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60話 帝都防衛戦③

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


まさかの3日連続投稿!


現在ちょっとばかり気合が入っている状態でございますwww

 晴れていた空は瞬く間に曇天へと変わる。

 空には雷光が瞬き、暴風がうねり始める。

 古き歴史を誇る和の国。そして、その中央の地。

 建国より長き時を超えて来たその地に、今一つの暴力が君臨していた。

 身より放たれる雷風は場を蹂躙し、その剣より放たれる剣戟は瞬く間に命を刈り取っていく。

 正にそれは、末期の始まりにも等しかった。


「あれはバァルだ」

「バァル?」

「ああ」

 串肉を噛み千切りながら解説する。

「レヴィアタンやアスモデウス、それにマモンやベルフェゴールのような生まれもっての大悪魔ではないが、魔界でも力ある大悪魔の一柱だ」

「まさか!?」

「いや、これ本当のことね。……元々は中位の魔族だったんだけど、人間と同じように血の滲む様な修練の果てに最上位クラスに仲間入りした変わり者さ」

「修練? 魔族が?」

「ああ。だから、正直強いと思うよ」

 その剣の舞には人間と同じような理合が込められているのが分かる。

 生まれてもっての力に納得せず、ひたすらに上を目指す人間が求める、力の一端。

「……宗武様」

「?」

 伊織が小さく呟いた。


「シーファ、君なら勝てるかい?」

「俺? 当然。……尤も面倒だからやらないけど」

「……」

 あれれ? 周りの視線が痛いぞ。

「あー……。ゴホンッ。ともあれ、バァルが出てきている以上この戦、少し厳しいな」

 空になった串を捨て、足元の焚き火にくべてある新しい串肉に手を伸ばす。

「んぐっ。 っ! あつっ!」

 牡丹肉に岩塩を塗して焼いた単純な物だが、それゆえに出来たては美味い。

「はふっ、はふっ」

 口の中で溢れる肉汁がたまらない。

 と、この世の春(?)を満喫していると横から声がかかった。

「シーファ」

「んむ?」

 真剣な目をした伊織が言葉を紡ぐ。

「君に頼みがあるんだ」

「うぐっ、うぐっ。うぐっ、ごくんっ」

 口の中の肉を咽に押し込み、返事をする。

「どした?」

「実は……」


 伊織が言葉を放とうとした瞬間だった。


 ズゥンッッッッ!!


 巨大な閃光、そして爆音と共に帝都の一角消滅した。



 ―――宗武―――


 殆ど本能だった。

 瞬動で間合いを殺すと、全力で宝剣を叩き落した。

 二の太刀を考えずに、一撃必殺を体現するかのような剛剣である。

 しかし。

 ギャリンッ!

 いとも簡単に弾かれてします。

 そして弾いたのは目の前の魔族――バァルの携えている黒の剣だ。


 バァルが本来の姿に戻ると同時に長剣は弧を描いた湾刀へと変化している。

 ただひたすらに相手を切裂くためだけに追及された形。

 そして、それが大気を抉りながら奔る。

「ぐうっ!!」

 宝剣『十束剣』を盾にしながら、同時に背後に全力で跳躍する。

 結果として。

「……十束剣じゃなきゃ間違いなく真っ二つだったな」

 死神の如き一撃から生還した。

 だが、背を流れる嫌な汗が止まらない。

 今の一合で分かってしまったのだから。

 戦士として、一剣士として絶対に行き着きたくはない思考。

 しかし、幸か不幸か宗武という武人は愚かではなかった。

 故に、その思考に行き着いてしまった。


「…………勝てない」


 無意識に口から漏れでしまう。

 今の一閃は文字通り大気を切裂きながら奔った。

 恐らく剣が奔った軌道に現れた歪みは大気の歪み。

 即ち、剣速が音速を超えた証。

 ならば今の一撃をまともに受けていたなら、剣の一撃のみならず、剣閃が生む衝撃波で体を撃ち抜かれていただろう。

 事実、僅かに体が軋む。

「ぐっ、くっ」

 足が震える。

 戦士としての経験と感、それら全てが訴えている。

 目の前の相手は消して自分が勝てる相手ではない、と。

 勇気と蛮勇は違う。

 目の前に立っている相手を打倒するには姫巫女様に出ていただくしかない。

 思考の片隅に残った冷徹な自分が、一瞬でその結論をはじき出す。

 ……。

 そして、自分に出来るのはただの時間稼ぎ。


「シッ!」

 それは本能だった。

 生きとし生ける者が持つ本能。

 即ち、生存への欲求。

 ほぼ無意識下で何重もの防御障壁を展開し、さらに宝剣を力の限り振った。

 ガァアアンッ!

 凄まじい轟音を立てて黒き湾刀が弾かれる。

 湾刀は何重もの防御障壁を紙の如く斬り裂き奔ったのだ。

 防御障壁では湾刀を防ぐことは出来ない。

 けれど、その速度を鈍らせることは出来る。

 後は、宝剣の強度と自らの腕を信じるだけ。


 そして、辛くも二度目の攻撃からも生還した。



 息が荒い。

 腕が重い。

 ともすれば、場を圧する重圧に屈してしまいそうになる。

「う、く」

 声が紡げない。

 ……魔族の本体顕現、ここまでのものか!!

 たったの二合で腕の痺れが止まらない。

 左腕のなど既に感覚がない。

 立って息をしているのも既に本能の領域だ。


「っ!」

 本能の命ずるままに咄嗟に真横に飛ぶ。

 当然、宝剣を盾にするのも忘れない。

 しかし。

 ザシュッッ!

 肉を裂く鈍い音が響き、次いで右半身に灼熱の激痛が走った。

「がああああああああああっ!」

 体を支えることも出来ずに大地に倒れ付す。

 右の手から零れた宝剣が同じく大地に投げ出された。

 ……くそ、くそ!

 奥歯をかみ締め痛みに耐える。

 右半身に灼熱の激痛が走り、同時に何かが流れ出ていく感じがする。

 恐らくは夥しい出血でもあるのだろう。

 だが、全てを無視して顔を上げる。

 帝都の守護を預かるものとして、一人の戦士として、この場で痛みに蹲るなどとは許されない!

 だが、顔を上げた俺に、更なる絶望が襲い掛かった。


「立ち上がれ、人間。立って我に剣を向けよ」

 腹のそこに響くような低い声で続ける。

「命ある限り、我と相対せよ、人間。さもなくば……」

 ゆっくりと左手を開き、帝都に向ける。

 ……まさかっ!

 背筋を悪寒の塊が駆け抜ける。

 ィィィィィィィィィィィンッ!

 漆黒の雷光が大気を甲高く掻き鳴らしながら集束していく。

 そして。

「……このようになる」


 ヒュッ。


 ズゥンッッッッ!!


 一直線に奔った暗黒の雷光は祓魔結界と砕き、大結界を貫き、帝都の一角を消滅させた。




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 視界が真っ赤に染まる。

 視界だけではない。

 思考すら真っ赤に染まる。

 帝都の守護は我らの誇り。

 そして、それを汚されたのだ。目の前で。

「貴様ああああああああああああああああああああああああ」

 足運びも体移動もない。ただの力任せの一撃。

 体が傷ついている? 自らが死に掛けている?

 そんなものは目の前で汚された我が誇りに比べれば温い!

 国一番の剣士? 近衛の隊長?

 その全てが今、否定されたのだ!

「キサマアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 死線を越え、命を掛けての一撃。


 だが。


「……温い」

 一言の呟き、宝剣『十束剣』の剣先が左手で掴まれてしまう。

「いい気迫だ。怒りや恨みなどの負の感情こそ力を与える……」

 ミシィ。

 宝剣から嫌な音が響く。

「……だが、人間、お前では駄目だ」

 一言呟き。

 パリィィィンッ。

 目の前で宝剣が握りつぶされた。

 ……そんな。

「だが、中々に楽しめた。……後は別の人間に期待しよう」

 ――黒い湾刀を振り上げ。

 ……俺では力不足だというのか!?

 ……自らの力不足が呪わしい!

 ……この動かない体が呪わしい!

 ……ならば神よ! 我が神アマテラスよ! 

 ……我が命など構わない!

 ……せめてこの国を救うに足る力を持った者を!

 ……誇った力の全てを否定された俺を哀れと思うのなら!

 ……我が神よ、我が願を聞きとどけたまえ!

 ……力在る者を!

 魔族バァルが静かに告げた。

「楽しませてもらったせめてもの礼だ……」

 ……我が祖神、スサノオよ! どうか!

「……苦しまずに、逝け」

 ――振り下ろした。




 かくして、その願は聞き届けられた。




 シュリンッ。


 硝子をこすり合わせるような音が響き、振り下ろそうとしていた黒き湾刀がその根元から断たれる。


 次いで。


 ズババァンッ!


 突如飛来した翡翠と黄金(・・)の風刃がバァルを斬り裂いたのだ。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


意外に応援してくれている人が居るのでがんばります!


えーと、手元にDSなんかありませんよ……。


……。


モノズの努力値振り? さて、何のことでしょうか(汗ッ

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