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真戯武装パワードフォース  作者: 桜崎あかり
第1部
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第4話『新たな敵を待つ者、削る存在』


 コロッケ丼を食べていて出遅れた神原颯人かんばら・はやと、彼が到着した場所は歩いて5分弱のアンテナショップだった。

立地場所は谷塚駅や商店街にも近いのだが、そちらに客が流れるかと言われると――そうではない。

ラーメン店や喫茶店、コンビニ等には客が入っているが、アンテナショップにフードコートがないのも大きいのかもしれないだろう。

 しかし、商店街の客にとって今回の事件は対岸の火事と言う位に無関心を貫いている。

その理由に関しても分からないではないが――この辺りが、草加市にARゲームの聖地巡礼が上手く根付いていない理由だろう。

場所によっては浸透している場所もあるだろうが、ここは聖地巡礼よりも料理サイトで紹介された際の記事経由が多い。

統計を取った訳ではないが、エリアによってARゲーム以外の目的で草加市へ訪れた観光客が5割を超えるケースだってある。

つまり、誰もがARゲームの聖地巡礼で草加市へ訪れた訳ではない。これは神原だけでなく、他のメーカー幹部なども課題としている部分だ。

「一体、何処に――」

 駆けつけたタイミングが遅かったわけではないが、周囲には数十人規模で野次馬の出来ている個所がある。

そこが該当する場所と判断し、走って向かったのだが――残念ながら、そこにいたのはARゲームとは無関係な芸能事務所の批判合戦だった。

これの何処かトラブルなのか――と神原は骨折り損と思ったが、トリガーになったのはARゲームだったのだと言う。

 そして、近くにあったセンターモニターを見ると――そこには殴ったような傷が少し付いていたのである。

この傷に関しても本当に器物損壊なのか、証拠映像がある訳ではない。

草加市のARゲームエリアには無人ドローンが飛んでいる話もあるが――証拠映像を抑えたのか?

その辺りを踏まえて連絡を入れようとした神原だが、タブレット端末が思わぬ挙動を見せた。

【このエリアはARフィールド展開中です。ARガジェット以外では一部電波が圏外となります――】

 このメッセージが出るのは、ARゲーム非対応のガジェット各種。スマホ全般は一部機能が制限され、カメラ機能は使えなくなる。

電話に関しては警察等への非常回線は使用可能だが――通常回線が使用不能。

 しかし、使用不能になるのは数分間と限定される。

使用できない理由は色々とあるかもしれないが、電波障害がトラブルを引き起こす為とガイドラインでは明言されていた。

「こういう時に限って、これとは――」

 神原は別の意味でも現場へ急ぎたいのだが、タクシーを呼ぶにしてもスマホが使えないことにはどうしようもない。

周囲の野次馬は何も気づいていないようであり、電波障害もどこ吹く風だ。

実際、出前等で使う様な電話で障害が起きないので、こういう反応なのかもしれないが。



 午後1時、何時もの重装備アーマーで突如出現したのは――ジャンヌ・ダルクである。

出現した場所は、2階に駐車場があるスーパーマーケット、駐車場の広さは――普通乗用車が50台は止められそうな広さだ。

ここは本来であればARゲーム専用のゲーセンが近くにある訳ではない。あっても半径1キロ圏外と言う可能性がある。

その為、ARフィールド発生装置が存在する場所ではないのだが――何故か、ここにはフィールドが存在した。

 理由としては数百メートル先にゲームセンターがある事かもしれない。

ゲームセンターでもVRゲームが設置され始め、ARゲームの設置も一部限定だが行われていた。

しかし、試作型ARフィールド発生装置にはスマホを初めとした通話機器等で電波障害の発生――これが最大の欠点と言われている。

『これがなければ、隠密行動も可能になるのだが――』

 ジャンヌの言及する隠密行動とは、完全な透明人間化しての行動ではない。

ありとあらゆる電波や発信機、レーダー等から見えなくなるという物である。いわゆる、ステルス戦闘機と同じ原理と言えるだろう。

その後、彼女はアーマーの腰部分に隠してあるシークレット部分からスポーツドリンクを取り出し、それに口を付ける。

 駐車場に姿を見せた車の1台が、空間の異変らしき物を感じるのだが――そこに何があるのかは一般人には分からない。

ARゲームが一般人から懸念されている理由に、唐突なゲームフィールド発生で通行の邪魔になると言う物がある。

しかし、それは一部のARゲームに限った話であり、ARフィールドがきめられた物、交通規制等でフィールドへの侵入を禁止し、一般人への危険を減らす試みをしている所もあった。

そうしたルールが決められたARゲームが100%ではない以上、モラルを破るようなプレイヤーが出現するゲームもゼロではないのである。



 5分後、ジャンヌが行動に移そうとした矢先に――第3者の乱入があった事を知らせるメッセージが表示された。

自分は乱入を許可した訳ではないのだが――。一体、誰がこういう事を仕組んだのか?

《乱入を確認しました。1対1のバトルモードへと移行します》

 ジャンヌとしては装備を整えてからの行動に移そうと考えていたのだが、思わぬ所で水を差される結果になった。

その人物が出現したのは、駐車場の入り口ではなく、スーパーの駐車場直通のエレベーターがある北側の入り口である。

エレベーターの扉が開くと同時に、その人物は姿を見せた。10メートル近くの遠目からでも女性だと言うのは分かるが――。

 ジャンヌが身構えた理由は、彼女の外見がファンタジー系の賢者と思わせるローブを装備し、魔術書を連想させるカバーのARゲームタブレットを持っていた事だろうか?

おそらく、遠距離武装オンリーではないが――2つは遠距離と言う可能性が高い。

「あなたが――ジャンヌ・ダルクか」

 かなり冷静で、ジャンヌの姿を見ても動じる気配がない。それに、周囲にも何人かの買い物客が視線を向けているが、それも無関心を貫く。

銀髪のロングヘアーに、赤い眼――その視線はジャンヌだけに向けられていると言ってもいいだろう。

 体格はぽっちゃり系だが、そんなに気になるような声が買い物客からない以上は――そう言う事かもしれない。

『珍しい客人だ。しかし、フィールドへ土足で入った事は感心しない』

 彼女を歓迎する一方、ジャンヌは勝手に乱入と言う処理をされた事には怒りを覚えている。

それを表情に出せば――明らかに作戦も見破られる危険性があり、ジャンヌはポーカーフェイスを決め込む。

「しかし、ジャンヌ――貴方がやろうとしている事は、芸能事務所が行おうとしているネット炎上と一緒だ。つまり、私は阻止する側に――」

 彼女はARガジェットで何かを呼び出そうとしていたのだが、それよりも先にARアーマーを装着する。

その形状は銀騎士と言っても過言ではないだろう。そして、デザインは神話的な物よりもSFファンタジーの意匠も混ざっているかもしれない。

「コンテンツハザードを止める! ARゲームの炎上は――芸能事務所にネタを提供するだけだ」

 ある意味でも彼女は本気でジャンヌを止めようと、即座にレールガンとハルバートを組み合わせたような1メートルほどの遠距離武器を呼び出す。

その斬撃は、あっさりとジャンヌに回避されるのだが――ジャンヌの回避した先にはセダンタイプの乗用車が止まっている。

おそらくは買い物客が止めたものかもしれないが、それに激突して車が大破する事はなかった。ARフィールドのセーフティーシステムが動いた訳でもない。

『こちらとしても、バトルの準備をしていないのに問答無用とは――クールな表情の割には、意外と短気なようにも見えるが?』

 ジャンヌの挑発――そう受け止められそうな発言を、彼女は完全に無視する。

これに乗せられたら、完全な負けだと認識ていたからだ。

そして、彼女はハルバートモードをレールガンモードに瞬時変形させ、レールガンの照準をジャンヌに合わせる。

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