雨が降ってきた
僕はしばらく考えていた。
それから殺人事件が続いたわけではない。それからしばらくは何事もなく平和な日々が続いた。
麗らかな空を眺めつつ僕は下校するために坂を下っていた。
「そういえばお前クラブはどうすんの」
なぜかドウとキュンの二人がぼくの後ろから歩いてくる。最近登下校でこの二人と行き会うことが増えてきた。
どうしてだろう。
「クラブね、そういえばどんなクラブがあるんだろう」
航空部隊のインパクトが強すぎてクラブ活動に気持ちがいかなかった。
「一応、入学するときはそうしたクラブ活動に興味あったんだけどね」
明日当たり調べてみるか。基本身体を動かすのはちょっと勘弁してほしいので文化的なクラブがあったらそこにしようと思った。
そういえばこの二人の家も知らない。方向が一緒なんだろうか。
僕はそのままてくてく歩いていく。頭一つ高い男たちを背後に歩いていくのは妙な気分だった。
そして、街に入る前にある手前の公園についたとき不意に頭に当たるものがあった。
雨が降ってきた。
「え、今日降ってくる予定だっけ?」
「天気ぐらい読めよ」
それなら二人は雨具を持っているのかといえば持っていないという。
なら言うなよ。
公園の中に小さな四阿があった。僕たちは雨を避けるためにそこに飛び込んだ。
古びたレンガつくりの四阿は蔦がびっしりとからまっていた。
屋根は上を見れば木製だった。
それも古びて灰色になっていた。
「これどれだけ前からあるの?」
そうつぶやく。明確な返事が欲しかったわけではないが。
「俺が生まれる前からあったらしいな。それ以上前は知らん」
ドウがそう言った。まあそれくらいだろうと思った。
そして僕たちは無言で降る雨を見つめていた。通り雨なら止むのを待てばいいがこのまま降り続けるなら濡れるのを覚悟で飛び出すしかないな。
不意に僕は覚えのある違和感があった。そしてそれを感じたのは僕だけでなくドウとキュンにも感じられたようだ。
ブレスレットが熱くなる。
火傷するほどではないが温ぎる風呂くらいの温度で。
思わず僕たちは腕を見つめていた。
とても嫌な予感がした。そしてちりちりするものを首筋に感じて思わず振り返った。
そこに灰色の男がいた。
それは微動だにしないまま雨に打たれていた。
僕はとても嫌な予感がした。最初にあった時からなんだか嫌な感じしかしなかったのだ。
そしてそれは背後の二人も同じようだった。
「なんなんだあれは」
ドウがつぶやく。
「だが。わかることもある、あれは敵だ」
そうしてブレスレットを撫でた。ブレスレットは熱を持っているがそれ以外の反応はない。
ゆらりとそれが揺れた。




