57話 おいでませ和の国にっ○ん④
誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。
とりあえず帰還後第一弾!
因みに自動車学校は無事卒業できました!
残りは免許センターでの本試だけであります!今度平日に逝って来ますwww
山中の道を練り歩く。
先頭に俺と伊織、その後ろに伊織が連れてきた村人達がついてきている。
「ここから大体歩いて三日程度、皆を連れて歩くのならもっと掛かるよ」
「りょーかい」
んじゃまぁ、一つ気張りますかね。
左目を閉じると。
――展開、実行。
避難民の周囲に対魔結界を展開した。
付近に魔族の気配は一切無し、と。
俺の気配を感じられる領域内には魔族はいない。
一応引き受けたからには完遂するのが礼儀というもの。
しかし。
後方に意識を向けてみれば。
……戦闘可能な人間が一人だけって、笑えないなぁ。
思わず口元に苦笑いが浮かんでしまう。
聞いた話しではどうにも最初は部隊で護っていたらしいが、俺が魚を食っていた河原に辿り着くまでに足止めとして減っていき、最終的には年若い伊織だけになってしまったらしい。
人を殺して快感を得るのは魔族の常。
だが、やはり生きている命を戯れに奪うというのは気に入らない。
悪魔として外れていることは分かっているが、こんな自分を俺は気に入っている。
そういえばと、俺の横を歩く巫女に目を向ける。
人間としては相当に鍛えられていると思う。
先程目にした呪符の扱いも、体の肉つきも十分に鍛えられている人のそれだった。
まぁ、才能に関しては多少乏しいようでスターシャなどの天才に比べれば遥かというかなんというか、存在する次元が格段に下だが、凡人としては間違いなく上位に位置すると思う。
とはいえ、保険は掛けておこうと思う。
目の前で知り合いが死ぬのはあまり見たくないし。
「伊織」
「え、な、何!」
……。
びみょーに声が裏返っていますよ、伊織さん。
ともあれ。
「こいつを渡しておくぜ。一応、自衛と保険を兼ねてな」
背後にある異空間から取り出し、差し出したのは翡翠色の扇だった。
「これは?」
「風扇『ヴァーユ』、一応神器だぜ」
伊織の目と口とが綺麗な三つのOを作った。
――風扇『ヴァーユ』。
天を巡る風が生んだとされる翡翠の翼。
その翼が象徴するは命を育む聖風であり外敵を打ち破る轟嵐。
聖風が生み出すは輝く未来へと続く希望の架け橋。
轟嵐が生み出すは全てを切り裂く無慈悲な刃。
情熱と自由の心を持って振るうものに果て無き風を授ける天風の神器。
「な、なななな」
「な?」
「何で、こんな、もの」
そういったきり絶句してしまった。
―――伊織―――
手渡された扇を手に絶句する。
それは解放すらしていないというのに信じられないほどの圧を放っていた。
姫巫女様がその身に宿している三種の神器ですら及ばない完全な神造の一品。
纏う風格は神のそれである。
……間違いない、本物だ。
普通の人間なら一生かかっても手にすることすら出来ない神の宝。
震える手で扇を開く。
「綺麗」
思わず感歎の吐息が漏れた。
澄んだ一面の翡翠に、散りばめられ所々輝く黄金の雲母。
あまりにも美麗なその品に心が奪われそうになる。
同時にそれは美術品としても超一流である証。
しかし。
「俺の魔力を充填しておいた。君の法力で解放できるはずだ。貸しておくぜ」
「え?」
信じられない言葉に意識が現実に引き戻された。
「魔力を、充填して、おいた?」
「おうよ♪」
「しかも私の法力で使えるように、と」
「EXACTLY!」
「…………うそ」
力の充填なら聞いたことはある。使い捨ての呪符や呪具もそれに近い形態のものがあるから。しかし、神器を解放できるほどの力の充填などけして信じられるものではない。
ましてや、異なる種類の力で解放できるようになど、今まで耳にすらしたことが無い。
「そんなこと」
……出来るわけがない。
思わず、自らの法力を手に持った神器に流し込む。
すると。
ボウッ。
風扇『ヴァーユ』が淡く発光をはじめ、同時に。
「信じられない」
扇から完全に制御された膨大な魔力が迸った。
「シーファ、君はいったい?」
「家なき子だよ、今はね」
笑いながら頭を撫でてくる。
うっ。
頭を撫でられて不覚にも胸が高鳴ってしまった。
親が存在せずに、年上の人と関わったことが少なかっただけに、このような行為をされると思わず恥ずかしくなってしまう。
「もういいよ、それは。まったく」
思わず照れ隠しにその手を払ってしまう。
「ありがと、借りておくよ」
「あいよ」
シーファは私の礼に笑って応じた。
……。
「BANG♪」
シーファが指鉄砲の形にした手を翳して楽しそうに呟く。
その瞬間、翳した手から強力な魔力弾が発射され。
「HIT!」
遠くに感じた魔族の気配が消滅する。
「うそでしょ」
あまりのことに思わず呆然と呟く。
それはそうだろう。
姿すら確認していない相手に、魔力弾を当て消し去っているのだ。
それも先程から何度も。
私が確認できただけでも既に百発百中だ。
「BANG♪ BANG♪」
さらに遠方に感じた魔族の気配が消滅する。しかも二体同時に。
「HIT! HIT!」
私ですらようやく感じ取れる距離に居た魔族を消滅させたのだ。
もはや反則なんて言葉ですら生易しい。
いくら優秀で天才的な魔術師であったとしてもあまりにも理不尽すぎる程の力だ。
「これでおしまい、と。少なくとも半径五十キロ以内には魔族はいないぜ♪」
返す言葉もない。出来たのはあまりの光景に絶句することだけだ。
河原で魔族を瞬殺したときからかなりの実力者だとは思っていたが、私の予想を遥か大きく裏切っている。
強力などという言葉すら生ぬるい、もはや存在する次元が幾つも違う。
……。
ある意味、この人を敵に回すことが無くてよかったと心の底から思う。
この人を敵に回していたらジパングなど一晩と掛からずに滅びていただろう。
「おー! お兄ちゃんすごーい!」
「だべ、だべ」
子供に褒められて、調子に乗ったのか。
「少年、君にこれを進呈しよう」
「?」
「これは魔術がこめられた魔術符」
胸をそらして宣言する。
「こめられている魔術は俺が開発した、対女性用の脱衣砲さ! 気になるあの子に向かって発動するだけであら不思議。気になるあの子は産まれたままの姿に」
「ヴァーユ」
ヒュパンッ。
魔術符が風の刃に両断された。
「脱衣砲がああああああああああああああああああああああ!」
「不謹慎すぎるよ、君」
よもやまだ二次成長を迎える前の少年に破廉恥な魔術符を渡そうとは。
しかも逃避行の最中に。
……。
まったくもう。
しかし。
「本当に私でも使えるんだね、これ」
ヒュパパパパンッ。
地面に落ちた魔術符がさらに細かく切り刻まれた。
「ヴァーユううううううううううううううううう!」
横でシーファ改め変態が慟哭していたが、当然無視した。
―――宗武―――
……。
いつものように。
「神楽様は?」
神楽様つきの女官に尋ねる。
しかし、女官は顔を辛そうに歪めて首を横に振るだけだ。
「そう、か」
先日の妹様の報告を聞いて以来、食事もとらずに臥せっている。
幸い大結界自体は維持されているものの、結界の強度が目に見えて落ちてきている。
それになにより食事を取っていないというのがすごく心配だ。
既に食事に手をつけなくなってから三日。
「くそっ」
思わず近くの壁を拳で叩く。
これが自らの心を押し殺してまで民を護ろうとする心優しい彼女への仕打ちかと思うと、天を恨みたくなる。
「くそっ!」
そして彼女の心の重石を支えてやれない自分に苛立ちがした。
「くそっっ!」
……。
それは唐突だった。
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!
いつものように修練所に向かう最中だった。
いきなり都の上空に甲高い音が響き渡ったのだ。
しかも、これは
「警報だと!?」
そしてこの警報が意味するのは。
「まさか、魔族の侵攻!!?」
そう、これは姫巫女様の大結界に魔族が接触した時に発される警報だった。
急ぎ、本殿へと向かう。
そこには既に近衛や各部隊の長などが集結していた。
「宗武様!」
「何事だ!?」
小走りで近寄ってきた近衛隊副長に問う。
「結界外に大規模な魔族の軍団が出現しました。現在、討伐隊の編成中です」
俺が来る前に既に討伐隊の編成をしていたとは、……やはり頼りになる。
「ご苦労」
長年自らを支えてきた副長にねぎらいの言葉を掛ける。
「はっ」
「近衛隊も出る。先駆け一番槍となるぞ」
「ははっ」
副長が嬉しそうに笑う。
この男も何だかんだで武人だ。
先駆けは武人の誉れ。嬉しいのだろう。
会話のやり取りをしながらも自らの身に鎧を纏い、愛用の剣を携える。
最後にマントを羽織、控えの部屋を出れば。
「流石に我が隊、府抜けているような輩はいないようだな」
笑って頷く。
眼前には帝都を護る最後の砦にして、ジパング最強と名高い軍団が揃っていた。
全ての戦友の前に立ち、宣言する。
「我が忠勇なる友たちよ!」
誰一人として我が声を聞き逃す様な者はいない。
「この一戦に全てを掛けよ、この一戦に全てを注げ!」
そう、この一戦のために我が身を奮え。
「この戦いは我がためのみに在らず、我らが全てのために在る!」
生まれてより今日まで我らを育ててくれた全てのために。
「今こそ受けた恩の全てを同胞に返すとき!」
父、母、兄、弟、姉、妹、爺、婆、友、朋、その全てのために。
「この攻防の全てで我が国の未来が決する!」
この一戦の全てで我が国の存亡が決する。
「姫巫女様の名の下に」
我らを常日頃から護り続けたお方のためにも。
「我ら帝都近衛隊」
佩剣を抜き掲げる。陽光受けて白銀の輝きが辺りを照らす。
「出るぞ!!」
「「「「「「「「「「おうっ!!!」」」」」」」」」」
我が宣言、同時に全ての戦友から鬨の咆哮が放たれた。
ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。
あー……。
近々、炎の剣を全面リメイクして書き直します。
だから、炎の剣はこれでおしまいです。
続編を期待していてくれた方は申し訳ありません。
作者の性分として、書く気がなくなった物語はプロットが完成していようとどうにも筆が進みません。
だからこそ、すっぱりと炎の剣は書くのをやめることにしました。
魔王や機竜での経験を元に、また炎の剣の流れを使用して新しく書こうと思います。
良ければ、そちらにも目を向けてください。
……尤も魔王と機竜を書いていての事なので、作者自身としても移り気が凄いなぁ、とwww
(EDWは当分更新しません、あれは元々機竜か魔王が終わったら書こうかななどと考えていたネタなので(汗ッ