ルーティン
僕は周囲の学友を見た。
僕がとっている授業は役人志望の人間かかなり大きめの商家の番頭になりたい人間がとるものだった。
そしてここで学んでいる人間はまず一生この街を出ることはできない。
ほんの短時間出ることは可能らしい。仕事の都合で数日別の土地に泊まることは可能なんだとか。
しかしべつの場所に住むことはできない。
どういう現象が起きるのか知らないが何かが起きるらしい。それを経験した人は誰もが口をつぐんでいる。口にするのも恐ろしいらしい。
だから、ほとんどの学友たちはこの街の運営に携わる仕事をする前提でこの授業を受けているんだろう。
だとすれば僕の進路はほかの学友たちと同じはずだ。だとすればなんでわざわざ僕を呼び出したりしたんだろう。
僕はそんなことを思いながら教科書を開いた。僕が悩んでも迷ってもそれでも時は着々と過ぎていく。
授業中に襲撃が始まった。
それぞれの持ち場にいつものように走った僕は、かつての僕のようにパニックに陥った人がその場で泣き叫んでいるのを見た。
無理もない、今日の敵はひときわ気色悪い。
ぬめぬめとした蜥蜴のような巨大な怪物がのし歩いている。
その人は恰幅の言い、結構上等な艶のある茶色い生地で重厚な服装をした人だった。そのままふんぞり返っていればかなり偉そうな風に見えるだろう。
口を大きく開けて悲鳴を上げているせいで整えた口ひげが歪んで見えた。
その人そ見ていたのはほんの数秒のこと、僕の身体はそのまま上空に移動する。
見下した先で陸戦部隊の誰かがその人を適当な建物に押し込むのが見えた。
僕の眼前には皮膜で飛ぶ蜥蜴が見えた。
うろこのあるムササビのような生き物に向かって僕はまっすぐに体当たりの態勢をとる。
僕が斬りつけた相手が傾いた後、それが火に包まれた。
ミランダさんも頑張っているなあ。
僕はそんなことを考えた。次々に火砲が撃ち出される。それをかいくぐりながら僕は空中を飛んでいく。
僕たちが飛んでいるんだから手加減してほしいものなんだが。
少し前の僕ならパニック起こして泣きわめいていたはずだ、いつの間にか僕もふてぶてしくなっていったな。
僕の背後で僕よりも大きな機体で飛んでいるマリアも頑張っているようだ。
マリアの機体は火を吐くことができる。
小さくちぎれた蜥蜴のかけらを焼き払っている。
ここまで苛烈な戦いが行われているのにどうして周囲の建物に被害が出ないのか本当に不思議だ。
ガラス扉が敵の体当たりに耐えきったしな。
ある程度掃討が終わると僕は校庭に降り立った。
同じように降りてきた空挺部隊の仲間はまるで掃除当番が終わったかのように穏やかな笑顔を浮かべて元の仕事場や授業に戻った。
いつの間にかルーティンになってしまったその日だった。




