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5.お外

 土間の魔法陣はやっぱり外への移動手段だった。使い方に少し悩んだが、【鑑定】したらバッチリ。便利なことに外や広い空間でなら戻るのは思いのままのようだ。戦闘で危なくなったらさっさと逃げ込もう。


 出る方は指定が三箇所出来て、上書き可能。今、一個だけ指定があるのはオネェがしてくれたんだろう。なかったら出られないしな。


 さて、ご飯も家具もない所に長居は無用。明るいうちに布団と食べ物を買ってこよう。どこに出るのかね。


 出た場所は緩やかな丘の森、かなり離れているが下の方に集落が見えるのでセーフ。いきなり人前に転移で現れるのもあれだし、妥当なところだろう。


 とりあえず【鑑定】の便利さが分かったので片っ端から鑑定……とはいかない。だって魔法陣を鑑定したら魔力0になったんだもん。とりあえず食えそうなものを見つけたら幼女になって【鑑定】する方向で。


 村でお金単位教えてもらって、いろいろ買いたいけど徒歩だと遠い。途中、何か果物があれば万々歳だ。


 【気配探索】を試しにしてみたら、どうやらこっちは魔力の消費はないようで問題なくできた。


 あ、木の上になんかいる。


 そう感じて気配の元を探せば、ヤモリっぽいのが枝にへばりついていた。こんなちっちゃいのも感じるのか! 


 ちょっと興奮しながら気配を探る。あっちの方にヤモリっぽいのより大きな気配が一つ。気配の方に行ってみれば黒っぽい手足の細い子供がこっちに走ってくる。いや待って、あれはいわゆるゴブリンってやつですか? 鉤鼻の下で黄色い歯をむき出しにして、獲物を見つけて喜んでいるのか、ギャッギャッと声を上げて向かってくる。


 ぎゃあ! 俺のバカ! ガサガサ言わせてたら襲われるの当然だろう!! いきなりピンチです!!! 


 慌てて剣を抜いてゴブリンに向かって突き出す。いったん止まってくれたが諦めてくれる気はないようで、襲ってきた。


 戦っている最中息ができないほど必死だったが何とかなった。ノアールの能力なんだろう、パニック状態だというのにゴブリンの動きは良く見えたし、なんとなく次にどう動くかも予測がついた。


 それに身体能力がすごい。速いし力も強い、動いているもののあんな細部まではっきり見えるのも凄いを通り越して変だ。


「【ウィンド】」

現在、幼女でゴブリン狩ってます。正しくはノアールで気配を探って近づき、幼女になって魔法で倒してる。だって襲ってくるの怖いもん。慣れるまでこれで行く所存だ。


 そしてノアールの【気配察知】のほうが範囲が広いことと、身体能力が高いことも分かった。なので移動はノアール、攻撃は幼女と使い分けている。


 【ウィンド】は風属性の一番最初の魔法だ。攻撃力が高いのは【ファイア】なのだが、木々に燃え移って惨事になりそうなので止めておいた。ゲームでは気づかなかったが、風魔法は飛距離が火属性の魔法より長いみたいだ。


 最初から覚えている【ファイア】や【ウィンド】は魔力の消費が2だった。単純計算で四十回はいけるし、魔力は回復するので余裕だ。歩いていてもちょっとずつ回復するけど、座ってるほうがたくさん回復する。


 ステータスには【全魔法】とか書いてあったけど、ゲームでは火・氷・地・雷・風から三つ、光か闇で一つ選択ができ、その選択したものしか魔法が出てない。この世界に魔法があるのなら他のものも覚えられるのかな?


 ちなみに覚えているのは火・氷・風・光だ。雷もかっこよかったんだけど、使ってる人が多かったのであえて取らなかった。地もかっこいいんだけど、こっちは人が使ってるのみたら、画面が揺れるエフェクトで酔ったんで避けた。


 光は回復魔法と補助魔法、ちょっとだけあるでも強力な攻撃魔法。とりあえず今は最初の微々たる量の回復しか使えないので気をつけよう。


最初、生き物を倒すことの忌避感が襲ってきたけど、すぐ割り切った。この辺は【精神耐性】の恩恵だろう。精神的に強いというより、冷たい人間になってるのかもしれない。


 魔素が溜まったので存在レベルを一つ上げてみた! 


================

ロゼ=フジヅキ

存在レベル2(魔素*32/20)

生命*19/22 魔力*80/88

================


 そっと次に必要な魔素の量が上がっている。そして攻撃が当たってないのに生命が減ってる……。


================

ノアール=フジヅキ

存在レベル1(魔素*2/10)

生命*99/99 魔力*1/1

================


 って、ちょっと待って。ノアールは別上げなの? 


 慌ててノアールでも倒そうとする俺。ロゼで一回当ててから――って、レベル上げたら一撃。


 あー! あー! 弱らせて叩くもできないです。

 諦めてゴブリンとまともに対峙する。やな感じだ、動きも見えるし(かわ)すのも簡単、でもやな感じだ。 


 小鬼の魔素の量は個体ごとにちょっとだけだけど差があるみたい? 倒すのに時間がかかった個体のほうが多くもらえた。


================

ノアール=フジヅキ

存在レベル2(魔素*14/20)

生命*99/108 魔力*1/1

================


 ノアールは走って戦っても生命が減らない……ってもしや幼女は体力ないからか! たいして動いてないのに疲れたのは確かに幼女だよ。


 そしてあれだ、ノアールの魔力が1なままなんですが……。上がるよね? 激しく不安なんだが。【鑑定】もあるしせめて10は欲しい。

 ノアールで走り回って魔素を集める。レベルを上げたらこっちも一撃になった。


 ご飯、ご飯まであと半分ちょい! 塩おむすびで500もかかるんだよ! ハンバーグなんて5000だよ! 泣くぞ! てか、ごはん用の魔素もロゼとノアールで別ですか?


 ……走り回りましたが、ゴブリンがいなくなりました。おのれ!


 水の音がするのでそっちに向かうと小川があった。魚発見! 早速手頃な枝を落として得物を作る。竿(さお)じゃないぞ、(もり)のほうだ。水に影を落とさないようそっと近づき気配を探る。


 一撃目は外した。世の中そんなに甘くない、ほとぼりを冷ますために枯れ枝を集めて焚き火の準備。ゴブリンに魔法を当てるより魚に銛を当てる方が難しいとは……。再チャレンジして一匹ゲット!


 さて、幼女になってお魚さんの【鑑定】。寄生虫とか大丈夫だよね。結果は『マダラカワハゼ』という、(ひれ)に斑模様を持つ茶色い魚、ちゃんと食用表記もある。煮付け向き、調理の時は鰭の棘に気をつけよう、だそうだ。


 鍋なんか持ってないし、醤油もないわ!


 せめて塩が欲しいなあと思いながら、枝を積んだ上に魚を設置。よし、よし。


「ていっ! 【ファイア】!」


 上機嫌で最初から覚えている初級魔法を放ったら、地面ごと黒焦げだった。燃えるものがなくなって、地面がぷすぷすいってるのを聞きながら呆然と立ち尽くす。涙目だ。


「……こんなところに子供?」

予想外の人の声に顔を向ければ馬がいた。しかも二頭、白い馬が黒い瞳でこちらを見つめ、黒い馬がブフフンっと鳴く。


 さすが異世界、馬もしゃべる!


「何をしているんですか?」

違った、馬に乗った男がいた。身軽に白馬から降りて側にある木に繋ぐ。馬の首を労うように二、三度叩いてからこちらに近づいてきた。黒馬に乗っていた方の男は、馬から降りたがその場で待機のようだ。


 第一異世界人、第二異世界人との遭遇!


「魚を焼いていました」

オネェにはびっくりして素だったけど、俺だって知らない年上の人には普通に丁寧に話すぞ。そういえば一人称どうしようかな?


「魚?」

薄い笑顔だった騎士の顔が怪訝そうに変わり、俺の周囲を確認する。鎧は着てないが、剣を佩いて詰襟着てるし騎士だろう。偏見だけど。


「地面ごと焼けちゃったけど」

「……」

まったくもって残念無念。


「……どうぞ。食べながら少し待っていなさい」

騎士さんは立ち尽くした俺に多くを聞かず、持ち物からチーズをくれた。


 貰ったチーズは匂いに癖があって普段の俺なら避ける、けど今はお腹が減っている。黒い馬から降りた大男に何か言っている騎士の様子を眺めながら、チーズを口にすると、ジュワッと舌の下から唾液がでて迎え入れる。水分が抜けてちょっともそもそするが、今ならこのチーズを好物に加えてやってもいい。


 むぐむぐしていると枝を抱えた金髪爽やか騎士さんとガタイのいい男が戻って来て、ぷすぷすくすぶる地面からあっという間に焚き火を作ってしまう。


 そして現れる鍋とカップ、どちらも同じ金属製。取り出した鞄の大きさからして、それ以外入らないサイズな気がするけど、他の荷物はないの? 鍋が大事なの? でも今だったら同意してもいいよ?


「四倍程度ですが魔法鞄です」

じっと見つめる俺がよっぽど変な顔をしていたのか、騎士が答えをくれる。四倍というのは容量のことだろう。魔法鞄っていうのか。


「軽量化はかかっていないので重さはそのままだけれど、移動の多い身にはかさばらないというだけで大金を払った甲斐があります」

欲しいけど高いのか! でもあの金貨の山は当座の生活資金……っ! 生活が安定したらお金貯めよう。


 でもオネェの話だと将来作れるはず、そうだとすると高いことはいいことだ?


 騎士あらため、ハティがスープをくれた。小川で汲んだ水を沸かして、袋から何かを鍋に投入してたんだけど、それがスープの素だったみたいだ。添えて出されたビスケットは実に固い、むっちゃ固い。


「保存用で固いですから。スープに浸して食べるんですよ」

なんとか噛み砕こうと悪戦苦闘していたのをやめて、ハティの言葉通りスープに浸ける。あれか、ふやかして食うのか。


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