27話 野犬退治の裏側で②
誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。
部屋に入ってきた青年は。
「始めまして、私の名前はアミール。ここルナ大公国で魔導騎士団の団長をやらせてもらっている者だよ」
と、微笑んだ。
……。
茶髪のサラサラの髪に、優しげな瞳……。
間違いなく百人が百人、美男子と認めるだろう。
……うちのぐーたらとは随分と違いますね。
などと、シーファ本人が聞いたら、自棄酒を起こしそうな事を考える。
「アミール、何か用ですか?」
リーナの問いに。
「はい。我が国を救った英雄を一目見ておこうかと。あわよくばそのまま勧誘しに」
ニコッと笑って答える。
「アミール、一応、彼女たちは国賓ですよ……」
リーナが呆れた声を出す。
それに、青年は軽く笑い声を上げて答える。
「はは、分かっていますよ。フィーレリーナ様。私もそんな無礼ではありませんよ」
……。
対面のソファーにはアミールと名乗る青年が座っている。
「いやぁ、謁見の間でも見たが、お美しい。その上、あれだけの魔族を相手に出来るだけの実力があるのだ、君
の主人が羨ましいね」
挨拶を交わし後の談笑中だ。
「……ありがとうございます」
「どうだい?私の侍女に転職しないかい?」
「結構です」
私の即答に。
「そうですか……。いやぁ、残念だ」
頭を掻きながら、本当に残念そうに苦笑する。
「本当に……」
突然歪んだ笑いを浮かべたかと思うと。
「残念だ」
トンッ。
リーナの胸に手刀を突き刺した。
「…………アミール、なに、を」
そのままリーナが床に倒れふす。
真紅の血が床に広がっていく。
トンッ。
さらに、返す刃で……。
ユウナの胸を貫く。
姉とは違い無言で床に倒れ付した。
アミールはいやらしい笑いを浮かべると、立ち上がり大声で叫ぶ。
「誰かー!フィーレリーナ様とユウナリーア様が!早くー!!」
顔は嘲笑で歪んでいるのに、声は必死というアンバランスだ。
「アミール様、何を?」
私の問いに。
「同胞の敵だよ」
と言って、振り向く。
……。
優しそうな瞳は瞳孔が立てに割れていた。
「魔族ですか……」
「そうそう、魔族だよ。姫殺しの犯人さん」
アミール……、アミールだった青年はニヤニヤと笑っている。
どうやら、この魔族の青年は私に姫殺しの罪を被せるつもりらしい。
……。
……やれやれ、これでご主人様が帰ってくる前にかたがつきそうですね。
「白状ありがとうございます」
ニヤニヤと笑いを浮かべている悪魔に背後から声を掛ける。
「やはり、王宮の中に潜んでいましたか……。地獄の猛犬・オルトロス」
ニヤニヤ笑いが凍りつく。
「やれやれ、策士、策に溺れる。余りにも稚拙すぎましたね」
パリィィィィィィィンッ。
硝子が割れるような音ともに、視界が砕ける。
そこには、事切れた姫はおらず、血の海すらない。
ただ……。
「アミール、あなた……」
「…………」
恐怖に顔を歪めた姉妹の姿があった。
――励起。
ガガガガガガガガッ。
一帯に張った、封縛陣がオルトロスを縛り付ける。
「ぎぃ……、なぜ、だ……」
オルトロスが驚愕を貼り付け苦し紛れに聞いてくる。
「おま、え、は、し、神官」
「ああ……」
なるほど。
神官である私が魔術の幻術を使ったか?ということですが。
「幻術を使ったのは私ではありませんよ、ご主人様が仕掛けて行った、保険です」
私の足にしがみ付いている、ミレイの足元に視線を下ろす。
そこには、球形の魔方陣を広げた蒼い子猫――アルテミスがいた。
「流石に、積層立体型魔方陣まで使えるとは思いませんでしたが……」
思わず呆れてしまう。
まさか、魔術の秘奥の一つである積層立体型魔方陣まで使えるとは……。
どれだけ、ミレイが心配だったのでしょうか。
アポロンとアルテミスの二匹だけで、大陸ぐらいは易々と落とせそうである。
……まぁ、おかげで。
「最高位の幻術は五感はおろか六感まで完全に支配します。気づかなかったでしょう」
クスクスッ、と笑う。
ドアの向こうから、兵の気配が近づいてくる。
「チェック・メイト」
神力の密度を上げる。
ガガガガガガガガッ。
「うがぁ…………ああ…………」
途端。
悪魔の青年の顔は、口が裂け、真っ黒い剛毛で覆われる。
鎧が弾け飛び、服が破れ、骨格が歪み。
次々と体が変態していく。
やがて。
そこには、二頭を持った漆黒の魔犬がいた。
「ひっ!」
「うぐっ!」
「っっっ!」
最初からミレイ、リーナ、ユウナの順である。
「ケルベロスが出てきているのです、貴方が居ないわけがありません」
つまらなさそうに呟く。
と。
「フィーレリーナ様とユウナリーア様!」
と、王宮の警護兵がなだれ込んできた。
「なんだこれは!?」
警護兵達がオルトロスを見て固まるが。
「そんなことより、まずは二人の保護を!」
私の言葉に動き出す。
「あれは、この王宮に忍び込んでいた魔族です、これより処理するので姫の二人を!」
「「「「っ、了解」」」」
リーナとユウナを護衛して、警護兵が下がっていく。
……これで、お仕事は終了ですね。
ミレイを抱き上げると、言った。
「では……、アポロン」
王宮の壁を貫いて、真紅の光が空の彼方に突き刺さった。
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