誕生日と魔力検査
拾われた日からちょうど四年の月日が流れた。
アザミは12歳になっていた。
「「お誕生日おめでとう~」」
お誕生日席に座り嬉しそうにしているアザミ。
それを家族のみんなが祝っている。
「お姉ちゃんは~や~く~ケーキ、フーッって」
プレゼントを早く渡したいからか。それとも単にケーキが食べたいだけか、ミュウはアザミを急かす。
アザミがケーキの上で揺らめくろうそくの火を消すと、ミュウが椅子からひょいっと降りて、包装紙に包まれた小箱をアザミに差し出してきた。
「お姉ちゃん、はい、これ誕生日プレゼント!」
「開けてもいい?」
アザミが問う。
「うん、いいよ!」
アザミは包装紙を破り、中の小箱を開けてみると、そこには小さなクマのぬいぐるみがあった。
「ありがとうみんな!」
アザミは嬉しそうにそう言った。
「いや、まー、もっといいものをあげたかったんだけどね~誰かさんの稼ぎが少ないせいで。」
はぁ、とため息をつきながらミュウが言った。
「おい、ミュウなぜこっちをみる。それにだな、父さんの稼ぎは普通ぐらいだ。」
ノールが不満そうに言う。
「だってえ~父さんの稼ぎが少ないのは事実だし~私もいろいろ欲しいんだもん。」
そう、ミュウが反論した。
「あ、そうかじゃあ来年の誕生日プレゼントはミュウだけ、なしってことで。」
「オトウサンゴメンナサイ」
その父の言葉に危機感を覚えたのか、光の速さでミュウが謝った。
「おまえ……はぁ~現金だな、一体誰に似たんだか。」
「父さんじゃない?」
そのノールの発言に対して、ノアルがそう言う。
「おまえ…そんなに父さんが現金なやつに見えてたのか?」
「うん、だって父さん母さんに『お小遣い減らすよ』って言われたらすぐに謝るじゃん。」
「それは、ほら、あれだ…あーもう、この話はおしまい。アザミは明日魔力検査があるんだし、料理も冷めるからさっさと食べるぞ。」
「逃げた」
「うっさい!いいから食べるぞ」
しばらくしてアザミはミュウと二人でお風呂に入っていた。
二人で湯船につかっている中で、ミュウがいきなり口を開く。
「にしてもさ~お姉ちゃん本当に12歳なの?」
「えっ?」
アザミは突然のミュウの言葉に少し驚いた。
「だってさ、お姉ちゃんうちの家族になってから成長してないし、胸だって…私の方が、おっきいし……」
少し、照れたようにミュウは言う。
「う、うっさい私はまだ成長期が来てないだけなの!」
アザミは焦ってそう言ったが、ミュウは可哀想な人を見る目でアザミを見つめる。
「いや、あっ、うん、そういうことにしとくよ。」
「やめてその目悪かったから。」
「ねえお姉ちゃん、A-ランク以上だったら軍の学校に行かないといけないんだよね…」
少し、時間が空いた後、ミュウは少し悲しそうな声でそう言った
。
「そうだね~それが決まりだからね」
「私お姉ちゃんがいなくなったら寂しい…ねえお姉ちゃんはいなくならないよね?」
ミュウは懇願するような声でアザミにそう言った。
「まあ、もし私がA-ランク以上だったら行かなきゃならないけど、そんなのは1000人に一人いるかいないかだし、そんなのに私入っているはずないしね~」
アザミは少し、能天気にミュウからの言葉に答える。
「よかった、でもさ、もしだよB+だったら行くか行かないか決められるじゃん、そんな時でも行かないでね。」
「うん、行かないよ」
アザミはそう答えると、ミュウは手を挙げて喜んだ。
「わーい、やった!お姉ちゃん約束だよ。」
翌日、アザミは母と一緒に検査の会場に来ていた。
「やっぱ長いね~列、もう足が痛いよ。」
アザミが疲れたように言う。
「ふふ、もうちょっとだと思うから我慢しようね~」
オリンがアザミを元気づける。
「は~い、わかった~」
「でもさ~なんか見たことある気がするんだけどあの人たち」
そう言ってアザミは会場の警備をしている兵士の集団を指さした。
「そう?うちの近くに兵士さん達なんてきたことないし、アザミもあったことないはずなんだけどね~」
アザミのその言葉に対して、オリンが不思議そうにそう言う。
それもそのはず、ここ帝国では、あまり軍人が民衆の前に姿を現さないのだ。
軍のパレードもあるにはあるが、新兵器なんかは出てこない、しかもだ、軍にはパレードだけをする部隊がある、そんな噂が立つほどに軍人が人前に姿をさらさないことで有名なのだ。
そのため人々の中には軍人を眼にするのはこの検査会場だけだったと言う人も多くいる。
「次の方」
看護兵の女にアザミは呼ばれた。
「あ、アザミ呼ばれたわよ、行きましょうか。」
そう言って二人はテントの中に入っていく。
「はい、こんにちは、アザミちゃんだったかな?僕は今日の検査を…」
といかにも軍人という格好をした軍医が話終える前に、アザミに異変が起こった。
「ぐっ、頭が痛い…頭がわれ……」
「ちょっと!アザミ大丈夫!」
オリンは突然頭を抱え、苦しそうにしているアザミを支えようとするが……
「お母さ…」
そう言って、アザミは床に倒れた。
次にアザミが目覚めると簡易的な作りのベッドの上で寝ていた。
「あっ、アザミ起きたのね、ちょっと待っててすぐに軍医さん呼んでくるから。」
アザミの目が覚めたことに気づいた、オリンは部屋から出て行き、先ほどの軍医を呼びに向かった。
グぐぐ
アザミはベッドの上で自分にかけられていた、シーツを強く握りしめる。
アザミは気分が二重の意味で気分が悪かった。思い出した、いや。思い出してしまったのだ。
自分の姉が帝国軍の誰かに殺されたことを。
「お姉ちゃん!」
家が燃えている中、アザミは姉に向けて叫ぶ。
「○○○逃げ…て。」
自分の姉と思われる人物が、瓦礫に下半身が埋まった状態で「逃げて」と言う。
「やだ、お姉ちゃんといっしょに逃げるの!」
「いい、もう…お姉ちゃんは、助からな…い…だからね……お姉ちゃんの最後のお願い…聞きて、逃げて!」
姉と思われる人物が、今にもこと切れそうな声で、自分の手をギュっと握りながらそう言った。
その時だった、玄関から軍服を着た兵士達がドアをけ破り、部屋の中に入って来た。
そして、アザミを見つけるなり。
「まだガキが一人いるぞ、殺せ!!」と叫ぶ。
「ほら…はやく、逃げて!」
アザミはそれを聞くと走って、裏口の方に逃げて行った。
今後の作品作りの参考にしたいので、感想やここがダメとかいう批評文などを、送ってくれるとありがたいです。