表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フーガの泥沼

作者: 奥田 繭

一枚一枚衣服を脱げば 

記憶に残るやわらかな肌が

人工的な光のなかでいびつに歪む


だれの手から生まれた形か

不自然で自然な凹凸の不可思議さよ

運命をうたう手のひらの無邪気さが

閉じて開いてを繰り返す


わたしはなにものにもなりたくなかった

わたしはわたしでさえもなりたくなかった

わたしは無、わたしはいない、わたしは……


ーーではきみの拳の中で震えているのはなんだ

大きな木の幹から声がする

ーーではきみの眼の中で燃えているのはなんだ

強く冷たい風から声がする

ーー今、きみを感じるきみはなんだ


暗闇も光も時間も空間も輪郭も痛みも喜びも恥も情けも誰かの声も温もりも匂いも重みも不在も

溶けあって混ざりあって境界線のない

ひとつのわたしになる瞬間が……


なぜわたしはいる なぜわたしはここにいる なぜわたしはここにいなくてはいけない なぜなぜなぜ……のフーガの泥沼


あおむけになって深呼吸して 

まだある手足を伸ばしてちょっと笑う


その笑いの余韻に漂いながら 

深く静かな歴史のはりぼてに爪跡を残そうと

自らの喉もとを引っかき続けよう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ