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33話 思い出を求めて④ - 口は災いの元

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。

 ――特定・跳躍。

 ブゥンッ。

 視界が明けると、自分の部屋にいた。

 空間転移で自分の部屋に跳んだのだ。


 本来は、この屋敷に厳重に張り巡らされた結界がそれを阻むのだ、が。

 結界を構築する段階で、結界内の構造術式にバックドアを仕込んでおいたのだ。

 それも複数。

 一応、俺の魔力でのみ干渉できるようにガチガチにプロテクトをかけてあるし、定期的にバックドアが解体・再構成されるようにしてあるため、エルでも気づかないだろう。

 もし気づいたとしても、これらをどうにかするには一度、屋敷の結界を全て解体・再構築しなければいけない。

 まぁ、これらは術式構築の技量がエルより遥かに高いからこそ出来る裏業だが。

 一応補足しておくと、エルの術式構築の技量は三界でもトップクラスであり、けして低いというわけではない。


「本日は株式会社ニート運営、空間転移にご同乗頂きまして、まことにありがとうございます。本転移はここが終着駅となります。皆様お忘れ物のないようにお気をつけてお帰りくださいませ(以下繰り返し……」

 ……。

「何してるんですか、シーファ様?」

 俺のアナウンス(?)にミレイが不思議な顔で聞いてくる。

 ……。

 ガクッ。

「ボケに突っ込んで貰えないのは、余りにも悲しすぎる……」

 思わず、力なく突っ伏した。

 目からしょっぱい汗が流れたのは秘密の方向で……。



 ……。

「シーファ様、ありがとうございました」

 ミレイが頭を下げる。

 ……できた娘だ。

 思わず微笑すると、ミレイの頭をそっと撫でる。

「おう、…………何だかんだで、お前らは背負うと言っちまったかなら」

 後半は聞こえないように呟く。

「え?」

 ミレイが不思議な顔をする、が。

「……何でもない。早く行って、スターシャを喜ばせてやれ」

「はい!」

 元気良く返事をすると。

「行ってきます。…………シーファ様、大好きです♪」

 そう言って、部屋を飛び出していった。

 ……ったく。

 本当に、可愛いやつだ。



 ミレイが部屋を離れていったのを確認すると、厳重に結界を張り巡らせ、その上で影の異空間に入る。

 侵入者対策に異空間内の路を無限ループさせた挙句、囮の部屋を何部屋も用意し、さらにそれぞれの術式に暗号化処理を施し、その上で異空間内に異空間を作る、二重異空間を構築するという徹底ぶり。

「よし!」

 思わず汗をぬぐう(ふりをする)。

 せっかく爺さんとの取引でお宝が手に入ったのだ。

 エルに見つかって処分されようものなら、冗談抜きで心が折れる。


「いざ!」

 気合を入れ、そっと、お宝を手に取る。

 それは、一冊の本だった。

 ……。

 タイトルは………………………………、『美少女の躾方 ~やめて!ご主人様!~』



 以下、シーファと爺さんの間で交わされた取引。


「こ、これは!」

 思わず声を上げる。


 題『美少女の躾方 ~やめて!ご主人様!~』

 作者:団鬼七。


 こ、これは!鬼才、団鬼七先生の著書。

 濃厚なエロシーンと実体験を元に書かれた描写は非常に高いクオリティーで、その手の人にはたまらない垂涎の一冊。

 以前、偶然にもこの先生の著書を一冊手に入手し、読んで以来ファンになった。

 だが……、しかし……、この先生の著書は市場には滅多に出回らないはず!

 なぜなら。

「局が処分する前に、知り合いの伝で流してもらったのじゃよ」

 ふふふふ、と爺が怪しげに笑う。


 そう、余りにも濃厚な描写のため、出版しても直ぐに発禁本になるのだ。

 過去には、発売後三十分で当局が発禁本として市場から回収していった、なんて事もあったぐらいだ。

 手に入れるには、神出鬼没のごとき発売日を捉えるか、爺さんのように関係者から回してもらうしかない。

「他にも、この著者の出版物を取り揃えておるぞ♪」

 ……。

 爺さんが(俺の目には)輝いて見えた。


 パンッ。

 お互いの右手でハイタッチをし、そのままグーサインをする。

 漢同士に、言葉は不要。


「その話、お受けいたしましょう、ご老人」

「有難い」

「「……」」

「「………」」

「「…………」」

「お前も悪よのう、越○屋よ。くく」

「いえいえ、お代○様程では。ふふ」


 以上回想終了。



 ……。

「けへっ、けへっ、けへっ」

 口から珍妙な笑い声が漏れるが気にしない。

「げへへへ、いいのう、いいのう♪」

 久々の猥本に、押さえが効かない。

 いくら、悪徳を実行する本能がないとしても、基本の三大欲求ぐらい存在する。


「くく、たまらん!」

 思わず、鼻血が吹き出る。

「くくく、人間の発想力というのには毎度毎度驚愕させられる」

 ○○○を××して、△△を□□□。――――を※※※※※※※で~(以下略。

 実に過激な内容だ。

 くくくくっ。

 団鬼七先生の文章には毎度毎度、脱帽させられる。

「これが、実体験を元になんだから、……………………素晴らしい!」

 天界に住まう主神なんかより、遥かに尊敬させられる。

 ……ふむ。

「くく、俺もエルとの体験談でも回顧録にして出版ギルドに持ち込むかな?」

 思わずポツリと一言。

 ……。

 一応、言っとこう。

 この言葉は本心ではなく、調子に乗ったシーファがほぼ無意識に呟いた言葉だ。

 だが……。


「…………………………………………………………………………………………ご主人様」

 !!!!

 絶対零度の声が響く。

 それはここで聞こえてはいけない声だ、絶対に。

 全身が硬直する。

 ……。

 例え石化の術法を受けたとしても、これほどきれいに固まりはしない。

 その硬直具合はさながら時間停止を受けたかのよう……。

 全身から、ぶわっといやな汗が吹き出る。

 ギギ、ギギギギッ。

 全身を軋ませながら、…………振り返る。

 そこには。

 ……………………………………………………………………笑顔をした、修羅がいた。


「…………………………どうやって、入ってきた?」

「(ニコッ)」

 エルは無言で手の中の蒼い毛玉を持ち上げる。

 ……。

 ……し。

「しまったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 頭を抱えて絶叫する。


 俺謹製の使い魔・アルテミス。

 保有している魔力こそ、俺の一%程度だが……。

 保有している技量は、ほぼ俺と同等。

 ……。

 つまりは……。


「ご主人様が引きこもっていたので、ミレイから借り受けました。あっさりとこの複雑な空間回廊を解いてくれましたよ♪」

 そっと足元にアルテミスを置くと、満面の笑顔で近寄ってきた。

「では、ご主人様。…………ご覚悟は出来ておいででしょうか?」

「(ガクガクブルブルッ)」

 くすりと微笑むと。

「判決、……………………………………………………………………………………死刑」



 その日、俺の魂は輪廻の輪を見た。



 本日の教訓「口は災いの元」

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


ルシファー、ラファエル、アナスタシア三人の術式構築の技量を比べると


上から、ルシファー、アナスタシア、ラファエルの順になりますww

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