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私的哲学

名前を間違えられる話

作者: 羅志

 わたしの本名は、とてもありきたりな名前だ。

 名前は勿論、苗字にだって存在しているほど、ありふれている名前。

 キラキラネームのような当て字や難読でもない。

 けれど、よく間違えられる。


 わたしの名前を間違えるパターンは、二つ。


 一つは、最近はないものの、苗字と名前の組み合わせの結果、生まれる間違い。

 その間違った名前は苗字として実在するもので、発音の関係なのかそう間違えて呼ぶ人がいた。苗字と名前がごちゃ混ぜになって、そう呼んでしまうらしかった。

 自分の名前だからなのか、正直自分では、今でもどうしてそう混ざってしまうのか、理解が出来ない。

 当時のわたしはそれが実在する苗字だと知らなかったのもあって、その呼び名を嫌がらせだと思っていた。そう呼ばれるたびに不快に感じ、訂正を繰り返していた。

 覚えている限り、わたしをその間違った名前で呼んでいた人は、幾度訂正しても直らないまま、ずっと間違った名前で呼ばれ続けたけれど。


 もう一つは、今も昔も変わらずに存在する字の間違い。

 わたしの名前はありきたりなものだが、漢字ではなく平仮名だ。両親が考えていた名前候補の時点では漢字の予定もあったそうだが、わたしは平仮名で名前が付けられた。

 平仮名の名前というのは同世代でもあまり居らず、名簿で他の生徒の名前が徐々に漢字で表記されていく中、自分の名前だけはずっと平仮名のまま、などということもあったと記憶している。

 貴方の名前は漢字でどう書くの、と聞いてきた同級生もいたほどだ。その返答は、漢字はない、と答えるべきなのだが、一時期、周囲の漢字表記が羨ましかったわたしは、両親から聞いたことのあった候補にあった漢字での表記を教えていたこともあった。それも特別捻りのない、今も昔もありふれた至って普通の字だ。

 そんなありきたりでありふれた、もし漢字で書いても普通だったはずの名前なのだが、わたしの名前は、必ず同じ字で間違えられる。

 それは、わたしの名前が、「ず」ではなく「づ」だからだ。

 今でこそ数は少ないが「い」が「ゐ」、「え」が「ゑ」の名前の人がいるように、わたしの名前にある「ず」は「づ」だ。

 だから、ほぼ必ず間違えられる。訂正しても、間違えられたままのケースが多い。

 発音は「ず」と「づ」も同じだ。「ず」を平仮名で書く、と聞くと、殆どの人は「ず」を浮かべるだろう。文字で書く場合も、「ず」のほうが頻度は多いはずだ。

 ましてわたしの名前の場合、おそらく「ず」で読み仮名を振る人のほうが多いだろう。「づ」も確かにいるだろうが、比較的少数派なのではなかろうか。


 苗字と名前が混ざって呼ばれることは最近ではない。

 だが、名前の字間違いは今でも頻繁に起こる。

 キラキラネームが読めないから読み間違える、と言った人もとても多いだろうが、昔から読み書きを問わず、名前を間違えられる人というのは一定数いるのだろう。


 正直、どれだけ理由があろうとも名前を間違えられたくない、というのが本音ではある。

 が、読みや字が珍しい名前というのは、否が応でも間違えられてしまうのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者さまの「づ」と「ず」のように口頭だけだとわかりにくかったり、心太のように「しんた」ではなく「ところてん」の別の読み方が既にあったりとかで間違いはどうしても多発しますね。そのためのふりがな…
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