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立っている場所

 ああ、怒ってる怒ってる。

 僕は部屋の隅っこで禿げた頭頂部に血管をいくつも浮かばせた小太りのおじさんを見ていた。

 着ているのは金糸銀糸で刺繍された豪華な紫色の上着。そして、キュロットという半ズボンそしてその半分だけ露出した足はシルクと思われる靴下でおおわれている。

 靴下には靴下止めとしてキラキラと輝く宝石がはめ込まれていた。もちろん靴下の先端には純金製のバックル付きの艶々とした革靴がある。

 豪快な手ぶりを示す両手の指にはすべてキイチゴほどの大きさの宝石付き指輪がはまっていた。

 とってもお金がかかっていてたぶん僕の一年分の食費より大量のお金がかかっているんだろう。

 ここはいわゆるこの街の役所。

 周囲の役人の人たちは冷めた目で激昂する豪華絢爛なおじさんを眺めていた。

 あの小父さんはゴッドフレードナンチャラ卿だそうだ。長ったらしい名前なので正確には覚えていない。

 おじさんの正面には領主様が座っている。

 何を言われようと完全無視して紅茶をすすっている。

 おじさんの前にもお茶が置かれているのだが一瞥もされずむなしく冷めていくだけだった。

 ここは役所の中の一番豪華な貴賓室。それでもこのおじさんのキンキンキラキラのご衣裳の前にはかすんでしまった。

 このおじさんはひたすらこの国の未来を語っている。

「いいか、この国には近隣諸国に先駆けた武力がある。それを生かさないなどあってよいことではない」

 こめかみに血管を浮かんだままそう叫ぶ。

 ドンとテーブルに拳をたたきつけた。

 その音を聞いて、昔の自分なら飛びのいて怯えていただろうなあ。

 僕はその狂乱っぷりを気のない顔で見ていた。

 僕だけじゃない僕の周りにいる役所の職員もまた感情の読み取れない顔で目の前の光景を見ていた。

「お前たちには愛国心というものがないのか」

 そのゴン太の指すべてに宝石付きの指輪がはまっている。ひときわ大きな赤い宝石のはまった人差し指を領主様に突き付けた。

「ありませんな」

 領主様は身もふたもないことを言った。

「たまたまこの地が王国に付随するというだけのことそれに愛国心などと言われてもね」

 そう言いながらカップのお茶を飲んだ。

「何やら勘違いしておりませんかね」

 領主様はにんまりと笑う。

「王国が我らに従えというならば、ほかのことなら従うしかないが、我らの武装を渡せというそれだけは従うわけにはいかないのですよ」

 相手は怒りのあまり卒倒しそうになっている。

「何故なら我らは世界を守っているだけだからだ」

 ああ、本当にこの二人は立ち位置が違うのだ。

「世界が滅んだ後、王国がどうなろうと知ったことではない」

 領主様はそう言い切った。

 そしてその言葉に合わせて大きく役所にいる全員が足を踏み鳴らした。

 規則正しく一定のリズムで。

 無表情に足を踏み鳴らす彼らに恐れを感じたのか男はその場を足早に立ち去った。

 去り際に唾を吐き捨てるのを忘れていなかったが。



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