表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/66

51話 はじめてのどらごんたいじ⑥

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


ずいぶんと更新が遅れたことを謝罪致します……。


さ……、さーーせーーーーーんーーーーーー!!!!

『ヒャッハー!!汚物は消毒だー!!!』

 などという宣言と共に強烈な火炎が迫る。

「「GA!」」

 という鳴き声と共にアポロンとアルテミスが跳躍し回避する。

 アポロンの背に乗っていた私も同時に回避することとなる。

 しかし。

「ほっ。流石は炎の化身といわれるレッドドラゴン、大した威力じゃ」

 とはリースちゃんの声。

『ははは、わかっているなあ、人間B!ならばもっと見るがいいこの恐ろしくかっこよく優しくついでに雄雄しい俺様のブレスを!それ火炎殺菌だ、ファイヤー!!』

 再度強力な灼熱のブレスが迫る。

「くははははは!魅せてくれるのう!」

 リースちゃんの背後の闇が吹き上がり、灼熱のブレスを正面から迎撃した。


 目の前で灼熱の炎と深淵の闇が激突する。

 どちらかといえば闇の方が遥かに優勢だ。

『ぬうううう!この恐ろしくかっこよく優しくついでに雄雄しく勇ましい俺様の炎が散らされただと!ごらあっ!人間B!おまえ抵抗するな、この俺様が優しく、下等で下賎な人間のステーキ(ウェルダン風)に料理してやろうというに!俺様のこの海より高く山より深い慈愛の精神が理解できないのかあああ!』

 理解できません。

「わらわをステーキにするとな?ははは!面白いぞ、トカゲ!ならばわらわもまたその方をレッドドラゴンのステーキ(ミィデアム風)にしてやろうぞ!肉はやはり肉汁がなくてはのう!」

 私はお肉よりお魚の方が好きかなぁ、あっさりしてるし。

『何い!この俺様の真似をするとはずいぶん偉くなったものだな、人間B!俺様の真似をするとは神に唾吐く行為と知れい!喰らえい!バーーーニーーーーング!』

 偉いも何も、私達とあなたは先程知り合ったばかり……。

「はははははは!神など信じぬわ!というより、わらわは神より強いし偉い!ゆえに堂々とお主の真似をしようではないか!その方こそ、わらわに真似してもらえることを誇るがよいぞ!」

 神より偉いって、リースちゃん……。

『ぬぬぬぬ!こう言えば、ああ言う!これだから下等な人間風情は!もう手加減はしねえ!いい人間は、死んだ人間だけだ!というわけで死ねい、人間B!デストローイ!!』

 レッドドラゴンさん(仮)はその巨体からは想像できないほどの速度で迫ると、その身にあった巨大な尾を叩きつけてきた。


 轟音が響き渡る。

「リースちゃん!」

 同時に私の絶叫も。

 しかし。

「案ずるな、ミレイ!この程度でやられるわらわではない」

 なんとそこには片手でレッドドラゴンさん(仮)の尾を掴んでいるリースちゃんがいるではないか。

「お主も接近したのは迂闊じゃのう♪」

『馬鹿な!たかが下賎な人間如き……』

 が!などと最後までは言わさずに。

「ははっ。判決・私刑じゃ♪」

 レッドドラゴンさん(仮)の尾の先を両手でむんずと掴むと。

「……は?」

 リースちゃんはなんとレッドドラゴンさん(仮)の巨体をぶん回し始めたのだ。


 ……。

 本日何度目かの現実逃避。

 ……。

 目の前では私と大して歳の変わらない幼い少女――リースちゃんが高笑いをしながらドラゴンの尻尾を掴んでぶん回している。

「はははは!はははははははは!」

『や、やめれーーー!!』

 最初はリースちゃんの哄笑、お次はレッドドラゴンさん(仮)の悲鳴。

 ……。

「…………(くらぁ)」

 気が遠くなった。

「G、GAU!」

 倒れかけた私を、あわてて背後にいたアルテミスが支えてくれた。

 ……。


 と。

(ミレイよ、お主はお主の探し人のところに行くが良い。こやつのかたをつけたら直ぐにお主の後を追う)

 突然頭の中にリースちゃんの声が響き渡った。

「え?」

(念話じゃ。そう驚くことでもあるまいに)

「え、え?念話?」

(是。魔術を利用した一種の会話方法じゃよ)

「……えと」

(詳しくは後ほど教えてやろう、今はわらわの言うとおりに動いておけ)

「あ、はい。わかりました」

(うむ。詳しい行き先などは毛玉どもに教えておいた、では行け)

「えと、……リースちゃん」

(なんじゃ)

 視線を向ければ、未だに笑いながら巨竜をぶん回している少女と目が合う。

「ええと。……その、ほどほどに、ね」

(…………)

「…………」

 長い沈黙、やがて。

(………………………………………………………………。一応、……覚えておこうかの)

 そう嘯く声を最後に念話が途切れた。

 ……。

 頭に思い浮かんだ言葉は「気苦労」の三文字。

 ……。

 ……なんだかエル様の気苦労が少し分かったような気がします。


 お尻の下のアポロンと背後に控えているアルテミスに声を掛ける。

「行こう。アポロン、アルテミス」

「「GA!」」

 返答は短い鳴き声。

 そのまま踵を返すと、茶褐色の荒野を駆け出した。




 ―――リース―――


「せい!」

 巨竜の体を力いっぱい大地に叩きつける。

 轟音と粉塵。そして苦悶の咆哮が響き渡る。

『ぐおおおおおお!背中が、背中がいてぇええええ!』

 そのまま大地より吹き上がった闇が巨竜の体を縛り付ける。

『なんだ、これは!?この俺様が大地に縛り付けられただとおおお!!なんという、神をも恐れぬ行為!くう!これだから人間は卑怯なのだ!くそう、汚い、ずるい!おのれえ、人間Bめえええええ!!』

「うるさいわい!」

 ドゴンッ!

 拳打一閃。轟音と共にレッドドラゴンの頭部が大地にめり込んだ。

『ぬおおおおお!痛い!想像を絶する痛みが、この俺の繊細な頭に響く!!』

「ええい!いい加減に、ちと黙れ!」

 再度轟音が響き渡り、レッドドラゴンが完全に、のびた。

『…………(ぐてー……)』

 ……。

 仰向けに倒れ、口からだらしなく伸びた舌が実にシュールであった、と言っておこう。


 ……。

「……さてと、じゃ」

 緩やかに浮遊して、レッドドラゴンの腹の上に降り立つ。

「ほう」

 次いで出たのは賞賛の囁きだった。


 目の前でのびたレッドドラゴンの鱗は、たしかに本人が自慢するだけあって、中々に見事なものだった。

 厚さや強度もさることながら、鱗自体が持つ魔力が並外れて高密度なのだ。

 中途半端な攻撃では傷一つつかないだろう。

 というより人間の力では、それこそミレイの母君クラスの実力者でも連れてこない限り話しにならない。


「……ふむ」

 腹部の一際厚い鱗に手を伸ばす。

 と、唐突にレッドドラゴンが目を覚ました。

『はっ!なんか凄い嫌な夢を見たぜ!具体的にいうなら俺のトレードマークである自慢の鱗が剥ぎ取られるという夢!流石にないよな!この恐ろしくかっこよく優しくついでに雄雄しく勇ましく慈悲深い俺様から鱗を剥ごうなどという神をも恐れぬ大罪人は!……いやっ、まいった流石の俺様も悪夢にばっかりは勝てねえや!てへっ♪』

 きっとその身が自由であれば、自分の頭を軽く叩いていたことだろう。

 ……。

「……」

 ぐっ、ベリッ!

 前者は鱗を掴む音、後者は鱗を強引に剥ぎ取った音。

 ……。

『ギョワアアアアアアアアッ!!俺様の腹部になにやら鋭い痛みがああああ!』

 ぐっ、ベリッ。

 ぐっ、ベリッ。

 ぐっ、ベリッ。

 ぐっ、ベリッ。

 ぐっ、ベリッ。ぐっ、ベリッ。ぐっ、ベリッ。

 ……。


 とりあえず。

『こら人間Bやめろ!俺様をさっさと解放しないか!!』

 とか。

『あ!だめ!そこは弱いんだからっっっっ!』

 とか。

『理不尽すぎる!弁護士を呼べええええ!』

 とか。

『逆鱗は!逆鱗だけはあああ!』

 とか。

『も、もう、らめええええええええええええ!!』

 などという悲鳴が聞こえたが、全て無視。

 このレッドドラゴンには屋敷の修繕費になってもらおう。

 くくく、人間(?)大義名分があれば強いのじゃ。

「ほれ♪これで最後の一枚じゃ♪」

 ベリッ。

 ……。

 見事にレッドドラゴンの腹が綺麗になった。


『も、もう、らめえ。こんな姿じゃお嫁に行けないわ』

「……お主の場合は『婿』じゃろうが」

 とりあえず、突っ込んでおく。

 が、もしこの場にリース以外の者が居れば、レッドドラゴンが受けた仕打ちのあまりの酷さに涙しただろう。

 ……。

『……ぐすん。……もう帰りたいよう』

「ん?おお。ならばもう暫く我慢せい。この後、お主の角と牙、それに爪を徴収するからのう。まぁ、その後に解放してやろう♪」

『……』

「……」

『……(ガクガクブルブル)』

「……♪(サムズアップ)」

『た、助けてええええ!ママああああああああああああああん!!』

「はははははははは!」

 ……。


 ……。

 いくら本能が薄まろうと、リースはまさしく真性の悪魔だった。


 ……。

 乙!



 ―――ミレイ・フォン・バレッタリート―――


 茶褐色の荒野を超高速で駆け抜けていく。

 道中に障害物らしい障害物はない。

 あっても二匹がそのたくましい剛脚を発揮する見せ場にしかならなかった。

 しかし、リースちゃんの下を離れてから暫く。背後からレッドドラゴンさん(仮)の悲鳴らしき咆哮が聞こえた気がした。

 ……。

「……リースちゃん、ほどほどにしといてくれるといいんですけど」

 下のアポロンや横を走っているアルテミス、肩の上のアテナに視線を向ければ。

「「「……」」」

 三匹とも揃って視線を逸らしてしまう。

「……うう、なんか心配になってきました」

 まさに気苦労の三文字が心に重く圧し掛かってくる気がしてならない。

「うう……」

 ……。

 この時、人間界のとある屋敷では常日頃から苦労過多な風の天使がくしゃみをしたが、それをミレイが知ることはなかった。



 周囲の光景が荒野から、褐色の巨大な岩石群ばかりになってくる。

「……」

 両手を組み、祈りを捧げる形を作る。

 ……サンリおじさんがどうか無事で居てくれますように。

 リースちゃんが死んでいないと言ってくれている以上、今はそれを信じるしかない。

 と、いきなり二匹の足が止まった。しかも、それだけではなく。

「「GAAAAAA!」」

 赤と青の魔獣が低いうなり声を上げる。

「……アポロン?アルテミス?」

 しかもそれだけではなく。

「LIIIIIIIIIIIIIII!」

 肩にとまっていたはずのアテナが一瞬の輝きと共に、頭上で巨大な白銀の巨鳥に変身した。

「アテナまで……」

 ……。

 真紅の魔狼、群青の王虎、白銀の神鷹。

 強大な力を秘めた巨大な三匹の獣が自らの主を護る様に、その身に秘めた力を解放する。

 ミレイは知らぬが、共に魔王とまで称された大悪魔の力を受け継ぐ魔獣と、天上の主神の力を受け継ぐ神器を基に創り上げられた神獣だ。少なくとも、人間界では最強に位置する力である。


 ……。

「……え?」

 自らの口をついて呆然とした声が出る。

 三匹の低い威嚇の泣き声が木霊する中、眼前の空間に歪みと共に竜の軍勢が顕現した。

 赤竜(レッドドラゴン)を始めとし青竜(ブルードラゴン)黄竜(イエロードラゴン)翠竜(エメラルドドラゴン)紫竜(アメジストドラゴン)黒竜(ブラックドラゴン)白竜(ホワイトドラゴン)金竜(ゴールドドラゴン)銀竜(シルバードラゴン)白金竜(プラチナドラゴン)

 今まで伝説でしか聞いたことのないような竜達が次々と現れていく。

「え?え?」

 目の前に現れた竜達は、私を包囲するかのように目の前で徒党を組んでいき……。

 やがて、咆えた。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!』

 目の前の竜達が、いっせいに。


 余りの音量に、その音がなんなのか理解できなかった。

 大音量の咆哮を浴び、その五秒後ぐらいにようやくこれが竜達の鳴き声であったことを理解した。


 今の咆哮で間違いなく大地が揺れただろう、それほどの音だった。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!』

 竜達の威嚇するような咆哮は今なお続いている。

 睨むような目つき、鋭意的な意思のこもった咆哮。

 間違いなく、その咆哮には敵意が込められているのが分かる。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!』

 再三、この狭い世界に竜達の咆哮が木霊する。

「ひっ!」

 思わず悲鳴を上げてしまう。

 いくらアポロンやアルテミス、アテナに護られていようと、これほどの竜達の咆哮を身に浴びれば思わず恐怖が湧き上がってしまう。

 むしろ、僅か十歳の少女として、恐怖で我を失わなかっただけ褒めてもいいぐらいだ。


 と、軍勢が二つに割れ、群れの奥から一匹の巨竜が姿を現した。

 その巨体は、ただでさえ体の大きな竜達の中にあって、なお一際大きな体をしていた。

 他の竜達を圧するような巨体に、全ての属性を持つかのような虹色に輝く鱗。

 その虹色の竜は私と目を合わせると。


『始めまして、になるかな、人間の少女よ。わしの名はアーカーシャ。ここに住む竜達の、……まぁ、まとめ役のような者だよ』


 と挨拶をしてきた。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ