても、呪文ひとつで解除されるの。いくわよー!」

そんな物があるのか、これはレアだ。

「開けゴマ!」

よくある言葉だなー。としか僕は思わなかったが、パソコンのロックは解除できた。

デスクトップには、たくさんのファイルがあって、僕たちはひとつずつ見ていた。すると、「これだわ!」

遂に証拠を掴んだ。

「ふむふむ、なるほどね、よし、証拠は見つかったわ、急いで零一に伝えましょ。」

「はい!」


会長に証拠を見せると、「これは、あきらかに黒ですね。このまま学長室に行き、罪を認めさせましょう。」

そう簡単にうまくいくかは分からない、でも、咲夜の大事な人を殺したあの学長を許す事はできない。

僕たちはすぐ学長室へ向かった。


「学長、生徒会長の氷室零一です。お話が。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

学長室には、たくさんの金があった。この金を見て、僕は心底この固太りの学長にイラついた。これは全てあの人の...。

「話ってなんだい?氷室くん。」

「学長、あなたは銀谷神を知っていますね?」

僕たちはソファーに座りながら聞く。

「あぁ、氷室咲夜さん、その子の元番じゃろ?だが、残念ながら知ってるのは名前だけだ。」

嘘だ。名前だけしか知らないのに、なぜそんなに平然としてニヤニヤしていられる。

続けて会長が「そんなはずはない。彼を殺したのはあなたのはずだ。」

「なぜそういうんだい?何か証拠でも?」

「...」

「証拠も無しに人を疑ってはいかん。」

「証拠なら、この部屋にもたくさんあるではないですか。」

会長は笑って言う。

「...なんの事だか知らんが、私は何もしていないし何も知らない。」

「話はそれだけか?あいにくこちらは今忙しくてな、帰っとくれ。」

「大丈夫ですよ。もう忙しくなりませんから。」

「どういうことかね?」

「僕たちはこのままこのパソコンを持ってマスコミに駆け込みます。そしたらあなたは終わりますよ。安心してください。」

「そ、そのパソコンは!」

学長はいきなり慌て始めた。

「どうしたんです?このパソコンがなくても仕事はできるでしょう。」

「返せっ!!返せ!」

学長は暴れだし、パソコンを取り返そうとする。

「だったら!今、ここで!白状しろ!」

声を荒らげたのは咲夜だ。

「わ、わかった、真相を話す!」

「わ、私は、あの男が許せなかったんだ!金持ちで、氷室家の番だと?ふざけるな!私の方が、何倍も妖力が高いのに!なのになぜっ!!」


そう、学長が銀谷さんを殺した理由は、逆恨みだ。

銀谷さんには親がいなかった、その分遺産がたくさんあったのだ。そんな銀谷さんを咲夜の父母は番として迎え入れた。そしてその遺産の話を銀谷さんは誰にも話していなかった。

なのに何故か学長はその事実を知ったのだ。

学長は銀谷さんに取り入り、チャンスを待っていた。

ちょうど雪が降った日、銀谷さんと学長は、山へ来ていた。

銀谷さんが雪景色を見ている間に、学長が崖から落としたのだ。

そして、自殺をほのめかした遺書を勝手に作り、そこに、全てのお金を学長に、と書いたのだ。それが数年前の話。


「も、もう話したからいいだろう!?それにあやつももう忘れているだろう!」

「うるせぇっ!!」

「雪よ、この世界を銀色に!」

あたり一面が雪に覆われる。

「お前の、お前のせいでっ!!」

咲夜は学長を凍らせようとしている。

「死ねぇぇぇっ!!」

「あっ!がはっ!」

学長は苦しそうにしている。

「ダメだっ!咲夜!」

「蛭間、止めるな!俺はあいつの仇を!」

「そんなの銀谷さんは望んでないよ!」

「えっ?」

「きっと、望んでない、むしろ、いつか向こうに行った時、怒られるよ、なんでこいつと同じことをしたんだって!」

「でも、でも、」

「大丈夫、こいつには、法の裁きを受けてもらうから!だから、ね、?」

「ちっ!じゃーねーな!蛭間がそこまで言っちまったら何もできねぇよ。」

そう言って咲夜は辺りの雪を溶かした。

「さっちゃん!成長したねぇ!」

「うるせぇ!抱きつくな!」

「可愛いなぁもう♡」

「てことで、さっちゃんは一旦外出て、休んでて、まだこいつに言いたいことあるからさ♡」

会長がそう言うと「わかったよ。」

昨夜が部屋を出ていくと、ガっと僕、椿野先生、会長で、学長を壁に立たせた。

「ちゃんと警察行って自首してくださいね?」

と僕。怒ってないよ?怒ってない。ただ虫の居所が悪いだけだ。

「これ以上あの子の事傷つけたら、その首チョン切って妖達の餌にするから、いいわね?」

これまたにっこりと椿野先生。

「さっちゃんと僕たちに二度とその薄汚い姿を見せるな、見せたら今度こそ殺す!てめーの脳ミソぐちゃぐちゃにしてミンチにしてやるからな」

と会長。さすが、咲夜への愛が重たい男だ。共感するよ。

学長はそのまま尻もちをついて失禁していた。


ー後日ー

うちの学院の新しい学長は椿野先生になった。

なんでも、教員の中で支持率が1番高かったかららしい。

あの事件はかなりのニュースになった。

学校がしばらく休校になるほどの。

僕たち諜報部は1日で解体され、そのまま生徒会メンバーになった。

クラスメイトからは羨ましそうに視線を送られている。

そしてあの後、もうひとつのニュースも学校中を騒がせている。

僕と、咲夜が恋人になったことだ。

もちろん告白したのは僕。

咲夜は顔を真っ赤にしながら「しゃーねーな!付き合ってやんよ!」

と言われ、晴れて僕たちは恋人同士に。

もー幸せだよぉ!

生徒会室にいる時以外はね...。

付き合ったりするのはいいよと会長は言っていたが、会長は僕を見る度、不服そうな顔をする。

だが、いずれは僕だって会長を超えて、会長に頼りにされるような強い男になってみせるさ!

そしたら祝福してくれるはず!

このまま、頑張ろう!

咲夜がいてくれればどんな苦行も耐えられる!

だって世界で1番咲夜が好きだから!

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