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第13話『ジャンヌとアークロイヤル』その5


 午後1時30分、ヴェールヌイは以前に訪れた工事中の施設へとやってきた。

今回は斑鳩いかるがも一緒であるが――服装に関しては私服である。ヴェールヌイは賢者のローブだが、こちらは問題ないと判定されていた。

メイド服はさすがに危険と判断されたのかどうかは不明――。

《草加市ARゲームギガフィールド》

 先日に訪れた際には施設名までは書かれていなかったようだが、ここにきて動きがあったのか?

そして、掲示板の立てられている場所から数メートル程度の距離には、入口らしきものがある。

 どうやら――仮オープンと言う形で施設の見学が出来るらしい。

正式オープンは7月のようだが、既に会議室やイベント会場、ARゲームフィールドの一部は完成済みのようだ。

その一方で、ショッピングモールの一部、複数フィールドを使うARゲームフィールド、アーケードゲームエリア等は工事が進められている。

「なるほど。施設としては使用可能なエリアは北側エリアではなく南側がメインですか――」

 大型施設は3階建であり、北側と南側で分けられている。その広さはドーム球場約2個分に相当する程の広さだ。

これほどの施設をARゲーム専用で回せるとは――草加市側も考えていないようで、様々なテナントが入っているのが分かる。

ヴェールヌイが見学しているのは入口を入ってすぐの南側エリアと言われる場所だ。アニメ・ゲームサミットも南エリアを使う予定で話が進んでいる。

 現場スタッフの話を聞きながら、ヴェールヌイは使用可能なエリアから自分達が使用できる場所を絞り込む。

さすがにショッピングモールエリアは迷惑になると思われるので、イベント会場だろうか。

ただし、イベント会場は完成している場所限定との事で――サミットの使用するエリアと被らないことを祈るしかない。

作業を急がせるのは不可能と言う事を聞いており、それを踏まえた上で――場所を確保する必要性がある。

「南エリアの方は、現在も様々な工事を行っている関係で7月のオープンには間に合わない可能性もあります」

「間に合わない? でも、掲示板の方では7月オープンと――」

「北側は7月に入る前にもオープン可能です。そこのみを運用していく方向になると思いますが――」

「それ程、草加市や他の企業との交渉がうまくいっていないと?」

「資金的な問題や人員的な問題ではなく、あるものの搬入が遅れているとしか聞いていないので」

「ある物?」

「ARゲームの新作と聞いていますが、ご存知ないのですか」

「こちらでは全く――サミットで発表する作品では?」

「サミットでも、そう言った機種は存在しないと――向こうへの問い合わせで確認済みです」

「一体、誰が何のために――?」

 ヴェールヌイと現場スタッフの男性の会話を聞いていても、斑鳩にはさっぱりである。

ネット上でも新作ARゲームのロケテスト情報は出ているが、どれも公式発表された作品ばかりで、話に出ている機種ではない。

「確か、何とかトランスの新シリーズと言う話は聞いていますが――それ以上は、ちょっと」

「ARリズムアクションのトランスアクションシリーズ――それの新作だろうか?」

 スタッフは、渡されたプレス用資料の入ったタブレットをヴェールヌイに見せるが、タイトルと概要だけでは判断がしづらい。

それに――ARゲームでリズムゲームと別ジャンルを融合させたゲームは複数あり、ARパルクールでも類似機種が存在している。

画面写真のイメージもあったが、使用されるガジェットも違いすぎて参考にならないだろう。

「このデータは、こちらでは特に使用しないと思いますので、お返しします」

 ヴェールヌイは資料をさらりと目を通し、タブレット端末をスタッフに返す。

斑鳩もチェックしたのだが、その内容はさっぱりだった。類似するARゲームとは次元が違っていたからである。



 同時刻、同人ショップを出たアークロイヤルは1階のゲーセンへと向かおうと考えていた。

2階には同人ショップ以外にも、アダルトグッズの店もあるような気配だったが――自分もAV女優の作品には興味がない。

そちらとは違う物もあるのかもしれないが――探す勇気は出てこなかった。ネットが炎上すると言う理由ではなく、関わっても有力な情報がないと言う方が分かりやすいだろう。

そういう関連店舗が、ARゲームの聖地巡礼化を進める草加市でも退去される事無く残っているのが奇跡か?

特定店舗のみを優遇するようなARゲーム聖地巡礼化――それを維持する為の条件で残している可能性も否定できないが。

「ダブルスタンダード――と言うには、違う案件かもしれない」

 アークロイヤルは思う部分もあったが、今はジャンヌ・ダルクとの決着が優先である。

ARゲームの聖地巡礼化を議論するにしても、コンテンツハザードと言うネット炎上要素を残したままでは――VRゲームの時に起きた事の繰り返しだ。

そして、アークロイヤルは思う所がありつつも出口近くのエスカレターに乗り、ゲームセンターのある1階へと向かう事に。



 午後2時、一人の女性が草加市ARゲームギガフィールドの南エリア側に姿を見せる。

『この辺りは工事中――違うな、別の何かを組み込もうと考えている所か』

 工事関係者のいないARゲームフィールドと思われる3階に姿を見せたのはジャンヌ・ダルクだった。

何故、ARゲーム用のフィールドやシステムが起動していないような場所で――と思われるが、その答えは彼女が特殊な透明プレートの窓から見ていた景色にある。

1階と思われる屋外エリア、そこではARゲームフィールドの展開試験を行っていたのだ。つまり、そのおかげでジャンヌのARアーマーが展開する事が出来た――と言える。

これは別の意味でも奇跡に近い。実は、ここへ立ち寄る用事自体は存在し――その休憩時間を使って探索をしていた。

『これだけの大規模施設――避難施設への転用も可能と言う設計思想がなければ、実現不能だっただろうな』

 東京駅や秋葉原周辺にも負けないような大型施設――それを草加市へ誘致するのは非常に難しいだろう。

その状況下で、草加市側にも運が向いてきた。それが、ARゲームの聖地化こと聖地巡礼である。

草加市としては大型の複合施設を作る事が実現し、ARゲームのメーカーとしてはプレイヤーを呼び込める施設を立てられる――お互いにウィンの関係と言える物だった。

 しかし、芸能事務所側がこの施設に関する重大な情報を手に入れ、週刊誌に情報提供したという噂もある。

つまり――草加市ARゲームギガフィールドを舞台にネット炎上させ、自分達アイドルグループの劇場に変えてしまおうと言う目的も見え隠れしていた。

『新たなステージへつなげる為の――仕上げをここで行うのは、何とも皮肉な話だが――』

 ジャンヌは、この場所をコンテンツハザードの最終決戦にする事は否定的である。未完成の場所もあり、ここで行うにはリスクが生じる為だ。

しかし、ヴェールヌイは草加市ARゲームギガフィールドで最終計画を始動しようと考えている。ここならば、コンテンツ流通等を含めて――大きなメッセージを訴える事も可能だったから。

果たして――この最終決戦の行方は、どうなるのか?


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