14話 報酬は『太陽の微笑』
誤字・脱字・文法の誤りがあったらごめんなさい
目の前に一組の男女がいる。
男はこのクォーツの町の町長をしているサロア・イーザ。
この町の商業ギルドの長もしており、俺を警備隊の詰め所に殺人容疑でぶち込んでくれた、にっくき親父だ。
女は隣国ルナ大公国の貴族令嬢で、リナというらしい。
まぁ、偽名っぽいが、とくに興味もないので気にしないことにする。
……。
でもって、俺が警備隊の詰め所にとっ捕まっている理由だが。
どうにも、このご令嬢の護衛、もしくはクォーツとルナ大公国間の交通路の山賊退治をして欲しいらしいのだが、俺がやる気を出さないので、殺人容疑をかけて投獄し、そこで取引をする予定だったらしい。
……。
で、俺がサロアを殺そうとしたところ、このお嬢さんが駆け込んできて、今の状況だ。
「サロア様、この方を出して上げてください」
「しかし、リー……、リナ様。ここでこの者の助力を得られなければ……」
「関係ないものを巻き込むわけには……」
「しかし、もはや貴方様に時間がありません」
「……ですが……」
と。
「あー、悪いがとっくに出てるぞ」
「「え」」
とりあえず牢の鉄格子を素粒子まで分解してみた。
「とりあえず情状酌量の余地ありで、殺すのだけは勘弁してやるよ」
……。
サロアのほっとした顔がなんともむかつく。
やはり殺しておこうか……。
まぁ、それはいつでもできるか、と考えなおして声をかける。
「別のルートを通って帰国しないのか?いくらなんでも道は一本だけじゃないだろう」
と。
「それが、つい最近になっていきなり魔獣や魔族の動きが活発になりまして、遠回りするルートはほとんど使えなくなったんです……。それでも、遠回りするなら二、三カ国経由することになるんです」
「……魔獣や魔族の動きが活発になってる……」
……正直、心当たりがありすぎる。
おそらく、魔族を統括していた王(俺)がいなくなったからだろう。
「それでわが国も……」
「?、ルナ大公国もなんか問題が発生してしるのか?」
「はい、最近国の近くに小規模な魔族の軍団が出現したらしくて……。魔王が代替わりしてからはこんなことは一度もなかったのに……」
リナの目に涙が溜まる。
えーと、…………………………………………関係ないよね。
「先日、私の情報網に流れたのですが……」
今まで黙していた、サロアが。
「最近になって、当代魔王・ルシファーが死んだらしく……。魔族が再び人間界や天界に侵攻した、との話しです」
まぁ、うわさですけど、とつけ加える。
……本人、目の前にいますけどね!
……。
まぁ、なんとも気まずい。
ここはさっさと帰ろう。
「俺はもう疲れたし、帰るぞ。今回の慰謝料は後で請求する。渋ったら家の侍女が猛威を振るうのであしからず。じゃあ」
な。とは続かず。
「すいません……、貴方がロック・ドラゴンをしとめたというのは本当ですか?」
リナが問いかけてきた。
「……あー、…………まーな」
「……今までの無礼を謝罪いたします。どうかその力を今一度お借りできませんか?」
正直、嫌だと言いたい。
しかし、適当に嫌と言ったところでまたなんか面倒な事態になるだろう。
なら……。
「金貨にして五万枚を払え、それ以外では応じない」
まぁ、五万枚なんて下手をすれば小国の国家予算に匹敵するが、元・魔王を扱き使うのだから、これでも安いだろう。
尤も、平民はおろか、貴族でも払うのは不可能に近い。
事実、サロアなどは「不可能だ!」と叫び声をあげる。
……まぁ、払えるはずがないから吹っかけたのだが。
と、リナはなにやら難しい顔をしたかと思うと、一言。
「わかりました……」
……。
!
は?
徐に、胸元に手を入れると、一つの大きなブローチを取り出した。
中央に鮮やかな真紅の宝石が埋め込まれており、周囲を美麗な銀細工が覆っている。
!
あれは、……もしや。
「この中央の宝石は年代物のルビーです、そして周囲の金属はアダマンダイトで出来ています」
……やはり。
「これを依頼料代わりに差し上げます。これは、我が家に代々伝えられてきた家宝『太陽の微笑』です。芸術品としても価値は高く、売れば金貨五万枚、は無理かもしれませんが、それに近い額が手に入るはずです」
そして俺の前に差し出し。
「お願いします。どうか私を故国に……、ルナ大公国に届けていただけませんか」
頭を下げた。
……。
悪魔は嘘を見抜く。
ゆえに、目の前の女が一切の嘘をついてないことがわかる。
目の前の差し出されたブローチも、積み重ねた年月と、本物だけが持つ一種の風格が備わっている。
リナの目を覗き込む。
その目に映るのは………………、悲壮なまでの覚悟。
「…………いいだろう、だが」
差し出されたブローチを受け取る。
「まずは、本名を名乗れ、それが礼儀だ」
一瞬驚いた後、破顔する。
一歩下がると、スカートを両手でつまみ優雅に一礼をする。
「失礼致しました。私の名はフィーレリーナ・フォン・ルナ。ルナ大公国の大公、グリード・テスタ・フォン・ルナの第一子です。どうか、リーナとお呼びください」
……。
「俺がするのは護衛だけだ。それと明日の朝に町長の家に行くから出立の準備をしておけ」
それだけ言うと、改めてサロアに声をかける。
「出所手続きはあんたがやっておけ、もしなんかあったら殺す。後、今回はリーナの覚悟に免じて引き受ける。次に俺たちに手を出したときも問答無用で殺す。いいな?」
「わ、わかった」
……ふん。
サロアが青い顔で頷いたのを確認すると。
詰め所から出て行こうとする。
と、ふと疑問を感じて、聞く。
「リーナ、君は魔術師か?」
「え?あ、はい、一応」
「……なるほど」
俺の魔力球に反応したのはそれでか。
と、リーナが再度頭を下げてきた。
「……あの、ありがとうございます」
「……かまわん、気まぐれだ」
「護衛の依頼を引き受けた。明日の朝出る……」
帰宅してから開口一番で言ってみた。
まぁ、エルに正座させたれた上、事の詳細を説明させられた……(泣)。
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四話連続更新の暴挙を実行……