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47話 はじめてのどらごんたいじ②

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。


なんとなく早めに投稿してみた……。


ついでに予約掲載も利用してみたww

「う、うー……」

 顔が真っ赤だという自覚がある。

 ついでに言うなら、自分と手を繋いでいる娘の対応にも困る。

 今まで人間など、ただのゴミか、小腹が空いたときの食料か、もしくは戯れに命を奪うべき存在としか見ていなかったのだ。

 事実、今までに殺してきた人間やその魂を喰らってきた人間の数など、数えることは不可能だろう。

 ……だからこそ。

「う、うむ。ミレイよ、手を離さぬか?」

 自らに向けられる真っ直ぐな好意に戸惑いを感じてしまう。

 先程などは思わず悲鳴を上げてしまった。

 思い出すだけでも顔から炎が噴き出そうになる。


 ……。

 先程、「ミレイが手を繋ごう」と言ってきたのだが、どうにも断りきれなかった。

 それで手を繋いだのだが……。

「嫌ですよ♪リース様は嫌ですか?」

「ああ、うむ……。その、嫌というわけではないのじゃがな。その、なんだ、恥ずかしいというか、困惑するというか、慣れないというか、なんというかのう……」

 むにゃむにゃと口の中で言葉が混雑する。

 ……。

 なぜじゃ!なぜこうなったのじゃ!?

 心の中で激しく独白する。

 わらわはこの娘に使い魔を贈っただけなのに!

 ……。

「な、なぜじゃ!なぜこんなことになったのじゃああああ!」

 手を繋ぐという親愛の行為、向けられる曇りの無い純粋な好意。

 ……。

 思わず、再度の絶叫が町に響き渡った。



 ―――ミレイ・フォン・バレッタリート―――


「――♪」

 軽やかなリズムが宙を舞う。

 ……。

 アテナをくれたことも嬉しかったが……。

 何よりも自分と歳の近い存在に近親の念を覚える。

「――♪」

 思わず、口から鼻歌などが漏れてしまうも止められない。

 リース様は先程の絶叫が恥ずかしかったのか、顔を紅くしたまま俯けてしまった。

「アウッ」「ミィッ」「キュィッ」

 新たに加わったアテナを加えて、アポロンとアルテミスも私の鼻歌に合わせて鳴いている。

 順にアポロン、アルテミス、アテナ、だ。

「――♪。……あっ」

 町のメインストリートを歩いて暫く、少しばかりいいものが視界に入り込んできた。

 ……。


「おじさん!これ、二つください!」

「あいよ!」

「片方をソースの辛さ控え目でお願いできますか?」

「まかせなって」

 以前に、シーファ様とオルゴールを買い戻すために傭兵ギルドに行く途中で世話になったケバブの屋台が今回もあったのだ。

「これ、お代です」

「あいよ、確かに!」

 代金の銅貨を受け取ると、屋台のおじさんは、にっと笑い。

「またのご来店を」

 と、笑顔で送り出してくれた。


「リース様、どうぞ!」

「……ああ、うむ。」

「これ、美味しいんですよ♪以前、シーファ様に奢ってもらったんです!」

「……そうか」

 ケバブを受け取るが、どうにも反応が鈍い。

 俯いたまま渡されたケバブをもそもそと食べる。

 ……?

 ちらりと前髪に隠れた顔をのぞきこんでみれば……。

「……リース様、お顔が真っ赤ですよ」

「……#○*P+?☆L×■!!」

 頬は染めたように赤く、瞳はグルグル状態だった。



「どれにしましょうか?」

「……」

 傭兵ギルドの建物内、そしてその依頼掲示板の前。

 一応先程受付で、傭兵としての登録を済ませてきた。

 どうやらシーファ様にくっついてここに来たことを受付嬢の人が覚えていたらしく、案外簡単に登録してくれたのだ。

 ギルド内にいた人も何人かめんどくさそうな目をしていたが、以前シーファ様に脅されたのを覚えていたらしく特に文句を言ってくることはなかった。


「やっぱり討伐系かな?」

 依頼掲示板を見て、思考する。

 雑事系、採取系共に多々あるが、依頼の報酬金額を考えると討伐系になってしまう。

 私のランクはシーファ様のパーティメンバーということでランクDにしてもらったのだ。

 シーファ様がそのランクになる要因だったロック・ドラゴンの討伐に私も関わっていたからかギルド側も納得してくれたのだ。

「近場を選ぶのなら、山中での薬草採取や鉱石採取もあるけどなぁ。雑事系も悪くは無いんだけどなぁ……」

 ……古くなった家屋の解体とか、数をこなせばそこそこの大金になりそう気もするし。

 ……。

 しかし、一度で大金を得たいならやはり討伐系になってしまう。

「……どうしよう」

 一応候補としては、サイクロプスと討伐とイービルプラントの殲滅、それに少し危険があるけどマンティコアの討伐なんてものもある。

 一応、お母さんとエル様の話ではアポロンとアルテミスは相当な力の持ち主ゆえ、そう簡単に負けることはないということだが……。

 足元のもこもことした毛玉に目を向ける。

 ……。

 はぁー、なごみますー。

 可愛らしい子犬と子猫に、思わずトリップしそうになる。

「……うん。やはり、そんな危険なものじゃなくてもいいよね!」

 雑事系の家屋の解体に決定!

 ……。

 ちなみに。

「……」

 リース様は未だにうつむいたまま沈黙していた。

 どうにも、先程顔を覗き込んだのが止めになったらしい。

 ……。

 びりっ。

 依頼書を掲示板から剥がす。

「これをカウンターにもってけば……」

 いいんだよね、と呟こうとしたときだ。

「おいおい、ここはガキの遊び場じゃねえんだぞ!」

 と後から非友好的な声が掛けられた。


 見れば数人の男の人達が立ってた。

 皆、顔を真っ赤に染めて、ふらふらしている。

「ガキは帰ってぇ、寝てなぁ!」

「そうだ!そうだ!」

 男の人たちの口からは異臭がする。

「わ、私は一応、このギルドで登録をしてあります。あなたに文句を言われる筋合いはありません」

 少し怖かったが勇気を出して返事をする。

 しかし、返ってきたのは。

「ああ!!」

「剥くぞ、ガキィ!」

 という怒声だった。

「だ、だから、私は……」

「俺達傭兵を舐めてんのかぁ、ガキィ!」

 と、人の話を聞こうとしない。

 ……。

 周りから。

「あいつたしか最近Eランクに降格したやつらじゃ……」とか。

「ああ、あんな女の子に絡んで……」とか。

「あいつら最近、依頼の失敗を重ねすぎてギルドの使用を停止されたはずじゃ……」とか。

「昼間から酒飲んで……」などという言葉が聞こえてくる。

 だが、それだけだ。

 誰一人助けてくれようとする人がいない。

 ギルド職員も困ったようにおろおろしている。

「ガキは帰ってママの腕の中で震えてりゃいいんだよぉ!」

 先頭の男の人はいきなり腰に下げていた剣を抜くと、大きく振りかぶった。

 ここに来て流石に回りがざわめく。

 周りのギャラリーからも「おい!やめよ!」という声が飛んで来るが。

「むかつくんだよぉ、ガキィ!」

 と叫び、剣を勢いよく振り下ろしてきた。

 ……。


 ……。

 ……。

 金属同士の激突音が響き渡るが、……私に痛みはない。

 ……。

 そっと目を開けると。


「…………まぁ。わらわが防がずとも、その刃がミレイに届くことは一生無かっただろうがのう」

 リース様だ。

 リース様がその背丈を超えるであろう白銀の巨剣で男の人の剣を防いでいたのだ。


「わらわのような者が人に善悪を説くことになろうとはのう……、夢にも思わなんだわ」

 リース様は僅かに嘆息すると、ひくひくと鼻を動かす。

「……この臭いは、酒か。…………まぁ、酒を飲み、酔おうと喚こうとその(ほう)の勝手じゃ。それに、主のランクがミレイより下ということでいらいらする気持ちもあろう。じゃが、年端もゆかぬ小娘に剣先を向けるなど、傭兵としての是非を説く前に己の人としての是非を問え」

 リース様の体から冷たい圧力が放たれる。

 シーファ様がかつて傭兵ギルドで放ったものと似ているが、それよりも遥かに冷たく禍々しい。

 シーファ様を穏やかな夜とするなら、リース様は凍える闇だ。

「その方の非礼、生死の狭間にて猛省せよ」

 リース様の巨剣とそれを握っていた腕がぶれる。

 次の瞬間。

 轟音と共に酔った傭兵達の体が床と水平に飛び、レンガの壁を何枚もぶち抜いて外に投げ出された。

 私も含めて、場が完全に沈黙した。


 ……。

「なんじゃ、お主らもやるのかぇ?」

 思わず剣を抜いていたギルドの職員らしき人に極寒の声で是非を問う。

 今のリース様は、以前のシーファ様のようにその威圧だけで相手を圧している。

 剣を抜いた男の人たちや、周りの成り行きを見守っていた人たちが恐怖に顔を引きつらせている。

「やるのなら早々にかかってまいれ、やらぬのなら外に飛んだゴミを片付けよ」

 それだけ言うと、巨剣を自らの影の中に沈めた。


「行くぞ、ミレイ」

「え?」

「ここで稼ごうという話は無しじゃ、どうにも気分が乗らぬ」

「……でも」

「よい。山などに行き宝石や金銀を集めることにする」

「……あ、はい」

 ここら一帯は、鉱石等の算出が多い。多分、大丈夫だろう。

「それを商業ギルドとやらに持っていけばよいさ」

 それだけ言うと、リース様は私の手を取り傭兵ギルドを出てしまった。



 ……。

「リース様、ありがとうございます……」

「ん?なんじゃ、藪から棒に?」

「先程、助けてくれたじゃないですか」

「……ああ。わらわも不思議じゃ。お主が危ないと思うたらなぜか体が動いていたのじゃ」

 リース様がしきりに首を捻る。

「うむ、なぜじゃ?あそこでわらわが防がずとも、そこの毛玉や鳥が護ったはずなのじゃがのう……」

 不思議じゃ、不思議じゃなどと呟いている。

 自分の行動が理解できないようで、しきりに首を捻っている。

 その姿は、自らの感情を理解できない赤子のようで……。

 思わず……。

「リース様、ありがとう……」

 ぎゅっとその細首に抱きついた。



 ―――リース―――


 ミレイが首に抱きついてくる。

 だが、先程のような羞恥が湧き上がってこない。

 ……なぜじゃ?

 それがちっとも嫌じゃない。

 そして、またその感情が理解できない。

 先程、思わずミレイを助けてしまったことも理解できぬのなら、今ミレイに抱きつかれてそれを恥ずかしく思わない自分も理解できない。

 ……。

 原因は分かっている。

 恐らくはあやつがわらわに継承させた、あやつの持つ「異端」が原因であろう。

 あやつの持つ、「悪魔らしくない」感情と本能……。


 ……。

 だが、それを嫌とは思わない。………………思えなかった。

 わらわに抱きついてきているミレイをそった抱きしめ返す。

「ミレイ、わらわのことはリースと呼べ。様は不要じゃ」

「え?」

「永劫の時の中、このような生もまた一興……」

「……リース様?」

「様は不要じゃ」

 思わず苦笑すると、殆ど位置の変わらぬミレイの頭を軽く小突く。

「あうっ」

「くくく」

 ひとしきり笑う。

 …………なに、このような生もまた一興……。


 以前魔界に居たときに比べ、あやつの顔は遥かに活き活きとしていた。

 魔界や天界の住人は基本その寿命が存在しない。

 滅ぼされたりすることはあれど自然死は存在しないのだ。

 ゆえに自ら進化や成長をしようという本能がない。

 だが……。

「なるほど、これが人の感情か……」

 限りある生を謳歌し、生きる今を常に感じている人間はなんと素晴らしいことか。

 そして、その人間の持つ喜怒哀楽は永劫を生きるわらわにとって、なんと眩しく映ることか……。

「…………。ルシファーよ、わらわもまたこの世界で生きよう(・・・・)……」

 思わず誰にも聞き取れないほどの小声で囁いた。

 ……。


「リース様!」

「様は要らぬという」

 再度その頭を小突く。

「あうっ」

「で、なんじゃ?」

「あうう……、あ、はい。ええと、近くに美味しい食堂があるんですが行きませんか?そろそろお昼も過ぎますし、いまなら空いているかもです」

「……ほう」

「以前私が働いていたところなんですけど……」

 お店の人と知り合いなんです、と恥ずかしそうに笑う。

 それを見て、くくと軽く笑うと。

「良いのう、案内せい。ただし、騒がしいのは願い下げじゃぞ♪」

「あはは、それは分かりませんよ」

「言うのう、くく。まぁ、よい。では行こうかの」

「はい!」

 ミレイに手を引かれるままに歩き出した。

 二人で手を繋ぎ、同じ歩幅で……。



 いつの間にか、身を蝕む虚無感が消えていたのが分かる。

 そしてそのことに、また驚く。


 あぁ、このような生も、…………悪くないのう。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


リリスがデレました。


というより、ドラゴン出てこないし……。


……。


……。


……。


……。


す、すいませーーん!次話から本格的にドラゴン退治に入るんで勘弁してください m(_ _)m


……多分。

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