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15話 はじめてのごえい①

誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい

 屋敷を出たのは朝の八時。

 家にミレイを一人残すわけにも行かないので連れて行くことになった。

 まぁ、俺とエル、それにスターシャがいるんだ、それこそ天界と魔界の連合軍を相手にでもしない限り、まず遅れはとらないだろう。

 ……それでも、負けないと思うが。


 集合場所には馬車が四台停まっていた。

 それに、傭兵らしき人物も。

 その中でひときわ大きな体の傭兵が、喧嘩腰で話しかけてくる。

「……よう。まさかその化け物の飼い主があんただったとはな」

 ……?

 化け物?

 視線を追えばスターシャがいる。

 そういえば、先日屋敷に張っていた傭兵を撃退したといっていたから、その傭兵なのだろう。


 ……しかし、だれだ?

 目の前の傭兵は俺のことを知っているようだが、記憶にない……。

 と、横からエルが。

「ご主人様、私たちを勧誘してきた傭兵の方たちです」

「……いたっけ、そんなの?」

「……あいかわらず、興味のないことはすぐに忘れますね」

「んーーー。……わりぃ、思い出せないわ」

 目の前の傭兵たちが気色ばむ。

「てめぇ……」

「ふざけんなよ……」

「チッ……」

「ガキが……」

 ……なんかすごい顰蹙を買った。

 ……。

 ……。

 エルか詳細な説明を受けようやく思い出した。

「あー、思い出した。確かティアードとかいう傭兵だ!」


 ……。

「では、一台目にシーファ様方がお乗りください」

 サロアの声が響く。

 あの後、一触即発の空気になったのだが、サロアが出てきて仲裁してくれた。

 尤も、相変わらず向こうさんは俺らのことを目の敵にしているっぽいが……。

「二台目にはリーナ様とおつきの方が乗ります、三、四台目にはティアード様方がどうぞ」

 全員を乗り込ませると、リーナが乗る馬車に近づいていく。


 膝を突き、臣下の礼をとる。

「リーナ様、どうかご無事で。このサロアに出来るのはここまででございます。同行できないのが口惜しい限り……」

「いえ、サロアも私のためによくやってくれました。ありがとうございます」

「はっ」

「故国に着いたなら、必ず連絡を入れます。安心してください」

「……はっ。お待ち申し上げております。どうか、どうかご無事で」

「はい……」

 ……。

 その後、リーナの「行きましょう」という声で出発した。



 クォーツの町を出て三十分ぐらいした時。

 馬車に揺られながら、口を開く。

「ミレイに保険をかける」

「「「?」」」

 三人そろって首を傾げる。

 苦笑しながら、影の異空間から『太陽の微笑』を取り出した。


「我が意を持って、一つの命となれ」

 莫大な魔力がブローチに収束していく。

 ィィィィィィィィィィィィィィィィィンッ。

 次の瞬間。

 ポンッ!

「まぁ!」

「わぁ、可愛い!」

 スターシャとミレイが声を上げる。

 ……。

 俺の手の中には、真紅の毛並みの子犬がいた。


「使い魔の召喚……?いや、作製ですか、ご主人様」

 と、エルだ。

「ああ、俺たちも注意するが、それでも絶対とは言えない。備えあれば憂いなしだ。こいつには俺の力の一%程を込めておいた」

 太陽の微笑を核に、俺の魔力を材料として使い魔を作ったのだ。

「……随分と大盤振る舞いですね。ご主人様の一%は、国を一晩で滅ぼしてなお釣りが来ますよ……」

「まぁな……」

 エルに苦笑で返す。


「ほら、ミレイ……、君が名前をつけてあげるといい」

「……………………………………………………ええと、シーファ様」

「ん?」

「…………なんか、寝ていますが」

「………………………………………………………………そうだな……」

 ミレイに手渡された子犬は見事に熟睡していた。


 エルが半眼でつぶやく。

「ご主人様が作ったから、ご主人様の性質を受け継いだのでしょう。すなわち、働かずに食べて寝ているばかり」

「……」

 と、今度はスターシャが戦慄したように呻く。

「まさか、使い魔までニートに……」

「…………」


 ……。

 腹いせにエルとスターシャの胸を揉みしだいてやった。

 艶やかな喘ぎ声がなんとも♪

 ちなみに、ミレイの情操教育にはよくないので、幻術と封音結界を張ってみた。


「はい、じゃあ、名前は「アポロン」で。……ってエル様とお母さん、顔が真っ赤ですけど大丈夫でしょうか?」

「「…………」」

「ま、まぁ、大丈夫じゃないか」

 二人揃ってぐったりと気絶していたりする。

 エルには普段の仕返しを、スターシャは加減が分からずに、で思いっきりやってしまった。

「?」

 ……てへっ♪



 クォーツの町からルナ大公国領内の町、アーベルまでの護衛が今回の目的だ。

 クォーツからアーベルまではおおよそ馬車で三日程度。

 道中に町や村は存在しない。

 そのため、二泊は野営やそれに近いことをしなければならない。

 日が暮れかけた頃。

「本日は、ここで野営をしましょう」

 そういったのは、リーナの侍女長であるイネスだ。


「では、ご主人様」

「あいよ」

 エルの言葉に応じて、影の異空間から、食材や調理用具を次々と出していく。

 ティアード達や、リーナたちが目を丸くする。

 本来、こういう場合は速度と距離を稼ぐために荷物は最低限に絞る。

 事実、ティアード達は携帯食料やカップ一杯ぐらいの水しか口にしていない。

 リーナやその従者たちはもう少しましだが、それでも簡素な物だ。


 対して俺たちは……。

 ……。

「ご主人様、釜を作っておいてください」

「やれやれ、俺は寝て起きたら飯が出来ていることを希望したいぜ」

「……」

 !

「OK!やる!やるから俺の頭をつかまないで!」

「……では、お願いします」

 ……やれやれ。

 まぁ、こういうときぐらい、いいか。

「よっ」

 地属性の魔術で地面を隆起させ釜を作り、さらに強度を上げる。

「一丁上がり」

 ここまでで約一秒、魔術も全て無詠唱である。

 と。

「では」

 とエルが鍋を置き、水と食材を突っ込んでいく。

 スープを作っているのだ。

 ちなみに、火力はアポロンが口から吐いた火炎を利用した。

 ……以外に便利な使い魔だった。

 主食のパンは、昨日の内に買い込んで時間停止をかけて影の異空間に放り込んであるので問題なし。

 横でスターシャは薬缶と火の魔術でお湯を沸かし紅茶を入れていた。

「ぃよっと」

 影の異空間からテーブルとイスを取り出して並べていく。

 ……。

 野営地の一角に食卓が完成していく。

 ……。

 依頼内容では、道中の食事は各自用意、であるから全然問題ないはずだ。

 ティアード達やリーナ達が携帯食料や簡素な物を食べている横で、俺たちは普段どおりに食事を開始したのである。


 ……。

「あの、すいません……、よければ少々、分けていただけませんか?」

 そうたずねてきたのはリーナの侍女長・イネスである。

 ……ふむ。

 横目で、調理を担当したエルとスターシャを見ると、「ご主人様の判断に任せます」と返された。

 ……。

「スープだけでもいいので」

「ふむ……、銀貨十枚払えるか?」

「……十枚ですか?」

「そうだ」

「………………………………、わかりました」

 少しの間悩むが、背に腹は変えられないと思ったのだろう。

 懐から小銭袋を取り出して、渡してくる。

「OK、リーナを呼んでこい、後お前とお前さんの仲間も連れて来い」

「え!」

「後、アーベルにつくまでの食事はサービスしてやるよ」

「……あの」

「銀貨十枚、十分以上に元はとれてる、問題ない」

 エルとスターシャに確認すると、微笑しながら頷いてくれた。

「旅は道連れ、世は情け。こんな時だ、気にするな」

 まぁ、リーナの覚悟に感銘を受けたのと、太陽の微笑を貰い受けたからだが。

「ありがとう、ございます」

 頭を下げてくるが、そっけなく答える。

「礼などいらん、代金は貰った」

 ……。

 その後、リーナ一行に温かいスープと熱い紅茶を配ってやった。

 ティアード達もこちらを見ていたが、俺はそこまで博愛主義でもないので無視した。

 まぁ、悪魔ですから。


 食事が終り就寝の準備をしていた頃だ。

「シーファ様、ありがとうございます」

 そう言って、頭を下げたのはリーナだ。

「礼などいらんよ」

「いえ、感謝を感じたら、礼をするのは当然です」

「……」

「スープと紅茶は本当に助かりました、だから、ありがとうございます」

「……」

 それだけ言うと、自分の馬車に戻っていった。

 ……。

「他人から真っ直ぐにお礼を言われるのは、慣れませんか?」

 エルだ。

 一連の出来事を見ていたのだろう。

「……」

「ふふ、今のご主人様の顔は見ものですよ」

 微笑むと、優しい声でそう言った。

 ……。

「……そうか」



 ……。

 とりあえず、ミレイは早々に寝てもらった。

 アポロンを抱いて「むふふ」と笑っているところを見ると、いい夢を見ているのだろう。

 しかし。

「傭兵達は気づいていませんね……」

「どうします?」

 最初の言葉はエル、次の言葉はスターシャだ。

「認識できるだけで八十、ずいぶんと手荒い歓迎だこと……」



 現在、俺たち一行は山賊の集団に囲まれているのだ。

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