25話 野犬には十分の注意を③
誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい。
鎮め歌を終える。
「……ふう」
疲れたように息を吐いた。
やはり慣れないことなどするべきではないなぁ。
などと考えるが、後悔はしていない。
「静かに眠れよ……」
この地に縛り付けられていた魂は全部昇天した。
……しかし。
「元・魔王が神官の真似事とはこれいかに……」
顔に苦笑が浮かぶ。
既に魔王どころか悪魔ですら完全に廃業である。
今更、「俺は悪魔です」などと言っても誰も信じないだろう。
神術を行使し、善の心を持ち、美徳をもって人の願いに答える。
完全に悪魔失格である。
「まぁ、後悔はしていないが」
苦笑を浮かべたまま、スターシャのほうへ向かおうとする。
が。
カッ!
……。
世界が黄金の光で満たされた。
「…………っ」
光が収まると。
……………………地形が変わっていた。
「……おいおい」
魔力の流れから観測するに、上空から大きな一撃を叩きつけたのだろう。
直撃を受けたであろう場所を中心に、巨大なクレーターが出来ていた。
「主」
「ん?」
顔を上げると、スターシャが八つの黒き星を従えて浮遊していた。
どうやら、俺が余波に巻き込まれなかったのは彼女が護ってくれたかららしい。
傷一つ付いてない姿を見るに、お犬様はどうやら完敗したらしい。
「どうやら、終わったらしいな」
「はい……」
「しかし……、随分と強力なものを使ったな」
クレーターの大きさは巨大な都市が一つ入ってしまう程だ。
「えと……、その……」
「いや、怒っているわけじゃねーぜ」
ははは、と笑う。
「……はい」
安心したように微笑む。
「……その、ここらにいた魂は?」
「ああ……」
……ふむ。
まぁ、スターシャならいいか。
「スターシャ、俺は悪魔だ」
「え?それは知っていますけど……」
「実は俺……」
真剣な顔と声で言葉を紡ぐ。
「…………(ゴクッ)」
「下着フェチなんだ!」
「………………………………………………………………へ?」
ニヤリッ。
と、笑うと指を刺す。
「丸見えだぜ、黒いの♪」
俺は地上、彼女は空中。
しかも、侍女服はバリバリでスカート。
……。
黒いフリルとレースが絶景です!
ついでにガーターも素晴らしいっす♪
……。
………。
…………。
「っっっっっっっっっ///」
真っ赤になってスカートを押さえるスターシャに激萌えしたのは内緒にしておこう。
「///」
真っ赤になって黙ってしまった。
「HAHAHA、冗談だって♪」
笑いながら返す。
「///」
今だ真っ赤で俯いている。
あぁ、もー、MOEEEEEEEEEE!
……。
と、いかんいかん。
思考を切り替えて、真面目な話しをしよう。
「スターシャが戦っている間に、ここで『鎮め歌』を歌ったよ」
「へ?」
再び固まった。
頬が今だに赤いのはご愛嬌。
目の前でスターシャがフリーズしている。
……まぁ、当然だろうな。
悪魔が神術を、しかも鎮め歌を歌ったと言ったのだ。
この世界で言うなら「深海魚が空をマッハで飛びました」と言っているようなものだ。
「鎮め歌を歌った。もうこの地に縛られている魂はいない。みんな昇天したよ」
「……」
「……」
しばしの沈黙の後、スターシャが信じられない、といった風に声を出す。
「我が主……。貴方は、悪魔……ですよね?」
「おう」
バリバリの悪魔です。
…………まぁ、そろそろ、種族・ニートを名乗っていいかな、とか思ってますが。
「悪魔が神術を…………」
「驚いたかい?」
「……ええ」
……。
「内緒だぜ。俺が神術を使えるのを知ってるのは、この世界で君を除けばエルだけだから」
苦笑しながら告げると。
「はい」
とこちらも苦笑しながら応じてくれた。
……。
「あいかわらず、悪魔らしくないですね……」
「ほっとけって」
「そろそろ、帰るか……」
「そうですね、向こうもどうなっているか気になりますし」
「だな」
帰りはコソコソする必要もないので、堂々と飛んでかえるつもりだ。
「スターシャは飛翔系の魔術は?」
先程浮かんでいたのは知っているけど、一応確認。
「大丈夫です」
そういうと、体が僅かに浮く。
「OK」
……よし。
では。
「行きますか」
「はい!」
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今回は少し短い……。




