表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/66

58話 帝都防衛戦①

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。

 後に帝都防衛戦と名づけられることになるその一戦。

 始まりは極めて静かなものであった。


 一瞬の静寂の間を縫い、魔族の軍団から無数の光弾が打ち出される。

 光弾は山なりの弧を描き、大結界の外周に展開していたジパングの兵団の中に落ちていく。

 一瞬の静寂、後の轟音。

 大気を揺るがすような爆音を生み出しながら同時に強大な光と熱をも生み出す。


 これが帝都防衛戦の開戦の烽火であった。



「流石は我が同胞、あの程度でやられるような若輩はおらんな」

 安堵と焦燥の半々の感情がこもった声で呟く。

 しかし。

「やはり、姫巫女様が戦陣に出られないのは痛い」

 今の攻撃とて必死に防壁を築き、ようやく防いだのだ。

 今の一撃以上の攻撃が来たのならもはやお手上げだ。

 とはいえども、撤退などという軟弱な考えは毛頭ない。

 ……なればこそ。

「我に続け! 先駆けの一刃となる!!」

 背後に轟いた同胞の声を最後まで聞かずに、魔族の軍団に向けて疾走した。


 遠距離での撃ち合いは分が悪い。

 ならば、多少以上の危険を冒してでも接近戦に持ち込んだほうがまだ分がある。

 全身に循環させた法力で脚力を大幅に強化して、一陣の風となる。

 人外の速度で間合いを詰めると、相手に反応される前に白刃で一薙ぎを浴びせる。

 ザンッ!

 鈍い音が聞こえ、目の前の魔族の体が上下に両断された。

 そのまま返す刃で背後にいた魔族を左下から右上へと斬り上げる。

 たゆまぬ鍛錬で作り上げられた肉体と法力により強化された筋力の二つがあって初めてなされる離れ業である。

 事実、背後で副長が「流石は宗武様」と感歎と呆れが入り混じった声を上げていた。

「後方の法術師隊が現在総力で術を練り上げている、死力を尽くしてでもここで魔族を足止めするぞ!」

「「「「「応!!」」」」」

 各所で応じる声が上がる。

 ここはジパングの最終防衛線。

 ……ここを通すわけには。

「…………絶対にいかぬのだ!」

 不退転の覚悟と決死の気合を込め、鈍く輝く白刃を振り下ろした。


 ……。

 真横から襲ってきた魔族に蹴りを浴びせてその胴体を蹴り砕く。

 そのまま体を大きく回転させ、同時に白刃を旋回させて別の方向から襲ってきていた魔族を斬り伏せる。

 混戦である以上、360度全てに敵の攻撃を予測しなければならない。

「おおおおおおおおおっ!!」

 そのまま全身を押し込むように前進し、左手に持った細剣を突き出す。

 先程、目の前で果てた同胞の物だ。

 細剣で心臓を一突きされた魔族が苦悶の呻きを上げて痙攣する、そのまま細剣を力任せに引き抜きながら右手に携えた大剣で右方から襲い掛かってきた魔族を両断した。

「今度はあっちか!」

 左右の二刀を効率よく動かしながら味方の戦線を維持していく。

 元々、人と魔族を比べてみると肉体的な能力は魔族のほうに大きく軍配が上がる。

 それでも人は理合を得、術理を得、様々な工夫を凝らしその差を埋めていく。

 中には俺や姫巫女様のような特殊な血族、帝国の魔導戦姫やアバロンの幻王のように生まれ持った能力、クルセスの勇者やガラリヤの騎士王のように尋常ならざる神器を得たりして、魔族以上の能力を持ったものもいる。

 だが、やはりそんな者は全人類の中でも一握りであり、多くの人々は血のにじむ鍛錬の果てにようやく魔族に追いつくのだ。

 ……。

 生まれ持った力と鍛錬の果てに得た力。

 最初からスタート地点が違う。もてる地力の差が違う。

 そして、それは時間ともに目に見える形で現れ始めてしまう。


「今度は向こう!」

 白刃を振り下ろし目の前の魔族を両断し、そのまま走り出す。

 先程から一度も休んではいない。

 だが、そろそろ魔族の中に強力な個体が混ざり始めた。

 様子見の段階が過ぎて、将軍などの幹部級が出没し始めたのだろうか。

 たったさっき斬り殺した魔族も、一太刀では殺せなかった。

 何度斬り結び、最終的には紙一重の差で倒したのだ。

 全身に刻まれた無数の切り傷が相手の強さを物語っている。

「まずい」

 戦陣の各所に散った近衛の同胞が辛うじて戦線を維持しているが、それも長くは続かないだろう。

「くそっ」

 思わず下品な舌打ちが漏れた。

 近衛はいい。だが、一般兵の脆弱さが予想以上だ。

 ついぞ平和ボケという言葉を笑えなくなってしまう。

 こんなことになるのだったら、一般兵ももっと鍛えておくべきだった。

 しかし、それも。

「生き残ってからだな」

 二刀を携え、戦場を縦断する。

 目指すは、戦線の中央。

 だが。

 ズドンッ!

 真横から迸った強大な衝撃に体が吹き飛ばされた。

「……くッ」

 そのまま投げだされた体を一回転させて、その反動で立ち上がる。

 起き上がり、目の前にいたのは。

 一人の青年だった。


 褐色の肌に灰色の短髪。

 手には黒く輝く長剣が握られている。

 一見人間のようにも見えるだろう。

 しかし、その身から発されるどす黒い魔力は、目の前の成年が違わず魔族である証。

「…………シッ」

 寸分の間もなく超高速で右の白刃を繰り出す。

 が。

「……遅い」

 それだけの呟き。いとも簡単に剣を弾かれてしまう。

 ……ならば。

「はあああっ!」

 左右の二刀を縦横無尽に繰り出す。

 左右二本の腕を連動させながらも高速で別々に動かす妙技。

 基本は一刀だが、二刀を振るえないわけではない。

 先の一撃が弾かれた時点で自らの力の制御を放棄している。

 完全に全力全開をもっての連撃。

 すると。

「……む」

 青年が始めて表情を変えた。

 僅かに驚いたように。

 キキキキキキキキキキンッ!!

 青年と俺との間に無数の火花が散った。

「……ぐっ」

 俺の超高速の二刀が目の前の青年の一刀に迎撃されたのだ。


 左右から繰り出される、二刀による超高速の連続攻撃。

 しかし、青年は落ち着いたような風情で奔る斬撃を捌いて行く。

 驚くべきは目の前の青年の技量。

 仮にも三貴神の血筋である自分と互角以上に戦う青年。

 正直、強いという感想と同時に畏怖を感じた。

「ぐっ!」

 二刀の乱舞が終わり、一旦引くが青年には傷一つ付いていない。

 と、青年が感心したように呟く。

「……見事だ、人間。良くぞ人の身でここまで練り上げた」

「何!?」

 変化は一瞬だった。

 目の前の青年の姿がかすれ、同時に自らの左腕が焼けたように熱くなった。

 ……。

「っ、ぐっ、ああああああああああっ!」

 激痛という名の情報が全身の神経系に走る。

 肩の直ぐ下に燃えるような熱を感じる。同時に肘辺りから先の感覚が消えた。

 そして理解した。

 俺の左腕は目の前の青年の姿をした魔族に切り落とされたのだ。

 と、青年が何かに気づいたように呟く。

「む? …………なるほど、な。…………人間、ここは預けておこう」

 そう言って青年は颯爽と身を翻し、魔族の軍団の中に消えていった。

 その直後、帝都の周辺を覆う形で強大な祓魔結界が広がった。

 尤も、それを確認した直後に俺は意識を失ったのだが。


 ……。


「…………ぐぅ」

 左腕から這い上がる疼痛によって目を覚ました。

 記憶にある最後の映像は、大結界に被さる形で祓魔結界が展開された映像だ。

「ここ、は?」

 起き上がり周囲を見渡してみれば。

「医務室?」

 そう、帝都にある近衛の医務室だった。

 自らがお世話になることは少ないが、訓練の折、戦友や同胞をよくここに送ったものである。

「俺は、…………生きているらしいな」

 目を落とせば、切り落とされた左腕もくっついている。

 感覚は鈍いし、動かすと痛みが走るが、それでも間違いなく俺の腕だ。

 恐らく治癒系の術に長けた術者がくっつけてくれたのだろう。もしくは再生させたか。

 ともあれ。

 ……後で礼を言っておく必要があるな。

 ここに件の術者がいないのは別の怪我人の治療に奔走でもしているのだろう。

 横の椅子に畳まれていた上着を羽織る。

 左腕を中心として炙られるように熱が広がっているが。

「……動けないわけじゃない」

 僅かにふらつく足を叱咤して近衛の詰所に足を向けた。


「宗武様!」

 一番最初に気づいたのはやはりというかなんというか、気のきく我らが副長だった。

「迷惑をかけたようだな」

「いえ! ご無事で何よりです!」

 見れば周囲の同胞も涙を浮かべて俺の生還を喜んでくれている。

「…………すまない」

 不覚にもこのとき少しばかり涙を流してしまったのはしょうがないだろう。


 聞けば法術師隊の広範囲大規模祓魔結界により、とりあえず魔族は撤退したらしい。

 もちろん一時、ではあるが。

 現在は急ピッチで負傷者の治療や、武装の点検や修繕を行っているらしい。

 しかし、負傷者や死亡者の数を聞いて暗澹たる気持ちになる。

「……そうか」

 そう呟いたきり、思わず何も言えなくなってしまう。

 いくら姫巫女様が戦えなかったとはいえ、一回の魔族の攻撃だけで帝都を護る守護兵の総数の四分の一近くが戦闘不能になったのだ。

 いくらなんでも、平和ボケが極まりすぎている。

「現在、魔族は?」

「帝都から離れた山間で集結しています。作戦参謀官の話では近いうちにもう一度攻撃されるのではないかと」

「……」

「今度は、結界を破られる可能性も考慮したほうが良いでしょう、と」

「…………だろうな」

 魔族とて獣ではない、一度結界によって侵攻が阻まれたのなら今度はしっかりと対策を練ってくるだろう。

 次は今回以上に苦しい戦いになりそうだ。

「現在は、法術師隊から選出された者が遠見の術で監視しています。動けば即座に分かるでしょう、とのことです」

「……ああ」

「少なくとも一晩は余裕があるのではないかと」

 ……なるほど。

 副長の言葉を聞き、少し考え込む。

 ……一晩か。

 法術による自己治癒能力の活性等をすれば、少なくとも戦陣に参加することは出来るだろう。

 そして、その時間もある。

 ……ならば。


「副長、陣や戦術の組みなおしを任せる。俺は房にこもって禅を組む」

「っ! …………分かりました、お任せを」

「頼んだ」

 俺の短い言葉で全てを理解したのだろう。

 やはり頼りになる副長だ。

「では、行って来る。緊急時は直ぐに呼べ」

「はっ!」

 近場の部下に、薬湯や呪符の手配をすると房に向かった。



「……」

 薬湯を咽の奥に流し込み、全身に呪言の刻まれた包帯を巻きつけ、石畳の上に座す。

「……」

 座する姿勢は結跏趺坐。

「……」

 丹田に意識を集中させる。

「……」

 体の中に在る気を星となし、巡る気を流星となす。

「……」

 巡る星は宙を描き、やがて広大無限の世界となる。

「……」

 小周天は時を経て大周天へと至る。

「……」

 わが身は肉の身に在らず、即ち一つの宇宙なり。

「……」


 ……。


 どれくらいの時間が経ったのだろうが。

 自然と閉じていた目を開き、窓へと視線を投げれば。

「……朝か」

 朝の日差し特有のすんだ黄金の光が目に刺さる。

 意識を集中させてみれば。

「動く」

 左腕も問題なく稼動する。

 くっ付けたばかりゆえ限界はあるだろうが、少なくとも邪魔にはならない。

 ならば。

「……待っていろよ」

 唇の端を吊り上げて宣言した。


「二度も遅れはとらん」




 帝都とも魔族が終結している山間とも違う、帝都の近く。

 即ち、第三の場所。

 そして、そこにはたった今辿り着いた一団の姿があった。

 先頭を歩くのは、長身でもなければ短身でもない黒髪黒目で黒い外套の男。

 表情はどこか眠たげ、歩く姿勢は一見くたびれた者のそれである。

 なんというか、町の底辺にいそうな人生につかれた者の同類なような気がしてならない。

 とりあえず、先頭を歩いていたその男は帝都とその周辺の状況を観て一言。

「うほっ♪ 祭じゃね? 何か売ってっかな? 俺はジパング名物、女体盛りとやらを希望するぜ!」

 同行する親父さん達と語らった男の浪漫である、が。

 背後にいた巫女に「不謹慎!」というありがたいお言葉と共に後頭部をドつかれた。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


ちょーひさしぶりのぞくへんとうこうっす……。


……。


さ、サーーーセーーン m(_ _)m


いや、遊んでたわけじゃないんですよ!


ただポケモンというなの廃人生産装置が俺を!俺を!!


モノズ、エルフーン、シャンデラが!


あいつらが俺を!俺を!


ああ、目を瞑ればウルガモス一匹と五つの卵を持って自転車で走り回った日々が……。


……。


まぁ、いつポケモン廃人に再度ジョブチェンジするか分からない作者です。


読者の皆様、どうにか長い目で見てやって下さいな。


……。


え? 駄目?


で、ですよねー……。




P.S


機竜も更新しますので宜しくです m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ