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アレクサンドリア空戦記  作者: k.syumisya
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第一章チェチェン編前編

時は二〇二八年世界はまだ冷戦下にあった・・・。


プロローグ

私はなんてむなしい仕事をしているのだろうと私はよくそう思う、まあ生きていくため、飯を喰う為、金を貰う為まあそのように考え付く。

数年前いやもう五、六年前はもっと充実していたと思う。

与太話を聞いてくれて感謝する。

私の名前はウラジミール・アレクサンドリアという。

まあ、このソ連にいる事が不思議な名前だと思うだろう実際、私もそう思う。

まあこれには訳があって御先祖様が貴族であったにも拘らずポリシェキビ〔共産党〕に協力したというのがその訳だ。

貴族の家系のためか私の祖父さんさんはスターリンに粛清されたそうだ。f

しかしながら幸運にも私はソ連空軍士官になった。

更に与太話をすると学業優秀だが家柄の良くない私はモスクワ航空大学に入ったのだが、航空科に回されたのだ、しかし私は幸か不幸か飛行士としての能力、素質に類まれなる物があるらしく最初二年の基礎課程で優秀であったため戦闘機科に回された、そこでシリア人の教官でエースパイロット、ファーイェズ=メンサー氏によって指導を受け無事戦闘機科の主席そして、航空科の主席として卒業し、当初望んでいた国営航空〈Aeroflot〉ではなくソ連空軍首都師団に回されたのである。

首都師団といえば名前はいいが実態は殴り込み部隊で第二次イラ=イラ戦争では被害率一五〇%を超えた死の部隊だ。

着任した私は最新型機のSu33のパイロットとなり訓練を続けていた。

そして五年程したころ、運命は訪れた。

二〇一九年五月にダマンスキー島で偶発的衝突が起こり我々首都師団は六月にシベリアに寝床を移した。

私作戦に参加したその作戦とは大量の攻撃機でダマンスキー島を占拠する中共軍に打撃を与えるというものだ、勿論中共軍はダマンスキー島を死守せんとし大量の戦闘機をダマンスキー島空域に配備していたので我々戦闘機部隊総勢30機は露払いの任につくわけだ我々は中共軍はどうせJ-8(Su15の中共軍版)を持ってくると高をくくっていた。

その慢心からかだらけきっていた、しかし中共軍はMig29総勢100機で挑んで来たのだ、ファーストコンタクトでこちらは5機ほど落とされた。

しかし私は果敢に中共空軍を攻撃し一度の空戦で10機余りを撃墜しその後の空戦で更に数機を落とし私は正真正銘のエースパイロットとなった。

しかしその数度に渡る空戦で中共軍の強さを認識したソビエト中枢は臆病風に吹かれ中共と停戦条約を結びダマンスキー島の事実上の空白地帯化を決定した。

ペレストロイカで疲弊しきっていた祖国には経済発展中の中共と戦う力など最早持ち合わせていなかったのだ。

だがこの事実上の降伏は国内でそのまま発表すれば国家崩壊の危機にもなりかねなかったのだ。

それを受け中枢は私を国家英雄としソ連英雄より一段上の新設したレーニン主義戦士英雄勲章を授け国民を戦勝ムードに見事に作り上げたのである。

戦後試験航空団に配属され各種試験を行ったが上官がソ連国家独特の軍内部の政争に巻き込まれ閑職に飛ばされたため、私はシベリアでの空軍士官として地上部隊の任につくこととなった。

その任はたった一人の若い軍曹と共に各種事務作業プラスαをこなすというかくも、くだらない任務であった。


二〇二八年 一〇月 一〇日

「少佐起きてください、無線ですよ」

「なんだ、軍曹、朝からなんだ」

「少佐同志 まず、今は真昼間ですシベリア標準時間で十二時ですよ。」

「ハハハそうか、すまんな軍曹で、用とはなんだ?」

それに呆れたように軍曹が答えた

「無電によると重大放送があるそうです」

「そうか・・・」

露西亜の伝統の様な物で上司は部下の前で気長に振舞わなければいけないというのが有る

此れほど面倒くさい事は無いとおもったが、党の書類の書式のほうが面倒くさかったかまあ、このソ連という国は面倒くさい。

暫くし、重大放送があるという内容をひたすら流し続けていた無電が三十秒ほど何の音も流れずどうしたかと思えば、陸軍放送のアナウンサーが声色を変え言った。

「これよりベリヤ陸軍元帥同志より重大放送があるので心して聞け」

その後ビープ音のような音がなり、国営放送の女性アナウンサーが口を開いた。

「これよりベリヤ陸軍元帥同志の重大演説が始まります、なおこの放送は全てのラジオ局、TVチャンネル、短波ラジオ、官公庁無線にて放送されます」

そして五秒ほどの沈黙の後、ベリヤ陸軍元帥が演説を始める。

「同志諸君!今我が祖国は重大な侵略行為によって領土が侵されている!それをしたのは誰か?そう米帝とその傀儡のNATO共だ!我が祖国の重要な一部たるチェチェン共和国が攻撃されているのだ!・・・」

これから三十分ほど退屈な演説が続いた。

「これより各地方向け放送に移行する」

男性アナウンサーがそういうとブチッと言うような音がして、地元部隊の通信隊の軍曹が放送を始めた。

「これより基地への呼び出し者を放送する、放送に名前のあった者は近隣の司令部に出頭し各種指令を受けること」

「ヴォルギン中尉、アレクサンドリア少佐・・・」

私は動揺したいくら前の金門島で戦果を上げたとはいえ戦闘機には五年は乗っていない。しかし冷静そうに部下に指示を出す。

「同志とりあえず一番近い第三基地に車を回してくれ」

軍曹は体をこわばらせ答える。

「了解です同志」

その緊張を解すために雑談を仕掛ける、それで事故などされたら困るのだ。

「なあ、軍曹よ話は変わるがこんな、偉大なるレーニン同志万歳みたいな看板で国家は良くなるのか?」

私は左手に見えたアジテーション看板をみて軍曹に語りかけた。

「そのようなことを考えるのはは同志のような大学をでた秀才がやるのでは?とにかく貧乏農家の三男坊には解りかねます」

と、戸惑いながら軍曹は答えた。

「まあ、そんなもんか?」

つまらなさそうに答えると、軍曹はにこやかに笑い本題に戻した。

「ええ。まあ基地に向かいましょう」

適当に答えてやった。

「まあ、いいから頼む」

「はいはい」

と軍曹が嘆息交じりに答える。

車は大通りへ出て行く。

「寒いな」

「ええ」

軍曹は気を取り戻して尋ねてきた

「少佐同志、頼みが有るのです」

神妙そうに軍曹は尋ねたから、私も神妙そうに答えようと思ったが基地に着くのだ、一度おわりだ。

「基地に着くぞ、話は後だ軍曹」

基地のゲートに着き衛兵が我々の車に対してライフルに付けた銃剣を形式的に突きつけ、衛兵は口を開く。

「同志、官姓名を述べよ」

私はそれに応じ軍務手帳を突きつけ、応答した。

「空軍第八五極東隊所属、ウラジミール=アレクサンドリア少佐だ」

衛兵は姿勢を正し応えた。

「少佐同志、司令官がお待ちです直ちに大佐に出頭してください」

車を正面玄関につけ、車のドアを開け静かに降りる。

そして軍曹に耳打ちする。

「ここは陸軍基地だ、行動は気をつけろよ」

軍曹は静かに頷き、車を駐車スペースへと走らせていく。

私は玄関を開け中に入っていく、玄関の衛兵にも呼び止められるかと思ったが、ゲートの衛兵が連絡を済ませているようであった。

中に入ると陸軍庁舎特有というか、極東地域の役所特有の効きすぎた暖房を受けコートを脱ぎ、近くの兵士に話しかける。

「おーい、そこの君」

五メートルばかり前にいた兵士、おそらく徴集兵だろうかを呼びかけた。

「はい、なんでしょう?」


少し戸惑ったような声で答えこちらを向いてきた。

「司令官室はどこかな?」


兵士は私の方のあたりと胸のあたりを凝視した後、直立不動の体勢となった。

「はい、通路の突き当りを右に回りしばらく進めばエレベーターがあります、それで五階に行き目の前が司令官室であります」

私は薄暗い廊下を歩き、エレベーターに乗った。

そして、降りると目の前に司令官室があった。

「失礼します、司令同志」

私は司令官室の木製のドアを叩きつつ、そう言った。

「入りたまえ、少佐同志」

その司令官はわざとらしい低い声でこたえた。

「アレクサンドリア少佐であります、大佐、指令は?」


老大佐はゆっくりと口を開け話し始めた。

「うむ、少佐同志への私が伝える手筈になっている指令はウラジオストク空軍基地への出頭命令だけなのだが」

私は困惑した同じ極東地域とは言え此処のような辺鄙な都市からはかなり時間もかかるし距離もあるのだ。

「うむ、君が当惑するのもよく分かる出頭期日は明日の午後一二時までだから安心したまえ」

私は口を開き老大佐に問う。

「明日までなど、航空機でなければ装甲車を使って今から言っても十中八九遅れます」

老大佐は頷きつつ笑みを浮かべ、話し始めた。

「君は明日の定期便に乗ることになっているのだよ。出発時刻は午前一〇時だよろしく頼むぞ」

私は直立不動の体勢をとり敬礼をし、退室した。

そしてエレベーターを降り建物の玄関の先には軍曹が待っていた。

「早かったですな、少佐同志」

わざとらしくかしこまって話しかけてきた。

「ああ」

私は手短に答えた。

そして二人は車に向かった。

「閣下目的地は?」


ふざけて言ってきた、いつもなら叱るとこだが明日でこの面白く可愛らしい軍曹が部下なのが最後とは感慨深いので怒らないでやった。

「よし、基地に帰るぞ」

不思議と基地までの帰路に言葉は生じなかった、二人は話したら悲しく感傷的になるだけというのがわかっていたからだ。

「もうすぐ着きますよ」

物思いに耽り目をつぶっていたのを船を漕いでいるのと思ったのか、声をかけてきた。

「ああ」

私は静かに答えた。

私は時計の文字盤を見ると午後四時をまわっていた。

「おい、軍曹スーパーによってくれ」

私はそう呼びかけた。

「了解です少佐同志」

軍曹は素直に答えた。

静かに車をスーパーの駐車場に滑り込ませ、二人は店に入っていった。

「少佐、なんでよったんですか?」


私は笑いながら答えた。

「どうせ宴会になるだろうからな、あと少し日用品を買っておきたい」

軍曹は感心したように頷いていた。

私はウオッカを幾本かと、下着歯磨き粉などの日用品と軽いツマミを買った。

軍曹はタバコと安ワインを買っていた。

二人は店を出て基地へと帰っていった。

基地では大宴会が開かれたがまたそれは別の話である。



二〇三八年 一〇月 一一日


朝だ、クソみたいな目覚めだ、やはり昨日は飲みすぎた。

以前に輸送隊の少尉から買った日本産の酔い止め薬を飲んだ。

彼の言うところにはこれは滅法効くらしい。

「よし、便所でも行くか」

便所に行き用を足し顔を洗い髭をそった。

なんだか薬が効いているのか幾分体が楽だった。

荷物を纏めてあるのを確認し、ベッドの下やマットレスの裏クローゼットの隅などを入念に見回った。

宿舎に住み着いてる猫にツマミの残りを遣り、頭をなで、どっかに行くのをボーっと見つめていた。

そして我に返りシャツに腕を通し礼装を着る、引っ越しのとき礼装を着るのは空軍独自の文化らしい。

そんなくだらないことを考えたり掃除をしている間に朝食の時刻になり、ブザーが鳴る。

食堂に行かなければならない、だが皆はちゃんと起きられただろうか私は先に宴会を御暇させて貰ったが、連中は少なくともあと三時間は飲んでいただろう。

「お早うございますおばちゃん、今までお世話になりました」

食堂のおばちゃんに別れの挨拶をする。

「寂しいわ、この基地からイケメンが誰一人いなくなっちゃうじゃない」

おばちゃんは悲しさ寂しさをごまかすように笑っていた。

「大盛りで」

いつも通りの注文をする。

「アイヨー」

それに返されるのはいつも通りの返答だ。

そして明らかに二日酔いな兵士達が一部寝間着姿のまま食堂にやってきた。

わたしは兵や下士官、尉官、佐官すべての人に挨拶を出来るだけした。

上官、下官問わずから餞別をくれたありがたいがほとんど断った。

軍曹を呼び止めた。

「今までありがとう」

軍曹は涙ぐみながら答えた。

「こちらこそです」

私は司令室に向かった。

「失礼します」

その言葉と同時に開けた。

「いってらっしゃい」

大佐は一言静かにそう言うだけであった

私は玄関に荷物を纏めて、行くとみんなが居た。

皆は私に拍手した私も涙ぐんでしまった。

私は軍曹に車を走らせてもらい、輸送機のハンガーに向かう。

「よろしく頼む」

機長に話しかけた。

「こちらこそだ、少佐同志」

気のよさそうな機長が答えた

「あとどれぐらいです?」

私が尋ねた。

「あと少しですよ」

その言葉を聞き、私は少し安心し輸送機のコックピットの中の客席に座りベルトを締め、目を閉じた。

起きるとウラジオストクに 到着していた。

「本機への搭乗感謝する」

少し茶化したように機長が言う。

「良いフライトでした機長殿」

私もおちゃらけて返した。

その後すぐ副機長が簡易乗降タラップを降ろし、皆と一緒に機を降りた。

「少佐殿お待ちしておりました」

そう野戦服を着た尉官が話しかけて来た。

私はどうも怪しいと思ったのだその訳は感というのもあるのだが勲章を一つも付けていないことである。

勲章を一つも付けていない尉官というのは、十中八九情報部の人間である。

「こちらへ来てください」

完全に尉官のペースに乗せられている、流石情報部の人間といったところだ。

私は逆らってもしようがないと思い自ら彼に着いていくという旨の発言をした。

「行きましょうか少尉」

彼は少し驚いたような顔を一瞬したが情報部の人間特有の笑顔をして静かに頷き肯定するだけであった。

彼に着いていくと、さっきまでの輸送機の連中が向かった待機所とは真反対に向かっていく。

機長と目が合い会釈をするとあちらも会釈で返してきた。

「おい?どこに行くんだ・・・」

彼はにこやかに微笑むだけであった。

私はこれは銃殺されるだとか放射性物質を注射されるだとかされるような気がしてならないのであった。

「ここです」

と彼はいい一つの今は使われて居なさそうな爆撃機用と思われる掩体壕の前で立ち止まったのだ。

此処で殺されるのかと私は覚悟を決めていた。

「何を怯えているのですか?少佐同志」

彼はそう尋ねてきた。

「私は権力争いに負けた身だ・・・」

彼は驚いたような顔をし口を開いた。

「確かにソ連空軍士官アレクサンドリア少佐としてのキャリアは半ば終わったようなものかもしれませんが、飛行士アレクサンドリア少佐は国民、兵士、将軍、党上層部全てが期待しています」

私は驚き感謝の弁を述べた。

「そんなことなどいいのです、それよりハンガーの中に入りますよ」

そう言ったかと思えばポケットから無線機のようなものを取り出し操作すると、掩体壕の扉が自動的に動き始めた。

「これは・・・」

私はとても驚いたのだ。

なぜなら半ば都市伝説とされていた機体、Su47があったからである。

「少佐同志には、これに乗っていただきます」

私はふざけて答えた。

「乗らないと言ったら?」

嘲笑するような目をし口を開いた。

「あなたが想定していた事態が起きます」

私は笑いながら答える。

「冗談です、乗りますよ同志」

そこからは事務的な口調で話しだした。

「少佐同志には一路この機体でヴォルゴグラードに飛んでもらう」

「はい」

「質問は?」

「与圧服など各種装備はどこに?」

「後ろの便所のところにある、それとなるべく早く出撃してくれ。後シャワーもあるシャワーぐらい浴びたほうがいい」

「了解です同志」

「よろしい」

便所で用を足し、私はシャワーに入っていた。

(私は再びエースになる機会を神様がくれたのか・・・代々受け継がれたイコンの御利益かな)

などと思考を巡らせていたがきりがないと思いでて髭をそった。

体を拭き体を与圧服に押し込む。

そして整備班の人間に押し込んで貰わなければそもそも乗れないのだ。

「おっさん!頼む」

初老の整備班長とみられる男は似合わない真っ白の歯を輝かせ答える。

「いいぞ、わしがやってるやる!なんたってお前さんは二一世紀最高の戦闘機エース何だからな


持ち上げられ私の身体は狭い戦闘機のコックピットに押し込まれる。

「計器の確認は?


顔を上げ初老の男は答える。

「やれる限りはやってあるから、そっちで確認しろ」

私は頷き計器を確認する。

よく整備されているようだ、見るところ問題は無い

「おい!少佐同志出撃だ」

彼の声で無線が入る。

「了解です」

「貴機のコードネームはヴォルゴだ」

「わかりました」

彼は一息つきこういった

「私からは以上だ幸運を願う」

ブチッと言うような音がして、周波数を変えろという自動音声が流れる。

そこへダイアルを回すと管制官が交信してきた。

「こちら管制官ヴォルゴ機、聞こえるか?


「聞こえるぞ」

「貴機はこれよりしばらくA124-57を名乗れ」

「了解」

「A124-57機は第三滑走路より離陸せよ」

私は第三滑走路まで色々とマニュアルを読みながらタキシングしていた。

ふとするともう第三滑走路についていた。

「こちら、A124-5離陸する」

管制塔から無電が帰ってくる。

「了解。直ちに離陸せよ」

私は計器を確認し、無電を入れる。

「計器オールグリーン。いつでも行けますよ!」

管制塔から無電が来た。

「了解。A124-57離陸せよ」

私は最終チェックを行う。

「計器オールグリーン。エンジン圧力数値規定値内。油圧良し。エンジン回転数上げ良し。エンジン同調良し。エンジンフルスロットル。アフターバーナー点火良し。離陸!」

エンジンが快音をあげシベリアの空へ新しい愛機が上昇してゆく。





二〇三八年一〇月一二日 ヴォルゴグラード


途中で何度も空中給油を受けなんとか午前三時にヴォルゴグラードに到着し。

「こちらA124-5機、管制官指示願う」

二〇秒くらいしてから返信された。

「一番滑走路にそのまま真っすぐ突っ込んでくれ」

指示通り着陸した。

その後はその日は休息日であったので一日中寝ていた。 

 重い体を起こしふと腕の方に目をやると、丁度七時を回ったところであった。

であるから食堂に行こうと思い、寝ていた外来士官用個室を出て、外を見回した。

外を見回すと誰もおらず取り敢えず、この棟の一階のエントランスホールに降りようと思い階段の方へ歩いて行く。

薄暗い階段を降りると綺麗な現代ロシア的建築によって色とりどりに装飾されており、此処に長いと思われる、中年の士官が居た。

肩章と胸章をみたところ大佐のようだ。

「大佐同志、食堂はどこですか?」

いきなり話しかけられ少し驚いたように返してきた。

「この棟の食堂は窓側の廊下を進んだ先だよ」

「ありがとうございます、大佐同志」

「例には及ばんよ、どうだ?一緒に飯でも食わんか?少佐同志」

「ええ、ご一緒させていただけると有り難いです何分私は長く現役から離れていたのですから」

「私も君と食事ができて嬉しいよ・・・それと聞きづらいのだが一ついいかな?」

申し訳そうにというか少し戸惑いつつ尋ねてきたので私も少し神妙になって答えた。

「ええなんでも構いませんよ大佐同志・・・」

大佐は一呼吸おき話しかけて来た。

「もしかして君は国家勲章を受勲したアレクサンドリア少佐同志ではないかと思ったのだが違ったら申し訳ない」

このような発言を七時過ぎの食堂の入り口でしたものだから皆の注目と視線が私の方にズーッとよってきたのである。

尋常ではないざわつきようであった、それは私が言葉に詰まった一〇〇分の一秒ごとに視線は増えていきその視線からの好奇心は増えるばかりであった。

私は観念し答え自らが置かれている状況、今までの経緯それらを夕食を取りながらできるだけ話せるだけのことは話した。

それに対し彼らは真剣な眼差しで私のする話を聞いていた。

私の話に対し軍の体制に対し怒りや、義憤を抱くものも居たように見えた、これは私にとっては意外な反応という以外の何物でも無かったのである。

私のこのような身の上は全て貴族出身であるから故であり父からも言われていたが自らに不運が降り注いでもそれは貴族出身であるからの私憤でしかなくしっかりとした公憤(つまるところ義憤である)ではないと耳にコブが出来る程聞かされてきたのだ、それが皆に義憤として受け入れられているのだ、これは至上の喜びであった。

その日は酒は辛うじて開けなかったが、語り尽くし私は戦場に赴く前夜だというのに、少しばかりの幸福感と満足感を得ていた。

その日はシャワーを浴びすぐに寝てしまった、その日の眠りは大学の合格の知らせを聞いた日よりもずうっとぐっすりと眠れた。
















二〇二三年一〇月一三日ヴォルゴグラード

 

 朝だ、起床ブザーの音が鳴り響くというのが軍隊の朝の定番であるが調子のいい日はそれの十五分前に起きれるのだ。

今日はとても目覚めが良い、体も不思議と軽いし心も今まであった引っかかる物が全てなくなったようであった。

昨夜のことが影響しているのだろうとか思いながら、便所へ向かいようを足し、顔を洗いそして剃り野戦服に着替えて、食堂へ向かう。

「おはよう!英雄同志」

後ろからプーチン中佐が話しかけて来た、彼はパイロットではなく管制科の人間だが同じモスクワ大学航空機科の先輩なので、昨夜は親身に話を聞いてくれた、親戚が今のソビエト連邦首相ウラディミール=プーチンらしいという話だが本人からは聞いていないので、それについては真偽は不明だがそれを鼻に掛けるような言動をしていないのだからできた人間なのだろう。

「おはようございます中佐同志、英雄同志はやめてくださいよ。流石に恥ずかしいです・・・」

そして件の中佐は私の耳元にふわっと近づいてきて耳打ちしてきた。

「その呼び名はやめてやる、それと・・・」

含みを持たせた発言に私は神妙に耳打ち仕返す。

「なんです・・・?」

「おそらくだがアレクサンドリア君今日から出撃だ」

私はその言葉に驚き少しの間立ち尽くしてしまった、。

その間に中佐はどこかへ言ってしまっていたようだった。

その驚きの知らせを胸に仕舞い取り敢えず朝食を摂る。

 そして自室に戻ってきたのだが、その間にも色々と話しかけられていたはずなのだが心ここにあらずと言った感じで全く頭に入っておらず話した内容の記憶など当然ない。

それでも心を落ち着かせるために新型機のマニュアルを読みながらティーパックの紅茶を飲んでいた。

そこにブザーが鳴り響きやる気のない下士官の放送が始まる。

「至急放送!至急放送!繰り返すアレクサンドリア少佐は直ちに空戦指令所第一会議室に出頭されたし繰り返す・・・」

やはり招集がかかったか・・・

しかし行かない訳にはいかないので、任務に必要なもの一式を纏め件の放送で支持された場所に向かう。

 指令所の前に来たが第一会議室はどう見ても天幕なのである。

しかしそのようなことを気にしてもしようがないので官姓名をなのる。

「アレクサンドリア少佐であります。入室許可願います」

二呼吸ほどして中から司令官と思われる少し年老いた声が聞こえた。

「入りたまえアレクサンドリア少佐同志」

私は扉を開け司令官の座っている椅子の前、と言っても長机を挟んでいるがの前で直立不動の敬礼をした。

「アレクサンドリア少佐ただいま参上仕りました」

老司令官は頷き口を開いた。

「楽にしたまえアレクサンドリア同志。私はエリツィン大将だこの作戦を任されている。挨拶はこれぐらいでいいだろう。本題に入ろう。君は上官が権力争いに負けたという不幸により左遷されてはいたが君の飛行士としての能力は類まれなる物がある。それを党中央軍事委員の左にいる今作戦では戦闘機部隊を率いることになっているイラリオン大佐だ。彼には感謝しなさい彼は君の飛行士としての才能を見抜きわざわざ推薦してくれたのだからな」

大佐が一拍も置かずに口を開く。

「急で済まないが早速ブリーティングだついてこい」

というと早足で天幕を出た。

「立ち話ですまないが、君への任務を説明する。復帰戦早々ですまないが精鋭飛行分隊を率い敵輸送機回廊へ奇襲をかけてくれ。君の率いる分隊のみでの単独作戦だ」

「私が率いる事になる分隊の戦闘機は全て最新のSu-47戦闘機なのでありますか?」

当然というように自信満々に大佐は答える。

「無論そうだ。それはそうと戦闘機部隊の天幕につくぞ」

二人は天幕へと入っていく。

それから作戦のブリーティングがあったがそれは先程と同じ内容なのでずっと頭のなかでシュミレーションを行っていた。

「これより分隊員の自己紹介を行う。まずは隊長からだ!」

大佐の号令とともに自己紹介が始まった。

「アレクサンドリア少佐だ一応エースパイロットだ。少しブランクがあるのでよろしく頼むぞ」

「アナンコ大尉だ首都師団所属だ」

「ワシリエフ中尉だ防空軍極東師団より転属してきた」

「バルマー少尉でありますドイツ民主共和国空軍より派遣されております」

「金大尉だ朝鮮民主主義人民共和国空軍より派遣された」

「イェン中尉であります。ベトナム社会主義共和国空軍より派遣されました。自分とキム同志は補充要員の予定であります」

一通りの自己紹介を終え、そのブリーティングを終え、大尉を呼び止めた。

「大尉同志、きみを副分隊長に任命する」

「拝命致します、アレクサンドリア少佐同志」

そして大尉に意見を求めた。

「補充要員の分の機体もあり出撃させてもいいことになっているが、大尉はどう思う」

「私としては出撃させるべきだと思います。なぜなら今回の作戦の主敵は敵輸送機です、彼らは多少練度は落ちますが、輸送機程度はやれるでしょう。我々が敵戦闘機を引き付けてる間に彼らに輸送機を落とさせればいいのです」

私は頷きその旨を伝えるよう指示し、彼らは去った。

「少佐同志どうです?あなたの分隊は私がワルシャワ条約機構軍の中のエースパイロットを引き抜いてきたのだ、不足はないだろう?」

「ええ、勿論です。協力感謝します大佐同志」

「ああ、それと作戦は此処を明日三時に出撃することになる」

「失礼します、大佐同志」

「ご苦労」

一連のやり取りを済ませ天幕を出ると分隊員がいた。

「同志諸君取り敢えず打ち合わせをするぞ。しかし私は此処には昨日きたのだ、どこか打ち合わせにいい場所は無いのか?わかる奴はいるか?」

中尉が答える。

「そこまで機密性が問われないのであれば士官食堂、問われるのであれば第四ハンガーの待機室などはどうでしょうか?」

ハキハキと的確に答えたのできっぱりとすぐ答えようと思ったがこの打ち合わせってそもそも機密性が高いんだか。

まあ備えあれば憂いなしとも言うしこのドイツ人は心配性だろうし待機所にしておくか。

「よし待機所にいくぞ諸君」

それから他愛ない話が続いたり続かなかったりしたりしている間に第四ハンガーについた。

「中尉同志ここか?」

「はい」

「これドア開いてないだろ」

「立て付けが悪いだけです」

と中尉は言い思いっきり右腕で叩くと開いた壊れたとかではなく普通に開いた。

「開いたな中尉同志」

「ええ、中はきれいですよ」

中はかなりきれいだったと言うより最近きれいにされていた。

「不自然に待機所だけキレイだな流石ドイツ人だ」

そのような不躾なことを金少尉が言った。

「あまりそういう皮肉を言うもんじゃないぞ少尉同志」

不平そうに金少尉は頷いた。

「よし!これより打ち合わせを開始する!」

その打ち合わせは昼食と夕食を挟んだとはいえ夜一〇時まで白熱した議論、提案が行われかなり分隊の空気が良くなった。

しかし出撃の時間が早いので早々に終わらせた。

私は自室に戻りシャワーを浴び着替え翌日の作戦のための物を用意し、整備班長に酒を贈りよろしく頼んでおいた。

此処の整備班長は酒を贈ればよく整備すると有名であったので普通に買える一番いい酒を贈ったのだ。

その日は胸の高なりはあったがまずまず眠れた。















  二〇二三年一〇月一四日 ヴォルゴグラード


 目覚ましが鳴り起き上がり目覚ましを止め目覚ましの文字盤にふと目をやると丁度一時半であった。

我々の分隊の機体が置いてある地下ハンガーに行くと整備中でまだ分隊員もいなかったので整備班長に話しかけた。

「早朝からお疲れ様です整備班長同志」

「いいんだよー!あんないい酒貰えば俄然やる気が出るってもんよ!なぁおまえら?」

それに呼応し整備班員達が雄叫びを挙げる。

「ほらっあいつらもそーいってんだから。少佐殿はバーンと構えてりゃいいんよ」

整備班長はそう言い私の背中を叩いてきた。

「おねがいします班長」

「おうよ」

私はハンガーを後にし待機室のシャワーを浴び、分隊員を待つ。

その間に全員の救命用具を点検する。

パラシュートをたたみ直し、護身用拳銃に弾が詰まっているか、雷管が乾いているか、信号拳銃の期限が切れていないか、ライトに新品の電池を入れ、クロノグラフの時間を正確に合わせとしているうちにドイツ人中尉が現れ手伝うと言ってきたがシャワーを浴びるよう指示し、着替えさせその後自らも着替え終わりその直後残り三人が来て彼らも着替えたが、金少尉が来ないのである。

「遅いですね少佐同志」

副隊長が言う。

「そうだな・・・」

その後イェン中尉が金少尉を読んでくると言ったのでその言葉に甘え頼んでから十分がたとうとしていた。

地下ハンガーから士官棟はそんなにはなれていないのだ。

「遅いなワシリエフ中尉」

「そうですね、あと五分以内につかなければ遅れてしまいます」

「そうだな・・・」

明らかにワシリエフ中尉がイライラしていた。

タンタンッというような音がして。

「隊長失礼しました」

と東洋人二人が頭を下げてきた。

「いいから着替えなさい」

イェン中尉はがかなり金少尉を叱責していた。

「エンジンも温まっています、着替えた皆さんは操縦席に入ります?」

整備班員がそう言ってきた。

「よろしく頼む」

小型タラップが掛けられ機体中央から滑り込むように搭乗する。

Su-47は前進翼を採用しているので搭乗方法が特殊なのだ。

しばらくして東洋人二人も登場したことを確認し、移動用モータで全機がエレベーターの位置まで移動し待機した。

「機器チェック開始せよ」

各メーターを確認する。

この機体は最新型機ではあるものの試験機であるので、信頼性重視でヘッドマウントディスプレイなどは採用せず、機械式のメーターパネルが主体だ。

エレベーターがせせり上がり地上に出た。

「こちら管制官発信可能か?」

「こちら分隊長機特別コードネームA-1」

(コードネームA-1とはその空域で最も優先される機体という意味だ)

「了解、A分隊はエンジン確認が済み次第第一滑走路より発進せよ」

「了解。こちらA-1隊長機エンジンオールグリーン!離陸許可願う」

「了解。離陸せよ」

「離陸開始。エンジン出力最高、アフターバーナーA,B点火」

それから機首を上げまだ明けぬ空に飛び立って行く。

高度一〇〇〇ftまで機体を上昇させ全機離陸するのを待つ。

「隊長、全機離陸完了!最終離陸機の金少尉もあと三分で合流します」

しばらく鼻歌を歌っていると金少尉の機体が合流してきた。

「総員チェチェン共和国東端の輸送機回廊まで巡航飛行。自動航行機能を使用せよ」

この飛行は彼らには言いづらいが新型機のデータ取りのような側面がかなり大きいのだ。

ひたすら雲海や雲上を飛行し続けてき防空圏に入る。

「総員警戒せよ。自動航行をいつでも解除できるようにしろ」

「「了解」」

本機は多少のステルス能力を持っているものの不完全であるので気を付けないといけないのだ。

「敵索敵レーダー波検出!」

「只今隊長機索敵レーダー波射出中本機より全機最低三〇〇〇メートルの距離を取れ」

レーダーの画面を注意深く覗く。

「敵影は輸送機及び爆撃機、ヘリコプターと見られるものしかない」

副隊長は確認するように尋ねてくる。

「一四時方向の敵輸送機飛行集団への襲撃でいいのでしょうか?」

「よし、攻撃開始だ!」

全員が頷き攻撃を開始する。

「敵輸送機との接敵まで後三分だ。総員機銃の試射及び兵装システムの試験を行え」

各機が機銃の一連射と兵装システムの試験を終えた。

「エンゲージ!」

各機が敵機との戦闘に入る敵は輸送機であるから圧倒的な嬲り殺しであった。

「余裕だったな!」

金少尉は大声で無線も切らずに叫んでいた。

私はふと索敵用レーダーのテレスコープを覗くと、敵影が見えたサイズから見ると戦闘機だ。

「敵機襲来!ブレーク!ブレーク!」

敵機からの射撃管制用レーダを当てられているということを意味する警報音が鳴り響き、フレアとチャフを撒きながら右上にアフターバーナーを点火し急上昇する。

「各機無事か?」

そして叫び声が聞こえた。

「こちら金少尉主翼に被弾した」

レーダーを確認し、金少尉の方を見ると黒煙を上げながら燃え尽き落ちていくとうようなところであったので少尉に指示を出した。

「直ちに脱出せよ!」

金少尉は無線を引っこ抜いたようであった、これで脱出するかと安堵した。

朝鮮人パイロットは伝統的に脱出を嫌い的に体当たり攻撃を与えるのが伝統とされていた。

「隊長、金少尉が!」

副隊長の叫びを効き金少尉の機体が飛んでいるのであろう方向を見ると、アフターバーナーを点火し、イェン中尉の機とドッグファイトを行っている敵戦闘機F-22戦闘機へと体当たりを仕掛けんとしていた。

「やめろ!金少尉無謀だ」

そんな悲痛な隊長の叫びは無線を切っていた彼には聞こえるはずが無かったのだ。

ところが無線をつなぐプラグが擦れるおとがしたと思ったら彼の叫び声が聞こえた。

「朝鮮民主主義人民共和国万歳!」

彼の叫び声は朝鮮語であったから彼らは理解し得なかったが、彼らの脳裏に一致してるであろうことは、彼がプロパガンダ的な事柄を言い戦死したという事実だけである。

「イェン中尉現状を報告せよ」

「繰り返す、敵機は撃墜された!」

彼が戦友である金少尉が亡くなった事によって錯乱したのかと思ったが一応確認するとレーダーから先程見たときから消えた機影が二つあったので金少尉の体当たり攻撃は成功したのだろう。

「敵機影消失…」

副隊長はそう告げた。

「作戦成功。総員帰還せよ」

作戦は成功したが完全に雰囲気としては負け戦である。

敵輸送機回廊へは重大なダメージを与えられたがこのような簡単な作戦で負けてしまった分隊はバラバラになってしまう。

 基地に着き隊員達が機を降りる。

「ご苦労」

訓示を送り敬礼をし挨拶をして、司令部に向かう。

「大成功だったな!少佐同志」

彼らの中では成功だが私の中では失敗だ…

失意の中私は食堂に向かうと大宴会になって一応は成功らしい・・・

戦場でこんなに気にしているのは私だけだろう。

明日からの訓練を頑張らねばと思い床についた。


初投稿です、ご拝読感謝致します。

できれば続きを書いていこうかと思います。

どうぞ宜しくお願いします。

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