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31話 思い出を求めて②

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。

「え、え?…………え~~~~~~~!!」

 ミレイが驚きで絶叫を上げるが……、とりあえず封音結界で覆い隠した。


 ……。

「え?え?でも……」

 多少の戸惑いはあるのだろう。

 でも。

「スターシャから貰った小遣いじゃなくて、自分で稼いだ金で買い戻さないか?」

 純粋にミレイの想いを伝えるのなら、ミレイ自身が独力で稼いだお金の方がいいだろう。

 まぁ、例え予知能力を持っていたとしても、所詮ミレイはただの小娘。

 けれど……。

 視線をミレイの足元の、紅と蒼の毛玉に向ける。

 ………………一国の軍を相手にしても絶対に負けないだろう。

 それに、アポロンとアルテミスの構造の根底には「ミレイの守護」と刻んである。

 たとえ世界崩壊級の大戦争が起こったとしても、ミレイには傷一つ付かないだろう。


「どうだ?」

「えと……。シーファ様も一緒に来てくださいますか?」

「おう。当然」

「わかりました……、行きます」

 話は決まった。ならば……。

「ミレイ、跳ぶぞ」

 ミレイをアポロン、アルテミスごと抱きかかえる。

「場所は……、とりあえず屋敷の外でいいか……」

 ――特定・跳躍。

 ブゥンッ。

 視界が瞬間、ブラックアウトする。

 そして……。


「うわー……」

 ミレイが口を開けて、ポカーンとしている。

「そういえば、空間転移は初めてだったな……」

「……空間転移?」

 片目を瞑りウインクする。

「一応、伝説の魔術だよ」

 一度訪れた場所、もしくは視線が届く範囲にしか跳べない、とか。

 発動に膨大な魔力が必要、とか。

 術式の構築と座標の特定が異常に難しい、とか。

 いろいろと問題があって、人間界では使い手不在で伝説の魔術だったはずだ。

「ちなみに靴はサービスな♪」

「へ?」

 俺の言葉に、一瞬何を言われたのか理解できなかったらしくフリーズする。

 そして。

「!」

 驚愕で固まってしまった。

 ……。

 ミレイは可愛らしい、白いブーツを履いていた。


 二人揃って、傭兵ギルドまでの道を歩く。

 ふと、ミレイが声をかけてきた。

「この靴、どこから出したんですか?」

「ん?あー。それは近場の元素を分解して、変換と再構築で組み上げたんだ」

「げんそ?へんかん?」

 苦笑しながら、頭を撫でる。

「難しいことは考えるなって。そういうことが出来る、とだけ覚えておけばいいさ」

「えと……。はい」

 物質の分解・再構築は錬金術の業だ。

 まぁ、教えたとしてもミレイでは実行不可能だろうが。



 ……。

 久しぶりに町の通りを歩く。

 相変わらず、この町には活気がある。

 道に並ぶ露店や、人の賑わう市。

 お!

 目の前に、いい感じの物が映る。

 ……ちょいと早いが、依頼を受ける前に昼飯でも食ってくかね。

「親父、それを二つ」

 薄いパンのような生地で、野菜と肉を挟んだ簡単な一品――ケバブだ。


 屋台の親父に声を掛けて、ケバブを二つ注文する。

「あいよ!二つで銅貨十六枚だ!」

 親父が陽気な声で応じてくれた。

 懐の小銭入れから、銅貨を出して渡す。

「ほれ、食っとけ」

 受け取ったケバブの片方をミレイに手渡す。

「え?いいんですか?」

「ああ、食え食え」

 気軽に応じて、自身も齧り付く。

 シャキッとした新鮮な野菜と焼けている羊肉から溢れ出る肉汁が美味い。

 ピリッと辛味の効いている、ソースも絶品だ。

「お!なかなかいけるな、今度からあの屋台は贔屓にしよう♪」

「はい、美味しいです♪」

 ……。

 二人でケバブを齧り、談笑しながら、ギルドまでの道程を消化した。



「久しぶりだな……」

 そう呟いた俺の目の前にあるのは、傭兵ギルドの建物だ。

 以前はめんどくさい目にあったっけな……。

 どうにも苦笑が浮かぶ。

「……やれやれ、行くか。できれば、夕方までには戻りたいしな」

 呟いて、ドアを押した。


 ……。

「短時間で、かつそこそこ金額が欲しいとなるとやはり討伐系の依頼か……。採取系や雑事系も悪くはないが……。……ふむ」

 掲示板の前で、考え込む。

 現在俺のギルドランクはDだ。

 以前に、ロック・ドラゴンの素材を買い取ってもらった時に、ギルド側から特例としてランクを二つ程上げてもらったのだ。ランクの上下がそのまま身分証明書としての効力に繋がるため、悪い取引ではなかった。

 ……。

「さて、さて……」

 いくつかに絞り込んだが……。さて……、どうするか。

 と。

「シーファ様!あれなんてどうですか?」

 お?

 ミレイが指したのは、絞り込んだ内の一つだった。

「『道を塞いでいる岩の撤去』、か……、ランクDの雑事系、実質雑事系依頼では最高位だな。でもって、報酬は銀貨八十枚。期限は二日以内。依頼主は商業ギルドの下請け、か……。場所は……ふむふむ」

 場所もここから少し行ったところで、そんなに遠くない。

 悪くないな……。

 ……。


 よし。

 ビリッ。

 依頼書を剥がすと、それをカウンターに提出すべく持っていく。

「この依頼を受けます」

「あ、はい。拝見します……」

 提出したギルドカードと依頼書を確認し、手元の機器を操作する。

 しばらくして、ピコーンッと音が鳴る。

「はい、受注完了です。では現場に向かってください」

「はいはい」

 ギルドカードを返してもらうと、踵を返した。



 ……。

「「GAU!」」

 足下から、機嫌のよさそうな泣き声が聞こえてくる。

「すごーい!アポロンとアルテミスってこんなこともできるんですね!」

「んー、まぁ、たいていのことは出来るぜ」

 なんせ、俺の謹製だ。

 俺の術法の粋を凝らし、その上全魔力の一%も込めたのだ。

 ……。

 周囲の景色がものすごい速さで後方に流れていく。

 視線が高い。

 以前のアメジスト採取は空を飛んだが、今回は地上を高速で移動中だ。

 空を飛ぶほどの距離でもない。

 でもって、俺とミレイが乗っているものは。

「「GAAAA!」」

 巨大な真紅の魔狼と、同じく巨大な群青の王虎。

 アポロンとアルテミスだった。


「例の道は、どうやらガラリヤやバーム連合国に抜けるルートに繋がっているらしいな」

 風魔術の応用で、自身の声をミレイの耳元まで届ける。

「はい!クォーツの町はルナ大公国と接しているんですが、その国境辺りの山中から大陸東方に向かって流れている大きな川があるんです!」

 ミレイの声が俺の耳元まで運ばれてくる、これもまた風魔術の応用だ。

 ……しかし、川?

 ……。

 !

 なるほど……。

「……運河か」


 ……。

 それから、さらに二十分程で現場に到着した、のだが。

「……これは、これは」

 道が、先三十メートルぐらいに亘って、落石のような物で塞がっていた。

 事前に情報を得ていたとはいえ、実際に見ると圧巻だ。

 どうりで、ギルドの受付嬢が魔術師の有無や人数をしつこく聞いてきたわけだ。

 尤も。

「では、ミレイ、任せた」

 それだけ言うと、乗っていたアルテミスの背から飛び降り、近場の木陰に移動した。

「えと、シーファ様?」

 ミレイが心細げな声を出す、が。

「まずは、好きにやってみろ。間違ってたり、危なくなったら止めてやるから。……まぁ、とりあえずは目の前の岩を全部どかせばOKだ」

 そういって転がり、目を閉じた。



 ―――ミレイ・フォン・バレッタリート―――


 シーファ様は。

「まずは、好きにやってみろ。間違ってたり、危なくなったら止めてやるから。……まぁ、とりあえずは目の前の岩を全部どかせばOKだ」

 そう言って、寝転がって目を閉じてしまった。


 ……

 ええと、目の前の岩を全部どかせば大丈夫だよね?

 とりあえず、普段の姿からは想像できないほどに大きくなっているアポロンとアルテミスに視線を向けて、聞いてみる。

「えーと、あの岩をなくせる?」

 コクンッ。

 二匹とも頷いてくれる。

 どうしよう……。

 ……。

「……アポロン。お願いできる?」

 私の言葉に、真紅の魔狼は再度頷く。

 そして。

 キィィィィィィィィィィィィィィィンッ!

 大きく開けた口に、真紅の光が収束していく。

 やがて、

 ドオォォンッ!!


 轟音と共に視界の全てが赤い光に包まれた。


「……え゛」

 視界が晴れると、…………確かに岩はなくなっていた。

 依頼としては完遂だろう。

 ……。

 目の前の道ごと消し飛んでいなければ……。


 ……どうしよう。

 目の前には巨大なクレーター。

 アポロンの一撃で道はおろか、周囲の景色もキレイに消し飛んでいた。

「…………あう」

 混乱の極みに達する。

 だが。

 ベロンッ。

 突然、生暖かい感触が頬を撫でる。

「わ!」

 目の前には巨大な群青の王虎。

 何かと思えば、アルテミスが私を舐めたのだ。

 アルテミスの瞳は、私を心配しているらしいことを物語っていた。


 アルテミスの目を見て、ふとエラトステネスの王宮での会話を思い出す。

「攻撃特化のアポロンと違って、アルテミスは技術に特化しているようですね。力の一号と技の二号、ご主人様の考えそうなことです。……やれやれ、…………はぁ」

 とため息混じりに語っていたのはエル様だ。

 ……。

 よし!


「ねぇ、アルテミス。ここに道を作れる?できれば周囲も元に戻したいんだけど……」

「GAU!」

 私の問いに、元気良く吠えると。

 リィンッ。

 光り輝く魔術文字が周囲に躍る。

 多重の魔方陣が王虎を中心としてその体を包んでいき、やがては一つの球形となる。

 ――積層立体型魔方陣。

 魔方陣の究極形にして、魔術師が到達するべき目標の一。

 通常は縦横の二次元でしか展開されない魔方陣に、高さを加え、縦横高さの三次元で展開された魔方陣。

 その中に込められる情報量は通常の魔方陣に比べると何百倍から何千倍。

 世界に対する影響力はもちろん、その効果も通常魔方陣とは桁が違う。

 カッ!

 アポロンが作ったクレーターが一瞬光り輝いたと思うと。

「うわぁ!」

 そこには整然とした石畳の道が出来ていた。



 ―――シーファ―――


「うわぁ!」

 ミレイの感嘆の声が聞こえたので、目を開けてみると。

「……………………山中に、石畳の、道?」

 きっと今の自分は、なんとも渋い顔をしているのだろう。

 アルテミスがガウガウッとミレイに賛同して吠えているし、アポロンは耳と尻尾をペタッとさせてクゥーンッと申し訳なさそうに鳴いている。



「……………………………………何、この混沌?」

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております。


この世界のレートはおおよそ


金貨一枚百万円

銀貨一枚1万円

銅貨一枚百円


程度です、上記の三種以外にも貨幣は存在します、出てきてませんが……。

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