俺、装備される
暗闇だった。
いや、違う。
視界がない。
体がない。
手も、足も、呼吸も、鼓動もない。
なのに、意識だけがはっきり存在している。
(え? ちょっと待て)
(俺……生きてる? いや、生きてない?)
状況を整理しようとした、その瞬間。
《スキル取得:未知スキルを確認》
は?
頭の中にいきなり“システム音声”が響いた。
そして理解した。
俺は、スキルだった。
(いや意味わからん!!)
転生って普通、剣とかスライムとか魔王とかだろ!?
なんでスキルそのものなんだよ!?
肉体すらないってどういうことだよ!!
叫んでいるはずなのに声は出ない。
でも代わりに――
⸻
《自己定義を確認》
名称:未設定スキル
分類:概念型スキル
所有者:未登録
⸻
(未登録!?)
持ち主すらいねぇの!?
俺、ただの野良スキルじゃねぇか!!
その時だった。
どこか遠くで、人の声が聞こえた。
「な、なにこれ? 遺跡のコア?」
少女の声。
次の瞬間。
《装備者を検知》
《仮契約を開始します》
(え? ちょ、ちょっと待っ)
《スキル、装備されました》
世界が、繋がった。
視界が開けた。
いや、正確には。
装備者の視界が、俺に流れ込んできた。
(うおおおお!? 見える見える見える!!)
石造りの遺跡。
崩れた壁。
青白く光る魔法陣。
そして。
ボロい装備の、いかにも駆け出し冒険者って感じの少女。
名前:リク・アルトリア
職業:見習い剣士(Lv3)
才能:最低ランク
(うわぁ)
(よりにもよってめちゃくちゃ弱そうな子に拾われちまった…でも、かわいい)
「よく分かんないけど……スキル、手に入ったみたい」
少女は嬉しそうに笑った。
その瞬間、俺の中に情報が流れ込む。
《あなたは装備者の成長を補助できます》
《干渉可能領域を解放》
(干渉?)
試しに、意識を集中してみる。
すると。
《筋力補正:+1 付与》
「え? なんか急に体が軽く!?」
少女が驚いた。
(え?)
(俺、バフかけられるの?)
さらに気付く。
俺は「ただのスキル」じゃなかった。
俺は、自分で進化内容を決められるスキルだった。
(ちょっと待て)
(これ、育て方次第で)
(勇者も魔王も、俺が“作れる”んじゃないか?)
そして同時に、理解してしまった。
装備者が死ねば、俺も消える。
(つまり)
(この見習い美少女を)
世界最強に育てないと、俺も詰む。
少女が剣を握り直す。
「よーし……このスキルと一緒に、成り上がってやる!」
(いや、お前)
(自分が育てられる側だって分かってないだろ)
こうして。
肉体ゼロ。
自由移動不可。
しかし成長性だけは無限。
“育成される側じゃなく、育成する側に転生した男”の物語が始まった。




