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第12話『アーク、再び』その2


 6月3日午前11時、草加駅に到着し、該当のロケテストの行われている場所へ到着する。

本来であれば昨日にでもチェックしようと思っていたのだが、電車が満員だったり――別の要因もあって、アークロイヤルは向かうのを断念していた。

実際に混雑しているという情報は既にチェック済みだったのだが、別の要因は向かおうとした途中でつぶやきサイト経由で知ったのである。

 別の要因とはネット炎上勢力の動きだ。彼らを壊滅させるには国会でネット炎上罪を認めさせるべきなのか――と冗談半分に思うほどは、政治には関心がある訳ではない。

そう言う思考をするのは、政治的要因を絡ませて番組を見てもらおうとするメディアとか――その辺りと考えるべきだろう。

「結局、VRゲームでもARゲームでもネット炎上やマッチポンプは起きる。避けられない――事なのだろうか」

 近年、放送されるドラマ等に超有名アイドル商法の批判的な意見や国会の情勢、それこそ政治的な駆け引きを脚色して放送し、視聴率を稼ぐ。

WEB小説でも、そうした状況がないとは言い切れないが――そんな感じである。

パワードフォースシリーズは、子供向けの特撮番組ではある一方で、勧善懲悪をテーマとしていた一面もあった。

しかし、刑事モノやサスペンス系、ホラー系のドラマと違って――死ネタは一切存在しない。アニメやゲームでも死ネタを扱う作品がある中、まさかの対応をパワードフォースのスタッフが取ったのである。

ホビーアニメ、女児向け及び男児向けのキッズアニメであれば、そうしたネタを取り扱わないケースが多い。しかし、パワードフォースはどうか?

 確かに変身グッズ等の様な玩具が存在し、作品も子供向けにパッケージングした印象を持つ。だからこそ――疑問に思う個所が存在するのだ。

ジャンヌ・ダルクが、パワードフォースを題材にして一連の事件を起こしたという事に。

彼女に同調していたのは二十代や三十代近くという若者が多い印象である。それならば、ライトノベルや若者向けの作品を――と考えるはずだ。

「繰り返されるネット炎上――私は、また繰り返してしまうの?」

 アークロイヤルの右手は震えている。しかし、それでも確かめないといけない物があった。

それが――ARパルクールのロケテ状況。ネット炎上を繰り返せば、それこそコンテンツ市場の信頼問題にも関わってくるだろう。

だからこそ、そのコンテンツを愛するファン等を失望させる事は――してはいけないのである。



 十分が経過した辺り、やはりというか駅から出ると行列が出来ているのが分かる。

駅前からだとチェック出来なかったというのもあるのだが――午前中だと言うのに、予想外と言えるだろう。

「昨日も写真がアップされていたが、今日も似たような物だな」

 アークロイヤルはメイド服姿なのだが――それで注目されない位には、行列の凄さが分かる。

他にも知っているようなARゲームプレイヤーが並んでいる訳ではない。

しかし、アークロイヤルも動画にアップされているようなプレイヤーでも、知らないプレイヤーがいるので――そう言う感じだろう。

「こういう状況では、さすがにジャンヌも――」

 そう思っていたアークロイヤルだったが、大型スクリーンで緊急中継が映し出されたのは――。

「どういう事だ? 中継場所は谷塚だぞ」

「あれって、レーヴァテインか?」

「戦っている相手は――」

「嘘だろ? あれって――」

 大型スクリーンの方は音声なしだったが、それでも対戦相手が相手だけに見入ってしまうのだろう。

片方はレーヴァテインであるのはアークロイヤルも把握したが、もう片方が――。

「斑鳩――なのか?」

 アークロイヤルも即答に迷ったが、アーマーの特徴や使用ガジェットから斑鳩いかるがと予測する。

そして、今まで使っていなかったARガジェットのプレイヤー検索機能を初めて使う。

《プレイヤー照合完了》

 称号完了後、表示されたデータを見て――別の意味でも驚いていた。斑鳩なのは間違いないのだが――。

その対戦成績は、ファルコンシャドウを初めとしたネームドプレイヤーも撃破済。この成績には予想外と思う。



 谷塚駅より1キロは離れているであろうARゲームフィールド、サバゲ―にはうってつけな廃墟フィールドも完備している有名所――。

そこではレーヴァテインと斑鳩がバトルを行っていた。レーヴァテインはいつも通りチートプレイヤー狩りをしていたが、そこに斑鳩が姿を見せた形のようである。

「こっちとしては、君と戦う理由がない。第一、チートプレイヤーでもないし――因縁がある訳でもない。それに、こっちは得をしない」

 損得勘定が激しいのは原作同様だが、それ以上にARゲームに対する熱意には磨きがかかっている。

今のタイミングで斑鳩と戦っても、彼には大きな得をするようなポイントがない。それも、バトルを受けない理由でもあった。

『あなたにはなくても、こっちには理由がある。ジャンヌ・ダルクに関係している以上は』

 斑鳩がレーヴァテインをターゲットにしたのは、ジャンヌ・ダルクに関係しての事だった。

そして、今回の計画にはヴェールヌイも関係している。

「ジャンヌ・ダルク――聖女とも言われている、あの偉人か」

『厳密には、その名前を持ったARゲーマーと言うべきね』

「彼女がゲーマー? まとめサイトよりも冗談がきついな」

『そうよ。彼女は――ある人物をこのフィールドへ引き寄せる為に、今回の事件を思いついた――』

「ある人物――チートゲーマーであれば、ここまで大層なフィールドは用意しないか」

『その彼女は、思惑通りにアカシックワールドにエントリーした。私も、その話を別の人物から――』

「別の人物――?」

 2人の会話が続く中、バトルフィールドの近くで観戦していたヴェールヌイは状況を見守っている。

斑鳩との協力体制を結んだのは、一連の計画より前であるが――。彼女はカレーパンをかじりつつ、テーブル席で観戦をしている。

無言で観戦と言うよりは、彼女に限って言えばテーブルに置かれているドーナツや焼きそばパン、菓子パン類を食べつつの観戦と言うべきか?

それに加えて、今回のバトルにはジャンヌ・ダルクをおびき寄せると言う目的以外に別の理由がある。

「このバトルを見て、彼女が何かを思い出してくれること――」

 コーラの入ったアルミ製のタンブラーを手に――ヴェールヌイはセンターモニターを見ている。

そして、ジャンヌ・ダルクの正体が自分の思惑通りの人物であれば、アークロイヤルは何かに気付いてくれるだろう――そう思っていた。

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