表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/66

17話 はじめてのごえい③

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい

「よっ」

 掛け声とともに、馬車の外に躍り出る。

 同時に飛翔系魔術で自身の身体を宙に浮かせる。

「まずは……」

 雇い主に報告だな。


 コンコンッ。

 馬車のドアをノックする。

 流石にお嬢様の載る馬車だけあって、俺たち幌馬車とはちがって高級そうな馬車だ。

「な!な!」

 こちらを見てギョッとしている。

 とりあえず。

「チャオ♪」


 ……。

「そうですか……」

「ああ、ちょいと仕掛けてみる。一応侍女二人を置いてくから、困ったら相談してくれ」

「分かりました。……どうかご無事で……」

「……ん」

 一言頷くと。

「じゃあな、また後で♪」

 バッ。

 再び走行中の馬車から、躍り出た。

 あい・きゃん・ふらい!



 ヒュオオオオッ!

 周囲を風が通り抜けていく。

 現在は上空一キロ程のところを浮かんでいる。

 ……。

「さて、と……。……トレース」

 周囲に探査魔術の網を広げる。

 昨日の感じた気配を頼り探してみる。

 ……どれどれ。

 ……。

 ……。

 お、発見!


 ルナ大公国よりの渓谷に砦があった。

 中に居る人数は……五十人程か……。

「百聞は一見にしかず。とりあえずは行くか」

 影の異空間から魔王の宝剣『ニーズヘッグ』を引き抜いた。


 ザンッ。

 砦の見張り台にいた人間を、一太刀で切り殺す。

 ばれるとめんどくさいので、幻術と封音結界で周囲からは普段どおりに見えているはずだ。

「しかし……、ただの山賊とは思えんな……」

 ここに進入する際、侵入者対策の結界が張ってあった。

 それに、砦を上から見ると、統制も取れているし、見張りもきちんと仕事をしていた。

 どうにも……。

 ……。

「……ふむ」

 ……。

 死体を簡単に修復すると、操作系の魔術で死体を独立行動できるようにする。

 これで、この死体は文字通り、完全に破壊されるまでは俺の望むとおりに動くはずだ。

「……よし。やれ」


 ドォンッ!

 爆音が轟く。

 操った死体の中に、簡単な魔術を仕込んでおいた。

 今のあの死体は、完全に壊されるまで戦い続け、なおかつ魔術まで使用する、悪夢のような存在に成り果てている。


 ……。

「死体の操作は、俺の専門外なんだがな……」

 思わず、苦笑がもれる。

 ……ミレイには絶対に見せられない術だな。


 ザンッ。

 出会いがしらに、山賊を切り捨てる。

 一応、この砦内部の構造は簡単に調査してあるし、どこらへんにどれくらいの人間が居るのかも調査してある。

 そして。

 ザンッ。

 再び山賊を切り捨てる。

 山賊の頭っぽい奴の居場所も、調べておいた。

 ……探査魔術万歳♪


 ダンッ。

 扉を蹴破る。

 と。

 ヒュォッ!

「……チッ」

 ギャリンッ。

 飛んできた風の刃をニーズヘッグで切り払う。

「……お前が頭か……」

 ……。

 部屋の中には、中年の男女が一組に、手下らしい山賊が七人、山賊の頭らしいが体格のいい男が一人いた。


 杖を構えた中年の女が例の魔術師だろう。

 そして、商人のようなゆったりとした服を着た中年の男が例の参謀だろう。

「一人で、ここまで来るとはたいしたやつじゃねぇか!覚悟は出来てんだろうな!」

 山賊の頭が大きなだみ声で叫ぶ。

 が。

「そんなもん知らん」

 ザザンッ。

 一足飛びで、間合いに入り込むと、一太刀で山賊の手下二人を両断する。

 次!

 ズバンッ。

 ニーズヘッグを振りぬき、その剣圧で手下の一人を叩き潰す。

 ここまでで僅か、一秒たらず。

「……ふん」

 ――展開、射出。

 ズドドドドドドドドドドドドドドンッ。

 宙に生み出した多数の氷の弾丸で、残りの四人をひき肉状態にした。


「て、てめぇ……」

 頭や参謀の男の顔が引きつっている。

「……」

 と、今まで大人しかった魔術師がいきなり杖を振りかぶり。

「~~。フレア・ドライブ」

 今まで、小声で呪文の詠唱を行っていたようだ。

 莫大な熱量が集中する。

 だが。

「……遅い」

 ――展開、固定。

 リィンッ。

 鈴のような音ともに小規模な虹色の結界が包み込む、……真紅の炎ごと、魔術師を。

 ドォンッ。

 結界内部で、炎が結界の壁にぶつかり爆発する、……魔術師を巻き込んで。

 ……。

 炎が晴れると、上半身が消し飛んだ魔術師の死体が顕になる。

「残りは二人……」


 参謀の男の顔が醜く歪んだかと思うと、喚く。

「貴様ぁ!殺す、殺してやる!」

 ……。

「……今まで、お前らが殺してきた人間は皆そう思っているよ。……今まで散々暴れたんだ。そろそろ年貢の納め時、……抵抗しないなら楽に殺してやる」

 と。

「うらぁ!」

 頭がいきなり、参謀の男を俺のほうに突き飛ばしてきた。

 !

「チッ」

ザンッ。

 参謀の男を一刀両断する。

 しかし。

「あばよ、おれは逃げさせてもらうぜ!」

 いつの間にか頭が窓から飛び降りていた。


「……貴様は今回の騒動の発端だ、逃がさん」

 と。

 ゴゴゴゴゴッ。

 いきなり砦全体が揺れ始める。

 ……なんだ。

 再度、探査魔術を実行する。

 今度は広範囲・高密度にわたって調べる。

 !

 なんと、砦が崩れ始めていたのだ。

 先ほどの頭の仕業だろう。


「くそっ」

 探査魔術で調べた結果、この砦の地下には今まで攫われてきた女性が多数囚われている。

 このままでは、全員生き埋めだろ。

 本来なら見捨てたって問題ないはずだ。

 ……。


 しかし、……なぜかそんな気分にはなれなかった。

 ……。

 急いで参謀の男の死体に触れると、その魂の残滓から記憶・知識を強引に引き抜く。

 ……よし!


 意識を集中する。

 失敗は許されない。

 今回の崩壊の原因は、砦を支えている支柱を抜かれたためだ。

 参謀の男の記憶によれば、この崩壊は相手を巻き込んで自滅する最終手段で、参謀の男自身が一応の保険として仕掛けたらしい。

「めんどくさいことを!」

 だが、文句は後だ。


「捕捉、捕捉、捕捉」

 探査魔術を走らせ、砦の抜かれた支柱、崩壊が始まっている場所を捕捉していく。

「……」

 次に捕捉した場所に効果が現れるよう、魔術式を調整していく。

 早く早く、されど一つのミスも許されない。

 何度も結果をシュミレートし、微調整を繰り返していく。

「握!」

 魔術式を完成させた。

 並みの魔術師が同じような作業をしたら、それこそ一年以上はかかる。

 それを僅か二秒程度で終了させる。


 魔王・ルシファー。

 それはかつて、魔界の頂点に絶大な力と共に君臨した者。

 そして、その力の一端が現される。


「……よし。白の息吹よ、晶の祝福を!」


 パリーンッ!

 ギシィィッ!

 最初の音は砦内の補足した場所が凍りついた音。

 次は、砦の崩壊が止まった音である。


「……とりあえずは、セーフだな」

 深呼吸一つして、額を拭った。

ご感想・ご意見・各種批評・間違いの御指摘などをお待ちしております

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ