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48話 はじめてのどらごんたいじ③

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


氷PTが作りたい……


ってゆーか、グレイシアがほしいーよー!!

「お!久しぶりだねぇ、ミレイちゃん」

「はい、お久しぶりです!メイおばさん」

 目の前でがたいのいい女の人が笑っている。

 名前をメイさん。

 私が以前働いていた宿の女将さんだ。

「今日は、なんの用だい?」

「お昼を食べに来たんです。こちらは私の友達のリースちゃんです」

「へぇ、ほほ~」

 メイさんはニヤリと笑うと、私の頭をぐりぐりと撫でる。

「お前さんのお母さんが元気になったと聞いたときは信じられなかったが、今の表情や生活を見る限りまんざら嘘じゃなさそうだねぇ」

「はい!お母さんも元気ですよ」

「そうかい、そうかい」

 と優しそうに笑うと、今度はリースちゃんの頭をぐりぐりと撫でる。

 リースちゃんは微妙に迷惑そうな表情をしているが、口はつぐんだままだった。

「あいよ、まずは席に座っときな」

「はい!」

「……うむ」


 食堂はピークを過ぎていたこともあって、簡単に座る場所を確保できた。また丁度空いた時間だったのか、メニューを注文したらそんなに時間を掛けずに持ってきてもらえた。

「あいよ」

 ……。

 私が注文したのはお肉やお野菜、それに卵を挟んだ数種のサンドイッチ、それにキノコのスープと茹でたウインナー。

 リースちゃんは、魚や羊肉、野菜を閉じ込めて焼いたグラタンとジャガイモのサラダだ。

 後は、メイおばさんが私達にブドウの搾り汁をサービスしてくれた。

「ほほ、大した腕じゃ。風にも劣らぬ」

「でしょ!メイおばさんの料理は美味しいです!」


 食後の一服最中、メイおばさんが話しかけてきた。

「ミレイちゃん、この後時間はあるかい?」

「え?はい大丈夫ですけど……」

「うちの宿六がねぇ、山に行ったまま帰ってきてないんだよ」

「サンリおじさんが?」

「ああ。最近、畑に害獣が出るとかで、一昨日の夕方から山のほうに行ってるんだよ。それで予定なら今日の朝一で戻ってくるはず、だったんだけどねぇ……。どこをほっつき歩いてるのやら……」

 困ったようにため息をつく。

「あ、もしかして……」

「そういうこと」

 にやりと笑うと続ける。

「ミレイちゃんなら畑の場所も知っているし、信用も出来る。何より、うちの宿六の顔もしっているからねぇ。どうだい、一つ様子を見に行ってくれないかい?」

「……えと」

 ちらりと連れ合いの顔を確認すると。

「構わぬ」

 リースちゃんが苦笑しながら頷く。

「当初の予定から外れている以上、今更用事の一つや二つ増えた所で問題はないわ」

「……うん。…………分かりました、おじさんは私達が様子を見に行きます」

「そうかい」

 再度、にかっと笑うと。

「頼んだよ、今度ミレイちゃんのところに差し入れでも持ってってあげるからね」

「はい。お待ちしてます」


 ……。

「ちょいと、リースちゃんといったかい。ほんの少しいいかい?」

 会計は、おじさんの様子を見に行くということで只にしてもらった。

 そして、いざ行くぞ、といったときにメイおばさんがリースちゃんを手招きしたのだ。



 ―――リース―――


「何用じゃ?」

 ……ふむ。

 メイと呼ばれている女の顔からは僅かな緊張と、決意が読み取れる。

「お前さんはミレイちゃんの友人、でいいんだよね?」

「……。何が言いたいのじゃ」

「…………お前さん、何者だい?」

 ……ほう。

「これでも、ここで宿を開く前は、旦那と一緒に冒険者をやっていたんだ。魔術師や神官も見慣れているし、中には一時パーティを組んだ事だってある」

「……」

「これは私の長年の経験から来る感なんだけどね。お前さんからは魔術師のような匂いがするんだよ、それも極めて危険な感じの……」

「……」

「ミレイちゃんがお前さんを信頼しているから、私も信じたい。でも、万が一でもあの子には……」

 その先は言わずとも理解できた。

 この女はミレイの事が心の底から心配なのだろう。そして、わらわから僅かにでも感じ取った危険性を確認しているのだろう。

 ……なるほど、の。

 先程の表情、緊張と決意はそのせいか。

 目を凝らせば、その身の内側には僅か以上の恐怖が見て取れた。

 ……。

 しかし、大したものじゃ。わらわの正体を看破したわけではないのに、その危険性を肌で感じ取るとは……。

 そしてその感じた恐怖を押し殺してでも、わらわに声をかけようとは……。

 ……。


 くくく、と軽く笑うと。

「案ずるな。その方の考えているような危険はおこさぬよ。お主の考えている通り、わらわは魔導の徒じゃ。されど、その力はあの娘を護るために使うことを、お主に約束しよう」

 悪魔の約定。

 自らの言をたがえぬという、絶対にして不可侵たる誓い。

「「……」」

 僅かな間、お互いの間で沈黙が続く。

 ……。

 やがて。

「信じるよ、ミレイちゃんがあんな笑顔をしていたんだ……。ミレイちゃんを頼むよ」

 わらわの前に膝をつくと、視線の高さを合わせる。

「私達には子供がいないんだよ。だから……ミレイちゃんには笑っていて欲しいのさ」

「……」

「……頼んだよ」

「…………。………………我が真名に誓おう」

「……ありがとう。……今度、また食べにおいで、沢山サービスしてあげるからさ」

「……楽しみにしておこう」


 ……。

「何を話していたんですか?」

 ミレイが聞いて来るが。

「なに、大したことではないよ。そうじゃのう、言うのならば……。ちょっとした約定、かのう……」

「……??」

「くく、お主は気にせんでよい」



 ―――ミレイ・フォン・バレッタリート―――


 ……?

 リース様にはなんだかはぐらかされてしまった様な気がする。

「ゆくぞ、ミレイ。その畑とやらはお主しか知らぬ。ゆえに、早々に案内せい」

「うー……。分かりましたよぉ……」

「くくく、そんなにいじけるな」

 リースちゃんが笑いながら私の頬を摘んでくる。

「むにー」

「くくく♪」

「ふにー!」

「くはははは。ミレイ、お主中々に面白い顔になっておるぞ♪」

「うにー!!」

「ははははは!」

 リースちゃんの意地悪!



 周囲がすごい速さで後方に流れていく。

 そして、お尻の下にはふかふかとした紅い毛がある。

「ぬお!っとと、もっと大人しく走らんかい!」

 横からは、青い毛をお尻の下にしたリースちゃんの声が聞こえる。

 同時に。

「「GAU!」」

 と元気のよい、咆哮も響く。

 ……。

 いつかのように、巨大化したアポロンとアルテミスに乗って移動しているのである。


 ……。

「つまり、山中にあの女とその夫が所有している畑が多数あるのか」

「はい。そこではブドウやクランベリーとかを育てているんです」

「……ほう」

「先程、メイおばさんが出してくれたブドウの搾り汁もそこから作っているんですよ」

「なるほどのう、あれは中々に美味かったのう」

「はい。…………でも、メイおばさんの話しによれば、最近その作物を狙って害獣が出ているらしいんですよ」

「……」

「それで、それを追い払うために、サンリおじさんが一昨日、罠や武器を持って畑に向かったんですけど……」

「そうか。……それで、今回の話に繋がるわけか」

「……はい」

 おじさん、無事だといいんだけど……。

 一応、メイおばさんもサンリおじさんも宿屋を開く前は冒険者兼傭兵のようなことをやっていたらしい。

 お母さんもその時に知り合ったらしく、二人の人間性とその腕の方は信用できるとは以前に言っていた。

 ……。

 ……。

 ……。

 ……どうにも、心中の不安が晴れない。むしろどんどん曇っていく。

 ……。

「二匹とも、もっと早く走れる?少しぐらい揺れが強くなっても我慢するから……」

 返答は。

「「GAU!!!」」

 という力強い鳴き声と揺れの増加、そして周囲の景色がさらに高速で後方に流れていくことと。

「おわわわっ!っんが!」

 という、舌を噛んだようなリースちゃんの苦悶の呻きで返された。


 アポロンとアルテミスが速度を上げてから暫く、リースちゃんが真剣な様子で声を掛けてきた。

「ひれいほ、ひたいはひがいにひんこくはもひれん……」

「……ぷっ」

 思わず笑いがこみ上げてしまった。

 ……。

 リースちゃんが手を暫く口に当てた後。

「ミレイよ!事態は意外に深刻かもしれん!」

 と言い直してきた。

 ……。

 ……私の笑いを涙目で睨みつけたリースちゃんの顔が、以外に可愛らしいものだった。


 笑いをなんとか抑え、質問投げるが。

「いったいどうしたんですか?」

「…………濃い獣臭、それに………………………………僅かばかりの血の臭いじゃ」

 本格的に危険な返答が投げ返された。

「……それに…………この獣臭は覚えがある。たしか…………」

 リースちゃんが記憶を探るように目を瞑る。

 ……やがて答えを見つけたのか、ポツリと呟いた。

「………………ドラゴン種の吐息(ブレス)じゃ」

「え?」


 先程の笑いの雰囲気など完全に霧散している。

 私の願いを受けてアポロンとアルテミスが先程よりなお早い、超高速で山道を走り抜ける。

「ドラゴン種って、ロックドラゴンみたいな……?」

「否。あのような端の端の端にようやくぶら下がっているような末端なものではあるまい。恐らくは本格的な血筋に連なるものであろう」

「っ、そんな」

 リースちゃんはこちらを見ると。

「そのサンリという男の命…………、最悪の事態を考える必要があるかもしれん」

 と、無表情で声を掛けてきた。

「もし、わらわの推測どおりドラゴン種が居たなら、もはやその男は絶命している可能性が濃厚じゃ」

「そ、そんな」

「ドラゴン種も種によってその危険性が変わるが……、もしもブラックドラゴンに連なるものであれば、…………………………諦めよ」

 そして、いったん言葉を切った後に。

「ミレイ、お主はここで待っておれ。わらわが先行して様子を探ってこよう」

 と声を掛けてくれる、でも。

「わ、私も行きます。おじさんが……」

 心配です。

「危険じゃぞ」

「っ……、それでも!」

「……」

 リースちゃんが不思議そうな目で見つめてくる。

「危険じゃと分かっていて、なお進むのか?そのような他人のために?」

 言葉ではなく、仕草で、頷きで返す。

「……」

 リースちゃんは静かに目を閉じると、僅かに考え込むように黙り込む。

 やがて。

「……よい。ついて参れ」

 それだけ言うと、その可愛らしい顔には苦笑いのような、呆れのような表情が浮かんでいた。



 ―――リース―――


 目の前でミレイが頷く。

「……」

 他者のために自らの命を危険に晒す。

 魔界では愚かとしかいえないような行為。

 しかし。

 ……ミレイの母君とあの風は、ためらうことなくサマエルの相手をしていたのう。

 ミレイの母と名乗った白髪の魔術師と常時冷静な風の天使を思い出す。

 あの二人の実力は初対面の時には分からなかったが、相手はかのサマエルである、危険が無いわけがない。なのにあの二人はためらうことなく自らの主のために神の毒とまで謳われた大悪魔と相対したのだ。

 ……ふむ。

 永い生の中で、一度も下したことのない判断を下す。

「……よい。ついて参れ」

 ……力無き者を護るは、力在る者の義務。

 そのような思考をするなど、永劫の生涯で始めてである。

 ……。

 それに、此度の件を依頼したあの女将に誓った言葉がある。

「その力はあの娘を護るために使うことを、お主に約束しよう」

 と。


 ゆえに。

 誰にも聞かれないような声で、そっと呟いた。

「誇るがよいぞ、ミレイ。原初の悪魔(わらわ)がヒトを護るとゆう誓いをするなぞ、……生涯にあるかないかの出来事じゃ」




 ……。

 余談であるが、これはミレイとリースが宿屋に向かうまでに交わされた会話の一幕。

「リースさ、さ、さ……。なんて呼べばいいんですか?」

「呼び捨てでかまわぬよ」

「……でも。年上の人ですし、何よりシーファ様のご友人の方ですから……」

「かまわぬ」

「……で」

「かまわぬと言う。わらわとお主は主従ではない。わらわとお主は先日会うたばかりの他人じゃ。そこには何の決まりも約定も存在せぬ」

「…………たしかに、そうですが……」

「……それに、その、……なんじゃ。人の世界では会うたばかりの者とは、まず『友人』とやらから始めるのじゃろう?」

「人の世界?」

「…………気にせんでよい。それで、まずはお主とわらわは友人からがスタートじゃ。それに、わらわは既にお主を何度も呼び捨てで呼んでおるぞ」

「う、うー……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「っ!」

「?」

「分かりました!」

「ほう?」

「では、リース『ちゃん』で!」

「んなあ!!」

「うん!決まりです!」

「ま、待つのじゃ、ミレイ!いくらなんでも『ちゃん』は……」

「……ダメですか?」

「う!そのような目で見られても、のう……」

「……ダメですか?」

「…………わらわとしては、やはり『ちゃん』は、のう……」

「……」

「……」

「……ダメですか?」

「ぬっ。う、ぬ、ぬ、ぬ……」

「……(ジー……)」

「ぬ、ぬ、ぬう……」

「……(ジー……)」

「……」

「ダメ?」

「ぬあああああああああああああ!!!」



 本日三度目の絶叫が響き渡ったという。

 ちなみに、結局のところは。

「もう良い、好きにせい」

 と、涙声で呟いたり、呟かなかったり……。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


おねぇちゃんは甘々ですwww

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